64 再試
午後になり、再試が始まる。小さな個室で一人で試験を受ける。
真ん中に机が一つあり、俺はそこに座る。
*****
この試験の前にケイとミアの二人から
「絶対合格しろよ」
と、エールを送ってもらった。
特にケイからは、「俺の相手になりそうなやつ、ナユタくらいしかいないから、合格してもらわないと困るわー」とも言われた。
恐らく、地球で、不正疑惑があれば、毛嫌いされるだろう。
この世界がか、この二人だからなのかはわからないが、優しく接してくれる。
表向きだけでもそうしてくれるなら俺も泣くほど嬉しい。
「不合格するわけないよ」と言って、この再試に臨んだ。
*****
試験監督が入って冊子を裏返して机に置く。
「まだ裏返さないでくださいね」
そう言われて待っていると、教師らしき人が試験監督含めて8人入ってきた。
「おぉ、これだけの人数だと、緊張しますね…」
「荷物検査もしたので、何もないとは思いますが、絶対に何もしないでくださいね」
「はい。分かりました」
それから少し時間をおいて、
「………初め!」
始まりの合図がかかった。
俺は一度深呼吸をして、冊子を裏返した。
その問題を見て、少し安心した。本番よりかは難しいが、できる問題だ。俺は3枚ある中で2枚を5分ほどで解いた。残り1枚をめくって問題を見ると、目を疑った。
俺は手を上げて試験監督を呼んだ。
「何か問題があったか?」
「この文字、今現在、使われていないものです。知識を図るものならこの文字を使用して問題を作るのは少しおかしいのではないですか?」
「知識を図るものであればなんでもいいだろ?」
試験監督がそう言って笑いながら離れていく。
この試験は明らかに俺を潰しにきている。こちらでもゲスい大人がいるものだと改めて感じた。
「後でプルガさんに言っときますね」
俺はそう言って問題を解き始める。
使われていない文字だと言っても、知らないとは言っていない。
シオンさんからもらった本が助けになった。あの本はだいぶ昔のものだった為、文字がわからなかった。ただ、挿絵があったため、それと合わせてなんの文字が書かれているのかを考え、それを覚えた。
その後も何冊か本をもらって、文字をどう読むかを確定させた。
「試験監督、これは問題に合わせた文字で書きますか?それとも今の文字で書きますか?」
そう聞くと、試験監督は舌打ちを小さくした。そして、「どっちでもいいよ」と、言った。
笑顔で言っていたが、内心思っていることが態度でわかる。
俺は3枚目の問題を解いて、筆記試験を終わらせた。
*****
20分ほど待って筆記試験の結果が出た。
【不正無し、満点】
良い結果だった。その後の報告で目を疑った。
【尚、技術試験は明日の午前。闘技場で行う】
今日の予定だったはずだ。
俺は疑問に思っていると、ケイとミアが走ってきた。
「まだ帰ってなかったの?」
「当たり前だ!友達の合格は見届けないとな」
「ありがたいんだけど、合格かどうかは明日決まることになった」
「なんで?技術試験終わってないの?」
「終わるはずだったんだけど、明日になったらしい」
「なんか怪しいよな。ナユタ、何かこの学校で何かしたか?」
「何もしてないよ!一部の生徒が俺の先生ってだけで…」
「この明日の技術試験、見るからに怪しいわね」
「大丈夫だって。合格するから」
「そうこなくっちゃ!んじゃ、また明日な〜」
そう言って二人は帰っていった。
2人を見送ってから振り返ると、プルガさんがいた。
「プルガさん!聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「いいですよ、再試のことですか?」
「はい。あれは確認したんですか?」
「ええ。本番のテストよりは難しかったですけど、再試の難易度だったら丁度良いかと」
「3枚目です。あれは丁度良い難易度じゃありません」
「あの冒険者心得の問題が?ナユタ君にとったら一番簡単じゃないかしら?」
「そんな問題ありませんでした。古代文字です。昔使われていた文字で問題を作るのはおかしいと思います」
「そんな問題ありませんでしたよ?」
「とぼけるんですか…もういいです。俺は明日の技術試験があるので、ここらで失礼します」
そう言って俺は部屋に戻った。
俺が部屋に帰る時、プルガさんが何か言っていた様な気がしたが…
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