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2 目指す先は?

正直、時間が足りない。もっと当時、過去の自分が生きていた時代の情報を収集したかったが、もう頭がついてこないし疲れてしまったので部屋に戻ってきた。同室の結衣ちゃん(私はユーイと呼んでいた様だ)が「どこ行ってたのよ。今日は早く寝な」と今日の授業内容をざっくり説明しつつ、寝支度を手伝ってくれた。なんて優しい子。過去の自分が強く出ていて違和感が大きいが明日から大丈夫だろうか。そんなことを考えていたら気づけば寝ていた。


一夜明けると少しすっきりした。相変わらず過去の自分(豊橋和子という名前だった)の意識は強いが、今の私のこともちゃんと覚えていてひとつになってきた気がする。


「ユーイ、おはよ。昨日はごめんね」


向かいのベッドからのそのそと起き上がる結衣ちゃんに声を掛ける。


「もう大丈夫?今日も休む?」


まだ寝起きでぼんやりしながらも心配してくれる結衣ちゃんは本当に優しい子だ。でも、黒髪をすでに短く切り揃えた小さな顔はすでに男役のかっこよさが滲み出ていてこの子絶対路線に乗る!とファン目線になってしまう。今の私はユーイには負けないぐらい素敵なタカラジェンヌになるのよ!という対抗意識もあるのだけど。華と和子の意識が拮抗して忙しい。結衣ちゃんはまだ伸び盛りと言っているけど今の時点ですでに169cmはあるからきっと本人の希望通り男役になれるだろう。だけど、私は165cm。かなり微妙なラインだ。このままだと娘役にしては大きいけど、男役としては小さい。勿論、165cmのトップスターさんだって過去には居たけれど。今の基準だとどうなんだろう。


「どうした?」


動かない私に結衣ちゃんが聞いてくれる。


「ううん、ユーイはやっぱり背が高くて小顔で切れ長の目がかっこいいなって」


じいっと見つめる私に朝から何言ってんの、と笑って結衣ちゃんはベッドから出て支度をはじめる。私も立ち上がり洗面台で顔を洗い、制服に着替える。そう、憧れだった宝塚音楽学校の制服!勿論昨日までも毎日着ていた訳だけど、今日の私にとっては初めて意識して着替える訳で。白いブラウスにグレーのジャンパースカート。赤いリボンを付けるとそこにいるのは音楽学校生。前髪が額にかからないようあげて髪をまとめる。まだ私の髪はお団子に出来るほど伸ばされたままだ。昨日までの私は男役なら路線に乗りたいし、娘役ならトップ娘役になりたい!!と意気込んでいたけど、今日の私はそれよりも出来る限り長く宝塚に居たい。まずは無事音楽学校を卒業して、宝塚に入団。芝居や歌に力を入れて出来れば専科(組に所属せず各公演へ出演する生徒の集まり。主に芝居で重要な脇役(老け役)を担当することが多い)に所属したい。そして定年まで勤めあげたい。その為には今までどちらかと言えばバレエやダンスが好きで力を入れていたけど、今後は歌と芝居だ!


そう気合を入れつつまずは予科生の証、掃除。そして朝食。私の掃除担当は講堂のロビー。現在の音楽学校校舎は私が知っているのと少し違う気がするので昔とは違うけど、タニちゃん(大和悠河)やあひちゃん(遼河はるひ)と一緒かな。掃除場所である程度期待度や立ち位置が予測出来ると言われていたが、悪くないのでは、自分。ちなみに結衣ちゃんは1番教室。1番教室と玄関周りはスターさんになる人が多い。流石結衣ちゃん。


今日の授業はソルフェージュ、演劇、ピアノ、バレエ。昨日は4限の演劇で倒れたからモダンダンスを1コマ欠席しただけで済んだ。出来る限り授業は休みたくないので良かった良かった。他に日本舞踊やボイストレーニング、タップダンス等々舞台に必要な要素を学ぶ。本科生(2年目)でも基本的な項目は同じでよりレベルが上がっていく。


この2年間の成績の順位が歌劇団に入ってからもずっと付いて回る。入団7年目までは新人公演という若手だけで行う公演があるし本公演だって成績で役や立ち位置が決まる。毎年試験もあるが、基本の順位は音楽学校卒業時の物だ。卒業時に主席であればその栄光はずっとついて回る。出来るだけ良い成績を取りたい。今の私は50人中23位。真ん中より若干上。かなり微妙。細かく項目ごとに見れば10位以内に入れているものもあるのだけど。日本舞踊と声楽が正直足を引っ張っている。専科を目指すならここは押さえておきたい。ので、今日から自主練します!

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