90 汚い大人とバケモノの子
明日、明後日は私情により、午後の7時、9時に投稿します。
水曜日からはいつも通りの午前9時〜10時、午後の1時〜2時、午後の8時〜9時で投稿します。
最近バタバタと忙しいんですよね…
明日は1ヶ月記念です!それと、私の誕生日です!
これからも頑張って書いていきます!
それでは、本編をどうぞ!
目が覚めた。俺は、サーラを助けるためにギルドへ向かう。
ギルドの扉を一人で開ける。
「どうも、おはようございます。朝から早いですね」
「そんなことどうでもいいんで、早く返してください」
「まあ、怖い魔族だこと。そんなに焦らないでも出してあげるわよ」
そう言ってセリアが少し大きな瓶を取り出した。中には赤黒いものが入っている。
「おい!どう言うことだよ!はっきり言え!」
「あらあら、こんな冗談でも怒っちゃうくらいですか。これはあなたの大好きな大好きな妖精族ではありませんよ。とりあえず、気持ち悪いんで、その人間のように振る舞うの、やめてもらえませんかね」
「何があった⁈」
奥からギルドマスターが出てくる。
「いいえ、わがままでうるさい冒険者さんが…」
「このクソみたいな受付が人のパーティーの仲間を拉致っているんです。返せと言っても返さないんです」
「言ってくれますね。誰が私が拉致したと?他の冒険者という可能性もあるでしょう?魔族」
「出しなさい。冒険者を拉致するのが仕事か?」
ギルドマスターがそう言ってセリアは呆れたように受付の台の下からサーラを引っ張り出す。
サーラはとても弱っている様子だった。
「マスター、ひとまず聞いてください。この魔族はこの妖精族と一緒に冒険者として生きているんです。あの、人族を何の関係もなしに戦争に巻き込んでいったあの2つの種族が人間の生きる地で冒険をしているんです!」
セリアがサーラの長い耳を引っ張りながら言う。
ギルドマスターは、言葉に詰まりながらも、
「いいじゃないか。彼らは冒険者としていきたいならそれでも」
と、言った。
「何とも思わないのはマスターだけですよ。ほら、他の冒険者の顔を見てくださいよ!あの憎しみの目を!そもそも私はこの子を嫌々引き取っただけですから!もともと、冒険者が捕まえて持ってきましたから!」
「だからといって、ギルド側が悪くないとはならないだろ」
ギルドマスターが言う。
「リーダー…いいよ。僕の心配なんかしなくても…」
サーラが俺に向かって声をかける。
「今から助けるから」
「いいの。いつになるにしても、目的を達成するには、リーダーは僕を見捨てなきゃいけないの。だってリーダー、ニンゲンになるんでしょ?なら、妖精族の僕を嫌わなきゃ。人間のナユタがニンゲンになるにはそうしなきゃいけないの。だから、このままでいいの」
サーラが寂しそうに笑う。
「いいから、俺はサーラを助けるから」
「へんな友情は他所で語ってくれない?耳が痛くて仕方がないんだけど。まあ、その友情も今日で終わるけどね」
セリアはそう言ってサーラを踏みつける。
周りの冒険者たちは、哀れみの目と歓声を上げていた。
俺は何かが込み上がってきた。
「大人って、汚いことしていなきゃ、生きていけないんですか。誰かを捕まえて、その人の命を奪わなければ、生きていけないんですか」
地球もここでも、大人は誰かを標的にして誰かの人生を奪わなければ生きていけないのか。
そんな気持ちでいっぱいだった。
「いや…そんなことは…」
ギルドマスターがそう言おうとしたが、セリアに言葉を遮られる。
「そうよ。人は皆、醜くて、残酷な生き物なの。その部分を必死に隠して、必死に自分にはないと思い込ませて生きていく生物なの」
そう言う。続けて、
「さっきの言葉には訂正があるわ。誰かを標的にではない。罪を犯した人が標的になるの」
サーラが何をしたのか。何もしていないではないか。
俺は怒っていた。
「俺も大人になります」
俺は、セリアに向かって睨みつけながら一歩を踏み出す。
「やめて!リーダーは、リーダーのままでいて…」
サーラが俺を止める。
「うるさいなあ!」
セリアがサーラを勢いをつけて蹴る。その衝撃でサーラが床に倒れた。
「あら?気絶したかしら」
セリアが笑う。周りの冒険者も一緒に笑っている。
俺は許せなかった。息が荒くなっていた。
こいつらは、仲間を殺した。じゃあ、殺してもいいよね。
俺はゆっくりと息を吐いて…
「死んで?」
と、笑いかけた。
見たことのある光景が広がった。
俺の魔法が、ここにある汚いもの全て排除してくれる。
「あはは!ハハハハハ!」
綺麗に消していく。全てを消していく。
「リーダー…」
サーラの声がして、魔法を使う手を止めた。
「リーダー、リーダーはリーダーのままでいて」
俺はまた魔法を使う。
「ごめん、俺は最初からこうなんだよ」
「リーダーは…ナユタという一人の人間は僕にとっての希望の光なんだよ?」
「その希望の光は、ただのバケモノだよ」
「バケモノじゃないさ。だっていつかはニンゲンになるんでしょ?」
サーラはそのボロボロの体で俺に笑いかける。
「助けてくれるなら、もう、いいよね。一緒に帰ろ」
俺はまた、魔法を使うのをやめる。
まだ、人は死んでいない。ただ、床に伏せている。後遺症が残るくらいの傷は負わせた。サーラにしたことはこいつらにもした。
「ね?」
サーラはずっと笑っている。
「……わかったよ」
俺はサーラの笑顔に負けた。
まだ息が上がった状態だったが、サーラを抱えて、2人でギルドを出ようとした。
「この街を出るにしろ、出ないにしろ、また、一度ここに立ち寄ってくれないか?」
ギルドマスターがそういう。
「……わかりました。考えておきます」
俺はそう言って、血が散った部屋を出て行った。
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