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「秘密結社SSM、って知ってる?」
ダイニングで、3人でミレの作ってくれたオムライスとサラダを囲み、会話をしていると、ユウと名乗った例の男が聞きなれないワードを出してきた。
「SSM? それはまたなんの精神病の名前なの?」
「いやこれは違うよリアちゃん? これは、Secret Society Murderersの略。日本語で言うと、『秘密結社・秘密結社殺し』だね」
「ややこしい」
「秘密結社を探し出しては、メンバーを片っ端から殺していく……そんな恐ろしい結社があるんだって」
オムライスをもぐもぐとやりながら、ミレが声をあげた。
「え、それやばくね? マジ困るわ」
「そうだよねー」
僕ら多重人格者は、基本的に自分しか愛せないからねぇ。
そう言うとユウはナイフとフォークを手に取り、付け合わせのブロッコリーと人参を器用に切り始めた。
「チームワークとかネットワークとか、壊滅的にないから。我らが頼みの綱、天下の会長様がやられないことを祈るばかりだよ」
「いや、まず自分の心配しろよ、ユウ。おめー、この世で一番恨みを買ってるに等しい職業してんだからよ」
「僕? 僕は返り討ちにするから大丈夫でーす」
ひらひらとナイフを振るユウに、私は尋ねる。
「何もしてないのに殺すの? その人たちは」
「ん? まあ、たぶんね。でも過去に秘密結社に何かされて、それで逆恨みしてるってこともあるのかも。あるいはそんな恨みなんてなくて、社会不適合者に秘密結社があるという時点で気に食わないから、殺してるだけなのかもしれないけど……だからとにかく、変な人に会ったら気をつけるんだよ?」
すると突然、ユウはミレにナイフを向けた。
「それとミレ、僕は何もあの病院にいた全員を殺してはいないぞ! ちゃんと人気の無いところで、リアちゃんのご両親だけ殺りました!」
「え、じゃ本物の医者は?」
「眠らせただけですー! 無事ですー!」
もー、すぐ話に尾びれがつきまくるんだからこの秘密結社はー、とユウはスプーンに持ち替えてオムライスをがっつく。
「あー、やっぱりおいしー、ミレの作ったご飯!」
「……」
それを聞いて、なんとなく私も、オムライスを口に運ぶ。確かに、今まで食べたどのオムライスより、ずっと美味しかった。