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擦り切れたこころ  作者: 高坂あおい
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決意

 この日の仕事はいつもよりもかなり早く終わり、俺は家路につく。


 うちの会社はかつて社員が何人か命を絶っているほどのブラック企業で、それが発覚した時は代表取締役であった社長を含む全取締役員が辞任するなど、かなり世間でも話題になった。

 しかし、今となってはその日に定められたノルマを達成すれば帰宅して良いというルールが定められ、脱ブラックの最先端を走っている企業だ。


 少し黒色が剥げてしまっている腕時計を確認してみると、まだ短針が三を指し示す前。

 いつも会社を出るのが七時や八時であることを考えると、歴史的快挙というような言葉が結構似合うのではないだろうか。


 何故こんなにも早い時間に終わったのか尋ねられれば、俺は真っ先に今朝の紗枝の顔を頭に思い浮かべる。

 あの形容しがたい気持ち悪さを含んだ顔だ。

 前日あれだけキレておいて、次の日には例の不自然な取り繕われた笑顔。

 恐らくだが、紗枝もこの嫌な空気を断ち切りたかったのだろう。

 

「ケーキでも買って帰ろうかな」


 あいつは確か果物がたくさん入った甘いやつが好きだったはず。

 それをお土産に今日こそは紗枝と向き合ってみよう。

 世には「背中合わせ」という言葉があるが、俺たちは互いに背中を向けているだけで合わせていなかったし、顔なんて見ようともしていなかった。

 だから、今日こそは。


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