5月2日:守る人
「残念ながらそこまでよ! これ以上の悪事は、呪術部部長の吉野緋澪が許さない!」
神社のほうからそんな声が聞こえた。
緋澪先輩が、仁王立ちで立っている。……何やってるんだか……
「何だ、お前。邪魔だからどっか行け。こっちは忙しいんだ」
高也が緋澪先輩を睨み付けた。しかし、緋澪先輩はその視線を見て軽く笑うと、片手をバッと前に出して言った。
「縛の下の術! 金縛り!」
……はぁああ?! 作戦ってもしかして……それ?!
「こいつ、いかれてらぁ。気にしないで続けろ」
「……高……也……さん……から……だ……が……」
剛貴に攻撃を加えていた集団のうち数人が動きを止め、他の全員も非常に動きにくそうにしている。
「……お前……何やった?」
「呪術よ? ご存知ない?」
「……よくわかんねぇけど、邪魔してるんだったら、俺も黙ってらんねぇな」
高也が動こうとすると、緋澪先輩はもう一方の手も前に出した。
集団は完全に動きを止め、声も出せないようだ。
「はっ……成る程……確かに……少し重いな……」
「う、動いてる!?」
「悪いなぁ……こいつらは雑魚だからちゃんと止まってくれてるのかもなぁ」
高也は少し体が重そうにしながらも、集団の一人が持っていたバットを奪い取り、緋澪先輩に歩み寄っていった。
「緋澪先輩!」
僕が声を上げると、緋澪先輩は震える声で答えた。
「……どうしよう……これをやってるときは私も動けないの……」
何て無計画な……僕は緋澪先輩に駆け寄った。もう……終わりか……
「何だお前? 弱そうな顔して、その女の連れか何かか? 邪魔するならお前も……」
「……お前も、何だ?」
「はぁ? 何だ、いかれ野郎ばっか出てきやがるな」
「……いかれ野郎……? あぁ。お前らの話……だろ?」
僕は蔑むように僕たちを見る高也の鼻に一発肘をぶつけた。
「……なっ……?」
今の一発でわかる……こいつは雑魚だって。
「てめ……」
次の一発で……
「あ……」
僕の拳は、丁度こめかみの部分に当たり、次の瞬間には高也は白目を剥いて倒れた。
すると倒れた音がもう一つ。その音を皮切りに、ドサァ! という音が辺りに響いた。
「緋澪……先輩?」
最初に倒れたのが緋澪先輩。その後に倒れたのが高也がつれてきた男たちだった。
……。
……何度も見たことのある光景。
体中ボロボロな人が倒れていて、僕はその中で一人だけ無傷で立っていた。
僕の中には、少しの心の変化もなく、ただ空気があるだけの何処かにいるような感覚……
光景だけ見れば僕は前と何も変わっていない。
でも、今回は違っていた。
僕には今……助けなければならない、いや……助けたいと思う人がいる。
こんばんは、甘味です!
今回の話は少し怖い雰囲気です。
当たり前ですけど、リンチなんてやっちゃいけませんよ!
……それでは次話もどうか、よろしくお願いします。
次回はほんわかな感じでお届けします。