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【2】



『ごめんリジィ。やはり君のことは妹のようにしか見られない。彼女(・・)に、俺は彼女に出会って真実の愛を知ったんだ。どうか今後は俺のことは本当の兄だと思って欲しい』



 お気に入りのカップを傾けた瞬間。突然ソレ――前世の記憶は溢れ出した。


 君への愛情は家族へ向けるものと同じだった。悪役令嬢(ライバルキャラ)がヒーローの言葉に頷くと、画面の中のヒロインとヒーローは抱き合って愛を確かめる。

 何度も選択肢をロードして、やっとたどり着いた第一王子の婚約解消イベント。プレイヤー(ヒロイン)からしたらガッツポーズものの名シーン。ここまで来るのに、どれだけの時間を費やしたことか。



 ――ああそうだ。メインヒーローの第一王子は攻略制限のせいで一番最後まで落とせないんだった。

 


 メインヒーロー? 攻略制限? 混乱する頭の中で、興奮した【誰か】が早口で捲し立てる。




 ――てかこのブリジットとの婚約解消イベントが起きたってことは王子のベストED確定ってことだよね?! 長かったー! 王子、めっちゃ理想高いんだもん。必要パラが全項目ほぼMAXな上に選択肢一歩間違えると即ヤンデレ化即監禁バッドEDって鬼畜過ぎでしょ!

 いやーでも頑張った甲斐が有ったね! エロ! ED後のオマケSSエッロ! え、全年齢でここまでやる?! 攻めてる。攻めてるね公式! その姿勢嫌いじゃない! 買うわ。豪華限定版セット買い直すわ。お布施するわ! だからお願いFD出して!!




 押し寄せる映像と感情の波に理解が追いつかない。


 頭はパンク寸前で、何から処理して良いのかわからない。


 悲鳴を上げそうになった唇を寸前のところで手で覆う。




 いけない。


 こんなところで。


 皆が集まっているお茶の席で叫ぶわけにはいかない。




「リジィどうしたの? 顔色が悪いよ?」

 真っ先に私の変化に気づくのは、いつも決まって婚約者のカイン。



「あら本当ね。明日は貴女のお誕生日パーティーなのだから体調でも崩したら大変よ」

 若く美しいお母様は少し心配性。



「変なものでも食べたんじゃないか?」

 意地悪なお兄様は相変わらず。



「姉様お昼寝する?」

 いつまでも甘えん坊な弟のシモンは8歳。



 家族。私の家族。



「リジィ? 本当に大丈夫?」



 リジィ。ブリジット=エスターナ。


 そうよ。私の名前はブリジット。この国の王妃になるために生まれきたの。




 ――カインルート本当に良かった~! もう一周しちゃおうかなー!




 やめて。




 ――あ! OPムービーにこのキーアイテム出てたんだ!



 やめて。




 ――歌詞も今聞くと別の意味に聞こえるねぇ!




 やめて! 私の中で好き勝手に騒がないで!




 ――あ、ここで実はもうカインはヒロインのこと好きになってたのか!



 ――ブリジットも悪役令嬢設定のわりに根はいい子で憎めないんだけどな~。



 ――でも妹って理由でフラレるなら悪役令嬢の扱いとしては優しい方だよね。




 やめて やめて やめて やめてったら!!!!






「リジィ!!」






 止まらない【誰かの声】に脳内をかき回されて、私は意識を失った。




 

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