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【6】

 あるもの――それはすばり、カインのパンツ。



 私はカインのパンツを盗むためにカインの部屋に忍び込んでいるのだ。


 ――いや、ちょっと待って欲しい。そんな犯罪者を見るような目で見ないで欲しい。

 いや、事実やろうとしてることは窃盗という犯罪なんだけども!


 でも聞いて! これには立派なちゃんとした理由があるの!

 だって私はこれから家も立場も捨てて隣の国へ逃げるわけじゃん?! いくら今までの自分磨きで様々なスキルを身に付け公爵令嬢の割にはそこそこ生き抜く力を持っているとしても、人生のほとんどを捧げてきた人への愛に破れ傷心なわけじゃん?!

 そしたらさ、せめて愛した人の思い出の品の一つくらい持って行きたいわけじゃん?!


 カインの温もりを思い出せるような。彼を身近に感じられるような。そんなよすがになってくれる彼の持ち物が欲しい。

 だけど彼に黙って持って行くのだから、決して高価なものではいけない。なんなら複数有って一つくらい無くなっても気づかれにくい物がベスト。


 そう検討した結果――――



・温もりを思い出せるもの→パンツ

・身近に感じられるもの→彼が身に付けているもの→パンツ

・あまり高価ではない→パンツ→王族だから絹とか総レースとか紐とか高級パンツの可能性もある→だけど弁償できないほどの値段ではないと思う→やっぱりパンツ

・複数有る→パンツ



 そう。思い出の品としてパンツ以上に最適な物など有るだろうか?

 いや、無い。



(シモン)はボクサータイプなんだけど。……はっ。もしかして王族は履く習慣が無いとかそんなこと無いよね?」


 その可能性に気がついて呆然とベッドに座り込む。

 天蓋付の大きくて広いカインのベッド。

 誘惑大作戦のためにココで寝ているカインの隣に忍び込んだのは、ちょうど一年前のことだった。


 一年前はまだ、婚約解消イベントを回避する希望を持っていたのに。

 私は思い出の品として彼のパンツを持って行くことすら叶わないというのか。

 あとあの時も今日も、簡単に入ることができたのだけど王子の私室の警備はどうなっているのか。




「カインと、結婚したかったなぁ……」


 止まったはずの涙がまた溢れ出す。









「――『したかった』って、君は俺と結婚することに決まっているのに。何を言ってるのリジィ?」









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