73 自殺と助け
クルムが言っていたこと。「クローンを作ろうとした」俺はそのことがずっと気になっていた。
「クローンを作る技術があるということか。技術を持っているということは、もう誰かが…」
俺はそれから考えることをやめた。
「俺は、今からどうすればいい…?」
地球で味わった死ぬ前の孤独感と似ている感覚がした。
俺は、1人で今から何をして生きていけばいいのか、分からなくなっていた。
「もう、死んじゃおうかな」
死後で声に言われたことなんて、もうどうでもよくなっていた。
俺は鉄の牢の中で魔法を使った。
《無数の鎖》
上に出した鎖を首に当て、そのまま吊るす。
俺は目を瞑り、記憶が遠のくのを待った。
どんどん力が抜けていく。どちらかというと、喜びの方が強かった。
(父さんと母さんと同じところへ行ける)
一度死んでいるから、恐怖心はなかった。
自分でわかる。もうすぐ逝けるな、と。
その時、俺はかすかに言葉が聞こえた。
もうじき死ぬから関係ないか。
*****
「…君、…ユタ君、ナユタ君!」
そこは変わらない世界だった。
「なんで、死んでないの?ねえ?なんで…?」
結論から言うと、俺は死んでいなかった。一命を取り留められたらしい。
声が聞こえて魔法が切れて、鎖が消滅したのか。
「なんでじゃないよ、なんでそんなことするの?家族の人や周りの人に迷惑かけるでしょ!」
クルムの足元にはご飯があった。わざわざ持ってきたのか。
「迷惑かけてんのはそっちだろ!考えてわかんねえのかよ!俺を助ける?馬鹿馬鹿しい!どいつもこいつも家族、家族さぁ!わかんないだろうねぇ!家族が居なくて、どういう思いで過ごしてるかなんてさ!家族がいるのが当たり前だと思うなよ」
クルムは「すいません」と何回も言い、ご飯を置いてその場を去って行った。
去り際に「必ず助けますから…」と、言っていたが。
「必ずとか、絶対とか、軽々しく使うなよ。俺はそれに何回も騙されてたんだ」
俺は置かれた食べ物は何も口にせず、独り言をその場で言っていた。
今回、少々短くなって、申し訳ありません。
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