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「ねえ、人殺しの内部人格って、どんな気持ち?」
ここは、いつも同じだ。
俺が生まれた頃から、一箇所として変わらない。
高級ホテルのロビーのような空間。
客なんて来ないのに、いつもライトが煌々と光っているし、床は磨き立てのようにピカピカに輝いている。
ただ一人、部屋も名前も与えられていない俺は、いつでもそのロビーの無駄に豪華なソファで暇を潰している。
「知らないよ」
俺はぶっきらぼうに言い返した。
おそらくはいつものように後ろに立っている、この体を共有している別の人格・アヤセに
「つまんないの。そんなんだから、いつまでも名無しのロビー暮らしなんだよー?」
「お前が殺しをやめてくれたら、お前の仕事も消えて、俺のぶんの部屋が空くんだ」
「それはないねー。ユウが殺意を抑えられる日なんて、永遠に来ないもん」
うふふ、と耳元で笑い声がした。
「それくらい、あなたが一番わかっているんでしょう? 一番年上の名無しくん」
「……っ」
殴り返してやろうと振り向くと、アヤセはもう消えていた。