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4鼻垂れ小僧カイ

「まだ話はおわってない!」

ひよりは玉に向かって叫んだが、あの玉の気配はない。

あの光のせいで目がチカチカする。微かに見えたのは見慣れた洗面台の所だった。

足元を見ると、気絶しているカイを下敷きにして座っていた。

クソ玉が発光したせいで目がまだ眩む。

目頭を押さえる。

・・・あの発光なんとかならないの。絶対わざとやってるわ。

それに、説明しに来たって言ったくせに情報少なすぎ。

ひよりは目頭を押さえていた自分の手をじっと見つめながら念じてみる。

水、水が欲しいー!水、でろー!


・・・・・


何も起こらない。

短いため息をつき、エマさんか鼻垂れ小僧のカイくんに聞くしかないかぁとポツリつぶやく。


ドーン


爆発で建物が揺れる。

「うわっ」

ひよりは鼻垂れ小僧のカイの顔に右手をついてしまった。手に嫌な感触が伝わる。手を上げると、でろ~んと鼻水が手についていた。

「っきたないっ。鼻かめよ!」

ひよりは水道の蛇口をひねり手を洗おうとした。が、水が出ない。


ドーン


また激しい爆発音と建物が揺れた。

そうだ、エマさんは大丈夫だろうか。

エマさんはこの爆発音の中、どんな敵と戦っているのだろう。

ひよりは鼻水がついた手を眺めながら思った。

「うくっ...」

ひよりが下敷きにしていた鼻垂れ小僧のカイが呻いて目を覚ます。

「カイくん、大丈夫?」

ひよりは声を掛けながら鼻水のついた手でカイを起こしつつ、カイの着ている服にしれっと鼻水を拭く。

※いい子はまねしないでね。

「すーはー、息、できたー!うん、だいじょうぶだよ。なんだか胸の辺りが苦しかったぁ。」

さっきまでひよりが鼻垂れ小僧のカイの上に乗っていたので苦しかったらしい。勢いよく空気を吸っている。

「カイくん、起きたばかりで悪いんだけど、水が出ないの。」

とひよりは蛇口をひねってみせる。

「それね、今は使えないの。魔物が空から聖なる泉を攻撃しちゃって、水が半分くらいになっちゃったの。勿体無いから止めるって、ねーちゃんが言ってた。」

「えー!」

ひよりは驚いた。

泉が攻撃されちゃうの?!しかも水が半分くらいになっちゃうなんて、どんだけー!!前世の有名人の人のように叫びたくなる。聖なる泉でアイツに復讐が出来る事を聞いたばかりなのに、魔物が泉を攻撃しちゃうなんてあんまりだ!!

ひよりは頭を抱えていた。

そして、カイの両肩を掴み前のめりになってきく。

「聖なる泉って生活水としても使っているの?」

「う、うん。この建物だけだけど、ここに住んでいる人、聖職者も含めて、皆生活水として使ってるよ。顔洗ったり、飲んだり...」

カイの両肩からひよりの手が離れ、ひよりは青ざめた。

「カイくーん、私が泉に落ちたって言ったよね...この泉はそのままここまで引っ張ってきているのかなぁー?それとも、途中、更に綺麗に浄化してたりしてるー?」

青ざめた顔で少しかすれたひよりの声。鼻垂れ小僧のカイは少し引き気味になった。

「聖なる泉は綺麗なものだから、浄化なんてしないよ。そのまま引っ張って使ってるって、とーちゃんが言ってたよ。」

「そーなんだ、そっか!」

ひよりはニカッと笑った。聖なる泉に漏らしたままダイブした事を考えていたが、落とされ攻撃され気絶していた無力な自分に神様が何とかしてくれただろうと都合よく解釈して、あれはもう無かった事にした。

話題をかえよう。

「魔物って泉を攻撃できるんだね。聖なる泉には魔物は寄り付けないような事言ってたのに。」

青ざめた顔から通常の顔に戻ったひよりを見て何故か安堵する鼻垂れ小僧のカイ。

「そうなの。初めてだったよ。今までこんな事なかったから。一週間くらい前に魔物が空から攻撃してきたの。...だからね、魔物と間違えてクロの事を攻撃しちゃったの。ごめんなさい。」

鼻垂れ小僧のカイはひよりに向かって謝った。

「いいよ。そんなことがあったら攻撃するよね。私こそ、助けてくれてありがとう。」

ひよりがそう言うと、2人見つめ合って笑う。


爆発音と建物の揺れが収まっているのに気付き、ひよりはエマのことが急に心配になった。

「カイくん、エマさんは大丈夫かな」

鼻垂れ小僧のカイは両手を腰に当てて自慢しながら

「ねーちゃんは大丈夫だよ。一応、聖女だし。この街では3、4番目くらいに強いんだ。」

と言った。

それでも心配そうな顔をするひよりを見て

「心配なら少し見に行ってみる?」

とひよりを覗き込みながら言った。

ひよりは小さく頷く。

「じゃぁ、ついて来て。」

やけに笑顔の鼻垂れ小僧のカイがひよりの手をとって洗面台の反対側にある大きな扉へ歩き出した。













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