33 書庫
その日、プルガは学園の図書館にいた。
「普段、図書館にいない学園長がなぜ図書館にいるんですか」
「いや、少しばかり気になったことがあってね」
学園長は笑顔でそう答えると、奥の部屋に1人、入っていった。
「[鎖]…どこかで見落としてるかもしれない。もう一度、一から探してみよう」
そして奥の部屋で1人、プルガは部屋の端から部屋の端までの本を読み返したが、鎖という文字はなかった、というと嘘になる。詳しく言うと、「魔法」について書かれている本にはなかった。
「これは…」
最後にプルガが手に取った本は「妖術」について書かれた本だった。
魔法と妖術はさほど変わりはない。が1つ、決定的な違いがある。
魔法は人間の意図が反映される。
だが、妖術は「人間が意図していなくても危害を加える力」という意味で使われる。
魔法という概念は一緒ということで、同じ書庫に入れたのだろう。
プルガは最後にその本を開いた。
その本の1番初めに恐ろしいことが書かれていた。
「妖術はこの世界で最も強い力である。魔法なんか比にならないほどである。無数の鎖で繋がれ、その力を鎮めている。鎖が解ける時、自我を忘れ、心身を滅ぼし、周りへ大きな影響を及ぼすだろう」
[鎖]。この本でしか見つけられなかったものだった。
そして、最後の文の「周りへ大きな影響を及ぼす」という文面で、この学校で1番の事件のことを思い出した。
三年前、ある生徒が起こした事件。自我を忘れ、心身を滅ぼしていき、周りの人々を殺していったあの事件を。
プルガは静かに本を閉じ、この真実をナユタに伝えるかどうかを悩んだ。
プルガは新しい彼自身の魔法であることを望んだ。でも、そうでなく、そのまま練習を続けていくと、彼自身、死ぬことになる。それはどこであろうと、他の誰かが死ぬことはほぼ間違い無いだろう。
「私はどうすることが1番正しいのか…私に優れた判断はできるのか…」
練習をやめさせるのが1番の練習をやめさせるのが1番の判断と思っていた。でも、ここで辞めさせたら、ナユタは…という、複雑な気持ちだった。
プルガは書庫の奥。
1つの本の前で1人、自分の不甲斐なさに泣いていた。
読んで下さりありがとうございます(`・ω・´)
よければ、ポイント評価や感想を書いていただけると嬉しいです(o^^o)
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m