表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/32

1ごめんなさい

「ご臨終です」


「・・・え、私死んだの?!」


暗闇の中、目を覚ます。一人の女。


「鈴木ひより30歳。既婚者。夫の暴力により死亡。」


「!!私の個人情報言わないでよ!誰よ、あんた!出てきなさい!ってか、私は死んでない!こうして生きてるでしょ!!」


誰も居ない暗闇の中、ひよりの発した言葉が響く。


ポゥ


ひよりの目の前に光った球体が現れた。


「火の・・・玉・・・?」

ひよりはその玉に手を触れようと手を触れようと手を伸ばす。が、玉はひよりの手を交わし頭上をフヨフヨ動き出した。


「気安く触ろうとしないで下さい。」

「ひ、火の玉がしゃべった!!」

「ははは、なんですか火の玉って。火の玉じゃないですよ。わたしは輪廻、転生の神様です。神様って呼んでくださいね☆」

そう言うと玉は、ひよりの顔の前で止まった。


「かみ、さま、、、」

ひよりは信じられないという顔をしている。


「はい!では、ひよりさん、これから転生してもらいますね☆」

「嫌です。」

「・・・はい?」

玉が小刻みに揺れる。


「転生は嫌です。あれでしょ?最近巷で流行ってる転生って。」

「んー・・・、

前世の記憶は消すので流行ってるものと同じかはわかりませんが、別の自分になれるんですよ素敵ですよね☆」

「素敵じゃないです。そもそも私は本当に死んだんですか?」

「そこ疑いますか?!ひよりさんは死んでるんですよ!!」

玉がそう言うと、ひよりの目の前に大きい映像を映し出した。

そこにはひよりが時計を見てあわてている姿が映し出されていた。

「私・・・?」

ひよりは玉をみて聞く。

「そうです。ひよりさんの死ぬ前の出来事です。ちゃんと見ててくださいね!」

玉に言われ、ひよりは映像に目を戻す。



ひよりは、大学時代から付き合っていた7歳上の彼と結婚し、子供は居ないが幸せに暮らしてきた。

彼はいつもはとても穏やかでいい人なのだが、一度怒らせるとネチネチ理詰めで追い詰めてくる。

謝っても彼の気分が良くならないとずっと怒っている。怒っていても、ひよりには手は上げなかった。

「大変!遅くなっちゃった。」

腕時計を見ながらひよりはあわてて職場をでていた。

いつもは帰る時、彼に電話をするのだが慌てていた為、忘れてしまいそのまま帰宅した。

家に帰ると、連絡をしなかった為に彼に殴られた。

いつもは言葉で攻めるのに今回は初めて殴られた。

呆然とするひより。そんなひよりに彼は叫ぶ。

「あれほど言ったよな?帰宅するとき絶対連絡しろと!約束してるよな?!連絡しろって!」

そしてもう一発ひよりの左頬を殴る。

「約束なんで破るんだよ!ありえないんだけど!いつもそうだよな、俺が風呂入るとき下着は出てない、服も出てない。朝のお茶もでない。他にもあるよ。前に注意したことを繰り返す。何度言っても直らない。同じことを繰り返すのはわざとしか思えない・・・。」

「連絡しないで帰ってきて、ごめんなさい。」

ひよりは左頬を押さえながら謝る。

「仕事してるからって威張るなよ!俺より稼げてねぇじゃん。」

「・・・・約束やぶってごめんなさい。」

「お前は俺を裏切ってるんだよ!」

彼はひよりに叫ぶ。

「・・・まってよ、じゃあ、あの人はだれよ?」

ひよりがおそるおそる彼の横に居る女の人を差す。

「今はそんなの関係ないだろ!!裏切り者!」

彼が吠えながら、ひよりの左頬を思いっきり殴った。ひよりは体制を崩し、倒れた。

そのまま、ひよりは起き上がることはなかった。

映像が切り替わる。ひよりのお葬式の風景と祭壇が映る。彼が喪主をしていた。

また映像が切り替わり、火葬場で骨となったひよりを、号泣しながら彼がお骨上げ用の箸で骨を骨壷に入れていた。

映像が止まる。


「火葬されちゃって肉体がないんですよねー。」

ひよりの顔の横でフヨフヨ動きながら玉は言う。

「生き返ることができない、といいたいんですね。」

「そうですぅ。察しがいいですね☆」

ひよりは深いため息をついた。

「はぁ。察しがいいって言うか、私が転生したくないって言っていたし、生き返らせてと言いそうだから、ここまで見せたんでしょ。」

「そうでーす☆肉体がないので、生き返るのはあきらめて転生してくださいね☆」

「なら、転生先でも彼に復讐ができるようにして。」

ひよりは玉に向かって言った。

「彼に、死ぬまで復讐、嫌がらせをしたいの。さっきみてて、他の思い出したのが色々と走馬灯のように過ぎったのよ。私が死んで、彼が楽しんで生きている姿を想像すると、腹が立つの。腸が煮えくり返るわ!」

ひよりは玉の前で強く拳を作る。

「今までの自分が報われるまで・・・いえ、彼が死ぬまで私の手で復讐をしたいの。恨みと憎しみで汚いのはわかっているけど、どうしても譲れない。」

「うーん、困りましたねぇ。転生先で前世の記憶は持ち込んじゃ駄目だし、転生先で前世に復讐なんてもちろんしちゃ駄目なんですよぉ。」

「なら、このまま彼のところに連れて行って。怨霊として復讐するから。」

「ええええ!!だめですだめ!絶対だめ!困りますぅ!」

玉は焦りながらひよりの周りをクルクル高速で回り始めた。


どのくらい時間が経ったのだろう。結構時間が経っていると思う。結局折れたのは玉だった。

玉が深い深----い溜息をついた。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。わかりました。どーなっても知りませんよ。彼より先に死ぬかも知れないですよ。いいんですね?」

玉はひよりに念をおした。

「いいわよ。どーんとこいよ!彼に復讐できるなら、なにがあっても大丈夫よ!」

「・・・・わかりました。わたしもひよりさんにばかり構ってられないのでね。さっさと転生させて、次の仕事に行かないと☆」

玉がそう言うと、ひよりの前で眩しく光り、其の光にひよりが呑み込まれた――






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ