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第4話 竜の子

「起きて、起きてルベリア!」


 甲高く可愛らしい声が聞こえて、私は目を覚ましました。


「あれ、私、竜に食べられて……!!」


 気がつくと私は森の中に横たえられていました。そして目の前に、先ほど私を食べた竜がいました。恐怖で竦んでいる私を見て、竜は人間の姿に変わりました。その鱗のような深い青の髪を持つ、温和な女性の姿に私は安心しました。


「怖がらせてしまってすみません。しかし、あの場ではああすることしか出来ませんでした……私のことはコキと呼んでください。あなたはキラの命の恩人です」

「キラ?」


 すると、私の目の前にオレンジ色の髪の少女が現れました。年の頃は12歳くらいでしょうか。私はこの髪の色と、彼女のしている紫色のスカーフに見覚えがありました。


「あなたは……ティア!?」


 オレンジ色の髪、そして水晶のように澄んだ紫色の瞳と、お揃いになるよう私があげた紫色のスカーフ。彼女はまさしく私が助けた竜の子に違いありません。


「そうだよ! 会いたかった、ルベリア!」


 ティアは私の胸元に飛び込んできました。


「キラ、待ちなさい……聖女様は酷く傷ついておられる。そして服も着ておられない」


 コキに言われて、私は生贄になる際に裸にされたことを思い出し、真っ赤になりました。気絶している間に私に掛けられていた布で、咄嗟に私は身体を覆いました。


「それは竜衣です。貴女様の聖法衣に比べれば魔力はとても低いですが……少しは体力が戻ると思います」


 私は急いで竜衣を纏いました。安心して涙が溢れたのは、魔力の高まりを感じたからだけではないと思いました。しかし、魔力がほとんど残っていない上に生贄になることで傷ついた私の身体はボロボロでした。


「死んだことになっている貴女様を人間の街へ送り届けると、不要なトラブルを招くでしょう。できれば我々と一緒に来ていただきたいのですが、よろしいですか?」


 コキの言葉に私は頷きました。そして私は改めて人間の世界から追放されたのだと思うと、ひどく虚しくなりました。私は立ち上がろうとしましたが、殺されかけた恐怖のせいか足が言うことを聞きません。


「ルベリア、まずはキミの身体を治さないと」


 ティアが私を支えます。竜の魔法で人間に姿を変えているのはわかっていても、私はあのティアがこんなに立派な少女になっていることが嬉しくてたまりませんでした。


「ボクの本当の名前はキラ。でもキミがボクをティアって呼んでくれたのがすごく嬉しかった! ボクのことはティアって呼んでね! だからボクもルベリアのこと、リーベって呼んでいい?」


 ティアの勢いに、私はいいえと言う勇気はありませんでした。



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