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4月20日:出会い

「ねぇ、君!」

四月の晴れた日の放課後。僕が屋上でボーっとしているときのこと。その人は突然僕の目の前に現れた。見たことのない、少し紫がかった黒髪の綺麗な女の人だった。制服の胸についたワッペンの色を見ると、上級生らしいことがわかった。

僕は突然話しかけられたことに、多少たじろぎながらも尋ねた。

「な、何ですか?」

「私、吉野緋澪よしのひれいって言うの。君の名前は?」

「僕は……神崎かみさき……夜音やおんです」

その緋澪先輩とやらは、僕の名前を聞くと小さい声で「くぅー!」と唸り、小さくガッツポーズをすると、僕の肩をがっしりと掴み、言った。

「イメージぴったり!」

……はい? 名前が?

緋澪先輩は、僕の目が点になっていることにも気付かずに恥じらうようにして言った。

「もし……夜音クンが良かったらでいいんだけど……私と『イイコト』しない?」

はい? え? え? いいことって……良いことじゃなくて『イイコト』? ど、ど、ど、どういうことなんですか? そ、そ、それって、まさか、……そんな! 初対面でそんな! いや、こんな綺麗な人……違う! そういう問題じゃない!

僕はかなり動転しながらも答えた。

「よ、喜んで!」

すると、緋澪先輩は嬉しそうに僕の手をギュッと両手で握り、言った。

「すぐにでもやりましょ!」

そのやりましょの『や』ってカタカナなんでしょうか。どうなんでしょうか。二人で変形合体的な意味でしょうか。

「こ、ここでですか?」

「そうねぇ、ここだと人目があるから……私の部屋に来るといいわ」

わ、私の部屋?

僕の頭の中はこれでもかというほどピンク色に染まってしまっていた。

「ね、大丈夫?」

僕がボーっとしているのを心配そうに見つめる先輩は、僕が「大丈夫です」と頷くと、僕の手を引いていった。


学校の端にある特別棟。特別棟とは昔は何かに使っていたが、何かの事情で使われなくなったと言う、とにかく謎の多い場所だ。とりあえずそこに近寄る生徒は殆どいないらしい。緋澪先輩に手を引かれた僕は、そこにたどり着いた。

「着いたわ。ここが私の部屋……って言っても、勝手に使ってるだけだけどね」

緋澪先輩が立ち止まったところにあった部屋、そこには『第4倉庫』と書かれていた。

「入って頂戴」

「……はい」

もう僕の中はドキドキの絶頂でビクトリーだ。何言ってるのか自分でもわからない。

僕が中に入り、緋澪先輩がそれに続いて入った。

そして緋澪先輩は、ガチャリと音を立ててドアの鍵を閉めると言った。

「これで二人っきり……私、夜音クンのこと、入学式のときから目をつけてたの……」

緋澪先輩は、僕に頬を赤らめながら近寄り、僕の手を優しく握った。

「……ね、ね、私にさ……呪われてくれない?」

「……はい?」

え、え、何、どういうこと? あれ、何か違うゾ、想像してたものと。

「だからぁ、私に呪われて欲しいのぉ」

……え、『私を一生装備して抱きしめて』的な意味? 『教会で式をしたって私の呪いは解けないゾ!』的な意味? あぁ、なるほど。辻褄が合う…… あれ。合うか?

「今日は、藁子? ジュージ? どっちがいい?」

……『藁子? ジュージ? それともア・タ・シ?』的な? あれ、何だか変だぞ。

緋澪先輩は、片手に藁人形、もう片手に怪しげな本を持っている。

……。え、マジ? 呪うって、本当にそっち? 比喩的なものではなく、現実的にそっち? 『イイコト』ってそれ?

「……はぁあああああああ?!」


これが、僕と緋澪先輩との出会いだった。




こんばんは、甘味です。

とりあえず僕と電波と呪術入門、略して『僕電』本格的にスタートです!


たぶん男なら、少し思わせぶりのこと言われたら、そっちの方向にすぐ考えちゃいますよね。

うん。その勘違いは普通だぞ。夜音。


それでは次話もよろしくどうぞ。

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