54 祝賀会
プルガさんが王都から帰ってきて学園内で祝賀会が行われた。
プルガさんが主役の祝賀会なのらしいが、その祝賀会の招待状が俺にも届いたのでシオンさんに「一緒に行きませんか?」と言われて、ついていくことになった。
学園のほとんどの生徒は、俺が拘束したことを知っており、俺は会場に入るやいなや「ありがとう」などの称賛の声が上がった。
みんなにとっては人を殺す犯人がいなくなり、平和が訪れたという祝賀会なのだろうけれども、俺はそうならなかった。
俺は親が殺された。
それを知っているのはこの中で、シオンさんとプルガさんだけだった。
俺は周りと同じように喜びたかったが、素直に喜べなかった。
「ナユタ君は…そうでしたね。すいませんでした…わたしが何も気にせず誘ったからですよね…」
「いえ、俺もずっとこんな気持ちでいるのが悪いですから。今は皆様に混じって楽しみましょう」
俺はそう言ったが、シオンさんは俺のことをずっと気にしてくれているようだ。
目が会うたびに俺は「大丈夫です」とアイコンタクトを送るのだが、シオンさんはその時だけ笑顔を見せてくれて、それ以外ではソワソワしている。
「どうだーい!ナユタきゅん!!楽しんでるかーい!いえぇーーーい!」
一方のプルガさんは酔っていた。生徒にいっぱい褒められて調子に乗っていた。
俺は必死に作り笑いをしたが、できなかった。
「何かあったのかい?ナユタきゅん!!天才プルガお姉さんが、なんでも悩みを聞いてげりゅ〜♡」
俺が困っていると、シオンさんがプルガさんに耳打ちで何かを伝えた。
「学園長、親のことですよ。ナユタ君の両親、アイツに殺されたじゃないですか…」
その耳打ちで学園長は、ハッとした。
「ごめん、ナユタ君、今はゆっくりとしてくれ。まあ、でもパーティーだ。楽しんでくれても構わない」
俺に笑顔でそういうと、プルガさんはまた、酔った勢いで生徒に絡んでいた。
俺も今は親のことを忘れて楽しもうかな。
「ナユタ君、何かあったのか?」
俺に話しかけてきたのはリンネさんだった。
「いえ、何も」
「溜め込むのは良くない。まあ、ナユタ君が話せるなら話してくれ」
「いや、親のことです。あの男に殺されたんです。でも、パーティーだから、今は忘れて楽しもうかな、と思っていたところです」
リンネさんはちょっと間をおいて、「一緒にちょっと来てくれ」と言って俺をある一室に連れて行った。
「辛かったな。それなのに、あの時、シオンを助けろ、なんて勝手なことを言ってすまなかった」
「いえ、むしろありがたかったです。あのひと押しが無かったら俺は動けなかったですから」
リンネさんは「そうか」と言って俺に向かって話を始めた。
「親のことは忘れないでおいたほうがいいと思う。絶対に心の支えになる。まだ、四年という短い時間だろうがその時間はとても大切で大事な時間だ」
そう言ったらリンネさんは背を向けて、
「偉そうに言っているが、私には親がいないから分からないのだが…」
そう言ってから、「話に付き合わせたな、一方的だったのだが…祝賀会に戻るぞ」と、言って部屋を出て行った。
その背中はいつものリンネさんからは感じられない、少し寂しいような感じがした。
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