5月1日:依頼主
「わ、わた、わた……」
「わた?」
「ご、ご、ご、ごめ、ごめんなさい……わた、私、う、上手く言葉が……つか、使えないの……」
……困ったな……。
僕は放課後、例の変わった依頼の主のところへやってきていた。
依頼主は僕の隣のクラスの佐藤日向という女子生徒だった。
メガネで髪は長く、かなり目立たない雰囲気を出している。僕が言えた口ではないけど。
「……ゆっくりでもいいから、依頼について詳しく教えてもらえるかな?」
「は……はい……」
日向さんは、本当にゆっくりと話し始めた。
「か、彼氏が……さ、最近変なんです……な、何かからお、怯えているんです……ふた、二人きりでいるときも、頻りに後ろを……気にしたり……」
「その、彼には何があったのか聞いたんですか?」
「えぇ……でも……な、何でもないとしか言ってくれないんです……」
「それって、浮気じゃないかしら?」
突然現れたのは、緋澪先輩だった。
「緋澪先輩?! 何でここに?」
「……浮気……ど……どういう意味ですか……」
緋澪先輩は、僕の質問には答えずに言った。
「つまり、貴女以外に付き合っている子が居て、貴女と一緒にいるのがバレたらまずいから周りを見たりするんじゃない? ってこと」
「そんなことありえない! 私と彼は愛し合ってるの! 出任せを言わないで!」
日向さんは、怒りに満ちた表情で緋澪先輩に言った。緋澪先輩は素っ気無く答えた。
「それじゃ、彼が誰かに恨まれてるとか」
この人は……さっきから何で余計なことを……
「そんな! 彼はとってもいい人! あなたは彼の何も知らないくせに勝手なこと言わないで! きっと誰かの勝手な逆恨みか何かよ!」
僕は逆上を抑える意味も込めて日向さんに尋ねた。
「……日向さん? さっきから大分舌が回るみたいだけど、話が違ってない?」
「……ご、ごめんなさい……私、興奮すると……不思議なくらい言葉が次々と出るんです……」
「そうなんですか。と、とにかく、少し落ち着いてください。それと、緋澪先輩も少し黙っててください」
「むー……」
緋澪先輩は少しむくれながらも、それ以上文句は言わなかった。
「一応大体はわかりました、結局僕たちは何をすればいいんでしょうか?」
「彼のことを……助けてあげてほしいの……」
「……調べた結果がどんなものでも、文句は言わない?」
「緋澪先輩」
「黙ってて。どうなの? 調べた結果が、もしさっき私が言った通りでも大丈夫なの?」
日向さんはすぐに答えた。
「大丈夫です……彼のこと……しん、信じて……ますから……」
「そう、ならいいのよ。それなら私たちも全力でその彼を助けられるわ」
「よ、よろしく……お願いします……」
今日の緋澪先輩は……いつもより少し格好いい気がする。
緋澪先輩は僕に耳打ちをした。
「それじゃ、頑張ってね、夜音クン」
……気のせいだった。
こんばんは、甘味です!
今回から少しシリアスモードです。
できれば全編コメディで行きたかったですけど、この章は殆どシリアスで終わってしまいそうです。
だから、って言うと何だか変ですけど、今日から少し更新スピードを速めたいと思います。今週中にはこの章に関しては終了を迎えたいと思います。
だから、毎日見に来てね★←これが目的
それでは、次話もどうぞ、よろしくお願いします。