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【3】

 【誰か】の声に頭の中をかき回されたあの日。私は前世の記憶とこの世界の仕組みを思い出した。


 私が生まれたこの国――ううん、この世界はヒロインが数々のイケメンたちとの恋愛を楽しむためのゲーム……いわゆる乙女ゲームの世界だ。


 私は前世でこのゲームをやりまくったやり込みまくったなんなら特典のために同じソフト4枚買った。

 メインヒーローのカイン本気で尊い結婚したい早く画面から出てこいVRに対応する日はいつですか。


 そう。私の最推しはカインだった激推しだった。カインのルートだけ10周以上した。イベントのスチルは網膜に焼き付いてるし、彼の台詞は余裕で脳内再生エンドレスリピートできる。うん、自分でも軽く引く。


 そんな私の熱過ぎる愛と願いが天に届いたのか。

 なんと私はカインのいる世界に転生したのだ。

 

 彼の婚約者として誕生し、幼少の時期を彼と共に過ごし、6歳上の彼に優しく甘やかされる美味しいポジション。

 ただし18歳になった時にヒロインに彼をかっさらわれ『妹以上に見られない』という悪役令嬢(ライバルキャラ)としては比較的生ぬるい理由で婚約解消されるブリジット=エスターナのポジションに。



 ちょっと神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ?!

 転生先のポジション間違ってるんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっ?!



 このままじゃ私はカインと結婚することができない。

 何度も何度も。ヒロインとして彼と愛を育み、恋の勝者の立場でブリジットが婚約を解消される場面を見てきた私だからわかる。

 今から8年間。王立学園を卒業する直前までに。

 それまでに私を『妹以上』の魅力的な女性としてカインに意識させることができなければ、私は婚約解消イベントに一直線だ。


 何故ならヤツ(※ヒロイン)は王立学園の卒業生を招いた王宮主催のダンスパーティーでカインと出会うのだから。



 王宮ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!

 なに余計なことしてくれちゃってんのぉぉぉぉぉぉぉっっっ?!

 卒業さえしてしまえばカインと結婚できるはずだったんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!?!



 プレイヤー(ヒロイン)だった時にはワクワクしながら楽しんだ「ダンスパーティーの夜に出会った王子様に庶民出身の私は胸キュンラブ! だけど彼はあと数ヵ月で婚約者ブリジットと結婚してしまう。でも実は私もある国の王家の血を引いていると判明して……ひゃあぁん! 私の運命、どうなっちゃうの――?!」なシナリオが恨めしい。


 ベッドの中でグルグルと回るイベントスチル(悪夢の世界)にうなされていると、お茶会の途中で倒れた私を心配してカインが顔を出した。

 16歳のカイン、マジ天使様。マジ尊い。



「リジィ目が覚めた? お水を持ってこようか?」

「ううん……お水はいいから、手を繋いでくれる?」

「もちろんだよ」


 熱が出始めた私の手を握り返してくれるカインの低い体温が気持ち良かった。

 この手を、この手を離したくないと泣きたいくらいに思う。


「カイン、私、頑張るからね」

「うん? 大丈夫だよ。残念ながらリジィのお誕生日パーティーを明日やるのは難しいだろうけど、何度延期になったって俺はリジィのためならいくらでも予定を空けるからね。だからゆっくりお休み」

「ふふ。そんなこと言って。王子様がそんなんじゃ国民が困りますわよ?」

「では可愛い我が姫君。貴女の苦しみが癒えるように魔法をかけましょう」


 そう言っておでこに落とされた柔らかい唇。


 この日から、婚約解消イベントを回避するための私の戦いの日々は始まった。




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