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ムスタファ:ご主人さま、好き!

 



 ぼくは、マモノ。

 黒くて、大きなヒョウのマモノ。

 どのくらいの大きさかって?

 んーとね、ニンゲンの家の玄関から入るのが、すっごく大変なくらい。

 え? わかりづらいの?

 んーと、んーと、あ! ご主人さまがね、『三メートルより大きくならないよな?』って心配してたよ。

 ぼくのお母さん、今のぼくの倍くらいあったけど、ご主人さまは知らないみたい。

 お母さん?

 お母さんはね、いなくなっちゃった……。




『オマエ、本当に出来の悪い子ね』

『お母さん?』

『ソレを仕留めないと生きていけないのよ』


 お母さんが、かわいい羊さんをコロセって言うんだ。

 羊さん、なにもしてないよ?


『何もしていなくても、殺して食べなければならないの』

『ぼく、お腹へってないよ?』

『見つけたときに食べておかないと、自分が死ぬのよ』


 ぼくたちは強すぎるから、ほかのイキモノがすぐに逃げちゃうんだって。

 だから、弱っている子や危機をさっちするのが苦手な子を見つけたら、すぐにたべなきゃなんだって。

 ぼくは、それをしたくないんだ。

 あんなに美味しそうに草をたべてるんだよ? じゃましたら、かわいそうだよ?


『…………オマエは、一度本当の飢餓を味わいなさい。それで死んだのなら、それまでね』

『お母さん?』


 お母さんはそういうと、大きな体でシュタタタって走って、羊さんをくわえてどこかに消えちゃった。




『お母さん? どこ? ぼくね、お腹へったの……』


『お母さん? …………あのね、ごめんなさい。お母さん……』


『お母さん、いなくなっちゃったの……?』


『おかぁさん…………おなか……へったの……』




『…………あれ? いい匂いがする。あのニンゲンからだ!』


 弱そうな子供のニンゲンにね、おねがいしたらね、ちょこっとだけど、たべものくれたの!

 おいしいの!

 すごくすごく、おいしいの!

 ぼくね、このニンゲン、好きだなぁ。


 もっとたべものくれないかなぁって思ってたら、“ジュウマ”っていうのになってたの。

 このニンゲンについてったら、もうあんなに怖くて寂しくて悲しいキモチにはならない気がするんだ。


「グガゥ!(ご主人さま、よろしくね!)」

「うわっ!? 急に吠えるなよ! びっくりしたぁ!」


 ご主人さまは、びっくりしたって言いながらも、笑ってくれたんだ。

 ご主人さま、優しいなぁ。


 ご主人さまが頭を撫でてくれたよ。

 ワシワシって撫でてくれた。

 ご主人さまはとっても小さいけれど、お母さんみたいに温かいんだ。

 ぼく、ご主人さま、好きだなぁ。




次話は明日のお昼頃に投稿します。

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