68 入学式
入学試験が終わってから1ヶ月。
俺は、ヘイディア学園に入学をする。
「いざ、こうなると緊張しますね」
「まあ、一度は行ってしまえば、友達も多くできて、充実した生活になるわよ。入学式、大事な役を任されたらしいけど、リラックスして堂々と行けばいいですよ」
シオンさんが笑顔でそう言って、俺を送り出してくれた。
俺はこの1ヶ月間、考えていたことがある。その理由は1ヶ月前にさかのぼる。
*****
「ナユタ君、入学、おめでとうございます。そこで提案なのですが、「新入生誓いの言葉」を言っていただけませんか?」
プルガさんがいきなり言ってくる。
「何ですか?それ」
「入学式の時に新入生の代表として誓いを言うんですよ。やりませんか?」
「分かりました。でも、何で俺なんですか?」
「誓いの言葉を言うのは試験優秀者が言うことになっているんです。闘技場であれだけのことをしたんです。成績優秀者と言っても過言ではないでしょう」
「そうですか。それでは、頑張って言おうと思います。で、どんなことを言えばいいんですか?」
「自分が誓うこと言えばいいだけですよ。それじゃあ、よろしくお願いしますね〜」
まさかとは思ったが、その誓いの言葉を考えるのは全て丸投げされた。だから、1ヶ月間、誓いの言葉をずっと考えていた。
*****
新入生が出席順で並べられる。
出席順だったから、ケイもミアも遠いところにいる。
すると、後ろから話しかけてきた。
「よう、ちびっ子。お前が一番強いって言われてるやつか?まあ、緊張すんなって。確かにいろんな人に見られるが、親御さんもいるんだろう?お前の誓いをでっかくドーンと言ってやれ!」
10歳弱くらいの男の子だった。
親御さんと言う言葉が心にくる。俺のことを思って言っているのがより心を痛めてくる。
俺は作った笑顔で「頑張ります」と、言った時、入学式が始まった。
冒険者学校の入学式はまるでお祭りみたいだった。
新入生入場から保護者は騒ぐわ生徒は拍手以外の大声を出すわで、とにかくうるさかった。
新入生が座った途端にシュンと静かになった。
『学園長式辞』
プルガさんが壇上に上がり式辞を述べる。
「新入生のみなさんご入学おめでとうございます 皆さんには 沢山の夢や希望が溢れています しかし その夢や希望は本気に情熱を傾けることで達成されることでしょう また 困ったことがあればすぐに 先生やあなたたちの先輩方に聞いてみてくださいね そして 改めまして保護者の皆様 お子様のご入学おめでとうございます 私はじめ 諸先生方でお力添えと指導をしていきたいと思います これで式辞とさせていただきます」
各方面から大きな拍手で送られる。
その後も順調にプログラムが進んでいき、ついにナユタの出番となった。
『新入生誓いの言葉』
俺はハイと返事をし、壇上に登る。
「誓いの言葉 今日、たくさんの期待を胸に私達新入生は入学式を迎えました。胸いっぱいの希望を持って、新入生としての新しいスタートを歩みだそうとしています。私たちは色々な人たちと出会い、共に学ぶことができます。楽しいだけでなく衝突することなどもあるでしょう。けれども、今は、自分で決めた将来のための準備の場で、共に学びあえる仲間がいることを大変嬉しく思います。まだまだ未熟で物足りない自身の力を、先生方や先輩方に相談しながら、新しい生活の中で精一杯磨いていきたいと思います」
これが今の俺の精一杯の文章だった。
俺が礼をすると、温かい拍手が送られる。
俺は安心して壇上を降りれた。
その後も順調に入学式は進み、閉式となった。
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