81 バケモノと冒険。
俺たちは茂みの中にあった開けた場所で睡眠をとった。サーラさんから、「明日の予定を立てておいてね」と、言われて寝付けていない。
隣ではもう、サーラさんが寝ている。
俺はサーラさんの寝顔を見ていると、違和感を感じた。
「フード、そういえば、取っていないな」
サーラさんはフードを付けたまま寝ていた。確かにそちらの方が温かく、後頭部も痛くないだろうが、今日はだいぶ歩いた。汗がこもって、匂いになりそうだ。
俺はフードを外そうとした時、何かが見えた。
「妖精族⁈」
尖った長い耳が見えたのだ。俺はフードを外さずにそのまま横で寝た。
*****
「おはよう、ナユタ君」
「ああ、おはよう」
結局あまり寝付けなかった。おそらくサーラさんが隠していることを俺は見てしまい、少し対応に困る。
「今日の予定は決まったかい?」
俺はここがどこなのかが分かっていなかった。そのことを伝えると、「ナユタ君はなんでここにいるの⁈」と、驚かれた。
「俺は、ある目的があって、街を出てきた。いずれ帰る予定だ」
「その目的がすごく気になるなぁ。僕は、ある出来事があって村から出てきた」
俺は「そうか」とだけ言って、少しの間、沈黙ができた。
「じっとしておくのも悪いし、昨日みたいに歩こっか」
そう言って、サーラさんは立ち上がる。
「まって、まだ少し休んで行こう」
俺はそう言ってサーラさんの服を引っ張る。
「あっ…」
俺が服を引っ張ったことで、フードが取れた。
サーラさんが耳を塞ぐ。
「…見た?」
「…ごめん」
俺は謝ることしかできなかった。
*****
「別に見られても良かったんだよ。いずれ見せる時が来るからね。そう考えたら、よかったのかもしれたいや」
そう言って、こちらを向く。
「ナユタ君が思っているように、僕は妖精族だよ。嫌いになった?」
俺は、「なんで?」と答える。
「昔から人族と、妖精族のことを嫌うからね。前のパーティーも僕を嫌々入れてくれたよ。魔法が使える奴がいた方がいい、ということでね」
だから、昨日パーティーを聞いた時にいつもと違う感じがしたのか。
「ここで別れようか」
そう言って、サーラさんが立ち上がる。
「待って」
俺は呼び止めた。何故だか、サーラさんとはわかりあえるようなきがした。
「なんで、止めるの?人間らしく怖いだの気持ち悪いだの言えばいいじゃないか。人間が一番恐れている【バケモノ】だよ」
そうか。みんな俺を恐れていたんだな。
「俺も【バケモノ】らしい。お互い様だな」
そう言ってサーラさんに笑顔で返した。
「…何があったの?僕でよかったら聞いてあげるよ」
サーラさんは大人しくなり、俺の隣に座ってフードを付けた。
サーラさんは、俺を気遣ってくれるらしい。人間のことを嫌っているのに。
俺は、王都からここまでであったことを話した。
「俺は王を殺したんだ。失望したかい?」
「いいや、そんなことないよ。『誰かの為』だったんでしょ?」
始めて、このことを言った。これを聞いたらみんなに罵声を浴びせられる、【バケモノ】と思われる、と思っていたからだ。
でも、サーラさんは違った。俺のことを理解してくれるようだった。
「僕の話もしよっか」
そう言って、サーラさんは昔の話をしてくれた。
「僕のしたことは、何もないんだ。魔法が少し周りの人より優れていた。それだけだったんだよ。それで、村のみんなはどうしたと思う?僕を蔑んだんだよ。僕のことを、凶悪だの、災害だの、村の失敗作だの、一番言われたのは【バケモノ】だね。僕は、そんな村が嫌だったから抜け出した。でも、外では人族がたくさんいた。【バケモノ】って何度も何度も言われたよ。そんな中で僕を拾ってくれたのがあのパーティーさ」
俺は、相槌を叩こうとしたが、続けてサーラさんが話し続けた。
「でも、この前モンスターに殺されているのを見ていたら気持ちが良かったなぁ。アイツら、影で僕を売ろうって話だったらしいからね」
笑っていた。大きな声で、不気味な声で。
でも、同じ境遇にいることで、少しだけ俺はその声は、少しだけ悲しそうに聞こえた。
俺は少しだけ手を差し伸べたかった。【ニンゲン】らしく、手を差し伸べたかった。だから…
「サーラさん、俺と冒険、しませんか?」
そう言った。
手を差し伸べたい、というのは単なる理由の後付けのような気がした。
正直俺は、俺を【ニンゲン】と見てくれる人がいることが嬉しかった。
そんな人と冒険できたらな、と思っていた。
サーラさんは戸惑っていたが、胸に手を当て、深呼吸をして、俺の手を取った。
「僕でいいなら」
サーラさんが見せたその笑顔は、心からの笑顔だと、俺はそう思えた。
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