39 居酒屋
帰り道、重たい空気の中、父が言った。
「何か美味しいものでも食べに行くか」
俺は、「うん」とも「いいえ」とも言えず、そのままたちについていくように居酒屋さんのようなところにはいっていった。
「なんでも食べていいぞ。好きなのを頼みな」
父がそういうので、がっつりとしたものを頼んだ。
「こりゃ、でかいな」
ステーキを頼んだのだが、とてつもなく大きかった。コスパは最強レベルだろう。
それはそうと、店に入ってから妙に視線を感じる。俺はその視線を怖く感じた。
「父さん、なんか、とても見られている気がする」
「そりゃ、あれだ。ナユタが駆けつけてまで心配している子が倒れているのを皆知ってんだ。「可愛そう」とかの同情はあるだろう」
すると、父がその場に立ち上がり、
「いつもの感じで構わない。息子も前を向こうとしてるんだ。同情などはやめてやってくれ。頼む、このとおりだ」
そう言いながら、父は頭を下げた。
一方、他の客は「そんなにしなくてもいいから、こっちこそ悪かった」と言っていた。
父が席に座る。
「父さん、ありがとう」
「これくらい、当たり前だよ」
と、笑ってくれた。
ところで、出てきたステーキは食べきれるかな…
*****
同じ居酒屋さん。それから時間が少し経って、冒険者らしき人たちが話しているのが聞こえた。
「最近は街に出るのが怖いよ」
「あぁ、あれか、日程不明の殺人予告。あんなのデマだって。お前、あんなのも信じるくらいビビリじゃねーだろ」
「でもよ、殺すと言っている数が尋常じゃないぜ。予告どうり殺したら、マジで今年は終わってるな」
どうやら、殺害予告とやらがあったそうだ。同じタイミングにいろいろなことが起こってるんだな。
そう考えてると、その話をしていた冒険者は話しかけてきた。
「少年、お前は家に居ろよ。お前みたいな未来に希望が溢れてる奴がもし殺されたら、俺らはだいぶ辛いんだぜ。まあ、少年の父さんはすげえ強いから安心だけどな」
そう言って、どこかへ行っていった。
冒険者って案外優しい人が多いのかな。もっとこう、「俺が一番!」みたいな人が多いと思ってた。
「そろそろ家に帰るか」
お代を払い、店を出ると、プルガ学園長がいた。
学園長はすごく息が上がっていた。
「どこいってたんだ。探したぞ」
大きく深呼吸をした学園長は俺に向かって
「シオンさんの意識が戻った」
そう告げた。
俺は、
「今すぐ行ってはダメですか」
と聞くと、
「シオンさんは、もう大丈夫そうだ。今は寝てる。明日の朝来てもらった方がいいだろう」
確かにもう外は暗くなっている。
俺は素直に「わかりました」と答えて、家に帰ったら。
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