44 提案
俺は学園長に連れられ、図書室に来ていた。
「ここでちょっとだけ待ってて」
そう言って学園長は奥の部屋へ入って行った。
五分後、学園長は戻ってきた。
「一つ、ナユタ君にとってはだいぶ辛い提案をするけど、いい?」
俺は少し心の準備をして「はい」と答えた。
「魔法の事なんだが、もう、やめるのはどうだろう。…もはや私の願いでもある。諦めてくれないか」
なんでですか、とも言えなかった。俺は俯いて、
「嫌です…」
と小さく呟いた。
「嫌なら構わない。だが、この本を見てから決めてもらえるかな」
そう言って、一冊の本を取り出した。
その本には「妖術」というものがまとめられていた。
読み進めていくと、そこに[鎖]という字が書かれていた。
「見ての通り、妖術についての本だ。妖術については知っているか?」
俺は首を振った。
「妖術とは、魔法より強い力だ。それだけ聞いたらいいのだが、それを使うにあたって、代償がある」
俺は学園長の話を聞きながら本を読み進めていた。
『鎖で繋いでその力を鎮めている』
本に書かれているその言葉が妙に引っかかった。
「俺は、魔法を諦めません」
「そうしたら、ナユタ君が死ぬんだぞ!」
「俺は俺の持っている力が妖術ではないと思います。この文面、鎖で力を鎮めている、と書かれているんです。俺の見えた光景は、鎖が無数に見えただけです。だから、俺のは魔法だと思います」
「でも、他の本をあさっても鎖なんて文字はなかったんだぞ」
「シオンが言っていました。魔法は無数にあるって。無数の中の一つになってはダメですか?」
少し時間をおいて、
「わかった。私はナユタ君の意見を尊重する。ただ、死んだら承知しないからね」
学園長はホッとした様子だった。
「これでもう一つ、提案があるのだが」
「いいですよ、何ですか?」
「シオンさんが完全に回復するまで私が魔法を教えようと思ってだな」
「いいんですか⁈学園長、忙しいですよね」
「ただし、ナユタ君が学校に来てくれるならだ。たまには家まで行けるけど、ほとんど学校から出られないのよ」
「わかりました。学校へ行くので、よろしくお願いします」
「それじゃ、明日から特訓よ!来なかったら許さないから!」
わぁ、これはスパルタの予感がする…
「一つお願いしていい?」
「今度はお願いですか。何でもどうぞ」
学園長は言い出しづらそうにしている。少し時間をおいて、
「学園長って呼ぶのを、シオンさんみたいに名前で呼んでくれないかな」
「それだけですか?」
「それだけで十分よ」
「わかりました。それでは今度からプルガさんと呼ばせていただきますね」
プルガさんは「改めてよろしく」と言った上、「もうすぐ昼ね、シオンさんのところに行こうかしら」と言って図書室を出て行った。
俺もその後を追うように図書室を出た。
読んで下さりありがとうございます(`・ω・´)
よければ、ポイント評価や感想を書いていただけると嬉しいです(o^^o)
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m