80 茂みと俺と冒険者
目を開け、日光が直接目に入る。
体をゆっくりとあげ、腰をひねる。
ゴキゴキゴキッ
「痛ったぁ…」
体が若いからと言って茂みで寝たら、流石に腰は痛くなるか…今日は安静にしておこう。
「さて、今からどうするか…」
正直に言うと、まだ何をしようかなんて考えてもいなかった。でも、今、人に会いたいと思わない。
「来た道を帰ろうか…街で静かに暮らすか…」
俺は悩んだ結果、そのまま茂みの奥まで進むことを決めた。
ニンゲンになるにはどうすればいいのか分からなかった。力を使わなかったら俺は死ぬ。力を使ったらバケモノと思われる…
でも、何をするにも出会いが必要だと感じた。
俺は、新しい出会いを求めて茂みを突き進む。
*****
しばらくしたところで知らない声が聞こえた。
「ゔあ"あ"あ"ぁぁぁ」
俺は声の聞こえた方に進む。
そこには冒険者らしき人が何人かいた…死体で。
もう、そこは一帯は、地面が血で赤く染められていた。
そこに、あと1人生きている冒険者がいた。
「う…やめて…来ないで!」
そうは言っても、モンスターは襲いかかる。
「ふっ………!」
俺は茂みから飛び出して、そのモンスターを斬る。
「うっ…やめて…来ないで…殺さないで!」
その冒険者がやっと顔を上げる。
「モンスターは死んだよ」
俺はそう言って、そこを去ろうとする。
「あの、ありがとうございます。お名前は?」
「名乗るようなものでもないさ」
俺は茂みに戻り、同じように歩き始めた。
*****
俺は茂みを進んでからもう、陽が落ちてきた。
茂みは森みたいになってきた。
「陽が落ちるのって早いんだな」
そう言って、振り返る。
ガサッ
…何かが木に隠れる音がした。
俺は警戒心を強めてその木に近づいていった。
俺は木を切ると、俺をつけてきた奴の顔が見える。
「ヒエェ、すいませんでした!悪気はなかったんです!」
さっきの冒険者だった。
*****
「本当にすいませんでした。後をつけるなんてことをして…」
「いや、別に何とも思ってないからいいよ」
話としては、パーティーほぼ全員を殺したモンスターが、いきなり目の前からいなくなって、かわりに小さい男の子が立っていた。そして、道の方ではなく、茂みに歩いて行ったから、気になってついてきた、らしい。
それにしても、この冒険者は若い。俺と同い年くらいに見える。
「あの、お名前は…」
「…ナユタだよ。まだ、五つだ」
「僕はサーラ。一つ上の六つだね。よろしく」
聞くと、サーラさんは俺のことを「命の恩人だ」と、いう。
「俺は、たまたま通りかかって、モンスターを討伐しただけだ。別に助けたわけではない」
「でも、命の恩人にはかわりないよ。僕はパーティーを失っちゃったし…あてができるまでナユタ君について行ってもいいかな」
俺は、「あてができるまで、なら」と言って、ついてくるのを許可した。
旅をしてから始めてバケモノと思われなかったからだ。
「サーラさんは、自分のパーティーのことをどう思っていたんだ?」
俺は、そんなにすぐに気持ちが切り替えれるものだとは思わなかった。
「あれは、たまたま拾ってくれた人たちだよ。それ以上でもそれ以下でもない。特別な感情は持ち合わせてないね」
サーラさんはそう答えた。さっきまで見せていた表情とは少し違う感じだった。
「それはそうと、ナユタ君、どこに行くの?」
「決めてないけど?」
「……え?」
「え?」
「なにもないの?」
「なにもないけど…」
俺とサーラさんの間でヒューと風が吹いていくのを感じた。
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