46 マジック
「おや?驚かれないんですね。幼いからすぐに泣くと思ってましたよ」
男は俺の様子を伺うようにゆっくりと歩いてみせた。
「誰だか知りませんが、不法侵入と見てよろしいでしょうか。今すぐ出ていってください」
「悪いが、それはできないね〜、私はマジックを披露しに来たんだ」
そう言ってひとつのモニターを差し出してきた。
「拉致して、監禁して、その人を使ってマジックを見せるエンターテイナーの魔術師さ」
そのモニターには父の姿があった。
「それでは、実験台の登場で〜す!」
男が指を鳴らすと、父が目の前に現れた。
現れた父は慌てて、
「ナユタ!逃げるぞ!」
そう言って俺の手を取る。
「実験台が逃げるのは許しませんよ」
そう言って、男が父を指さすと、鎖が父の腕を縛る。
「大丈夫ですよ、お父さん。私は子供を傷つけるのは趣味ではないですから。でも、抵抗されては気が変わるかもですけど」
男は笑いながら言った。
「ナユタ逃げろ!ナユタ!」
俺はその場に座り込んでいた。俺の魔法かもしれないものがそこにあったから。
それで父を縛っているのを見て恐怖で動けなくなっていた。
「おぉ、少年、いい顔してますね。私のマジックを見てくれるんですか、張り切っちゃいますね」
狂った男はまた鎖を出し、父の首を通して、鎖を浮かばせ、父を宙に浮かせた。
「少年のために、手短に済ませますね。その名も、
『人間焼失マジック』!!
では行きますよ!スリー!!」
「ナユタ…逃げろ…」
「ツー!!!!」
「はや…く…」
「ワン!!!!!!」
「ナユタァァァァァ!」
*****
俺はその時、何もできなかった。声を上げることも、助けようとすることも。ただ床に座っていた。
やっとの事で出た言葉は、
「あ"ぁ…ぁ…」
これくらいしかなかった。
*****
「ゼロ!!!!!!!!」
そう言って、男が指を弾いた。その瞬間、父の体が青い炎で焼かれた。
「では、私はこれで。引き続きショーをお楽しみください」
男は微笑みながら家を出ていった。
扉が閉まる音と共に炎が消えた。
そこには黒い灰と二本の鎖が残っていた。
その夜、どれも家のドアを開けることはなかった。
俺は、眠れずその場で、灰と鎖を見続けていた。
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