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「やあやあ名無しくん、今日もまた、暇そうだねぇ!」
ロビーで大昔の新聞記事を読んでいた俺は、帰ってきたユウにナイフを投げられて驚いてかわす。
「ちょ、やめっ……バカかお前は!?」
「バカは君だろ。こんなにたくさん部屋のあるところで、ロビー暮らしなんて」
「俺の部屋はないんだ。ほっとけ」
「何読んでんの?」
新聞記事を覗き込まれ、慌てて隠した。
「関係ないだろ」
「冷たい事言うなよ。同じ体を共有してるよしみだろ?」
「俺は一度も使わせてもらってない」
「そりゃ、失礼」
ユウがどっかと隣に座ってきたので、めいいっぱい間を空けた。
「ねえ、名無しくん」
「なに」
「君はいつまで、引きこもってるつもりなのかな」
「別にいいだろ。誰も困ってないんだ」
新聞記事をポケットにしまうと、ユウはただ少し寂しそうに、「……そう」と言って、消えた。