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第8話 呪返し

 突然現れた竜に皆が驚く中、レムレスも護衛の聖騎士も私を見るなり更に驚いていました。


「貴様、死んだはずでは!?」

「あいにく神に生き返るよう仰せつかったのです!」


 私は隙を見て、聖法衣の裾を掴みました。途端に私の身体に魔力が満ちあふれます。


「その聖法衣はこう使うのです!」


 魔力が戻った私は、全力で奇跡を願いました。

 私の願いは、全ての民、全ての生きとし生けるものが幸せであること。

 それが叶うなら、私の身などいくらでも捧げるつもりでした。


「私はルベリア・ルナール。ロメール国教会において民の幸せを願うことを定められた聖女でした」


 聖法衣が元の持ち主を思い出したのか、勝手に私の手元へ戻りました。レムレスが法衣を掴もうとしますが、彼の手からは煙のように法衣はすり抜けます。


「そんな私の願いは……ティアが望むまま生きられるようになること。人も竜もない、平和な世界にティアと暮らすことよ」


 聖法衣を肩に掛けた私は『聖女』としての力を完全に取り戻しました。


「貴様、やはり竜に加担していたか。この魔女め!」


 聖騎士が一斉に私を取り囲みますが、大きな民衆のどよめきに全員が大聖堂の中央へ振り向きました。


「ティア!」


 振り返ると、ティアの姿が大聖堂から溢れんばかりの巨体にまで大きくなっていました。逃げ惑う人々の中央でティアは堂々と佇んでいます。


「魔力が、戻ったのね!」

「リーベの奇跡のおかげだよ。さて、リーベには悪いけど、ボクはやらなければならないことがある」


 ティアは腰が抜けて動けないレムレスを見据えました。


「竜が凶兆の証となった理由、それはボクらが『呪』を操るからだよ。昔は随分と人間もボクらを使って好き放題やったみたいだけど、急に手のひらを返すように迫害し始めるんだから、本当に自分勝手だね」


 ティアの紫色の目が輝くと、急にレムレスが目を押さえて苦しみ始めました。


「やめろ! あっ、ぐっ、う、うあああああ!」

「ティア、貴女一体何をしたの?」

「ボクがこいつにされたことを同じだけ追体験してもらってるのさ。ついでにリーベにした仕打ちと、ボクが人間にされたこと全部も加えたよ」


 私はティアを傷つけたのがレムレスだと聞いて、心臓が氷のように冷たくなるのを感じました。聖騎士もレムレスから遠ざかりました。真に断罪されるべき人物がわかったのです。


「リーベは心配しなくていいよ。これはこいつが撒いた種を自分で拾う、呪返しって奴だ。最初からこいつはボクを使ってリーベを陥れるつもりだったんだ」


 ティアは少女の姿に戻り、足元で苦しみ続けるレムレスを見下ろしました。


「ボクと同じ時間だけ苦しめば解ける呪にしてあるから安心してよ。それまで生きていられるといいね」


 聖騎士に囲まれたティアは急に竜の姿に戻りました。そして私を抱き上げると、大聖堂の天井を破って空へ飛び立ちました。


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