歴史を断ち切って
カムイはこの地の礼をして、私達に願った。
「カーラを、ここから逃して欲しいのです……。神や仙人様、村の皆からの罰ならいくらでも私が引き受けます。それでも、カーラを送ることは出来ない……。無茶な願いだと、深く理解しています。それでも、どうか引き受けてはくれませんか。」
「私は助けたい。助けていいなら助けたい!!父さん……!」
「……引き受けることは構わない。カーラも死は望んでいないだろう。だが、お前はそれでいいのか?カーラを逃したとして、ミラも含めて二度と会うことはできないだろう。」
「それでもいい、カーラがどこかで、無事に生きていてくれるならそれでいい。私は、この罪とともに仙人となり、長い時間をかけてこの文化を変えます。仙人は退位しない限り生き続けることが出来ますから。次に犠牲になる子など、いなくていい。」
「そうか……。ではカーラのその後はどうする?生かしたあとのことは。」
「地上の村には子供を助けてくれる場所があると聞きました。そこに、カーラを連れて行って欲しいのです。お願いします!!」
孤児院か、或いは教会のことを指しているのだろう。教会は知らんが、孤児院は勧められない。場所にも寄るだろうが。カムイはずっと頭を下げて懇願している。
「安易にそこを頼るのはやめておけ。……まあいいだろう、我々の旅にしばらく同行させよう。カーラの夢は旅に出ることだったな。なら、その夢を自分で歩めるようにしてやる。だから、どうか顔を上げてくれないか。」
「父さん……。」
「ありがとう……、ありがとうございます……。」
カムイは涙を流しながら言った。あれだけ落ち着きを見せていたのは、やはりカーラの前だからだろう。仙人の座を継ぐ彼も、幼子の父親に変わりはなかった。
「それで、なにか作戦はあるのか?」
カムイはこの夜のうちにカーラを村から連れ出すつもりだったらしい。だがそれでは翌日の儀式で大騒ぎになるだろうと伝えた。儀式について詳しく聞くと、仙人になるまでに長い経や舞があるらしいが、最後にカムイはカーラに毒薬を飲ませ、前代の仙人によってカーラが死したと宣言された後に仙人と名乗るらしい。自らの手で、自分の子を殺さなくてはならないとは、酷い話だ。
「なら、一ついい方法がある。」
「本当ですか……!?」
「準備が諸々必要だ。リュンヌ、手伝ってくれ。」
「もちろん!!」
「あの……、私になにか出来ることは!?」
「大丈夫だ、君はいつもの通りにしておけばいい。私は、殺しのプロだ。殺さずに殺すことなど容易い。」
カムイはどういうことか分からないといった顔をしている。リュンヌはここ最近で一番の笑顔を見せていた。儀式が始まるまであと数刻しかない。準備を急ごう。




