31 信頼
「目が覚めましたか」
俺が起きるとあたりは赤くなっていた。
「ここは…」
「外、ですね。ナユタ君、また倒れたらと知ったら、お母さんたちとても心配するでしょうし」
俺は、シオンさんの膝に頭を乗っけて寝ている体勢だった。俗に言う、膝枕というやつだ。俺は照れくさくなってすぐに体を起こす。
「ナユタ君もそんな反応するんだ。私、初めて見たかも。ナユタ君が見せる、ちょっとスキがある行動。ナユタ君、ずっと何かに警戒してるようだったから」
シオンさんはいたずらっぽくヘヘヘっと笑う。
「昨日の今日だったから、そりゃあ疲れもあるよ。ごめんね、辛いってすぐ気づかなくて」
俺は、「いえ、家に帰さなかったお気遣いありがとうございます」と言ったら、シオンさんは、「いつものナユタ君に戻った〜」と言って、楽しそうだった。
「それで魔法のことなんだけど、ナユタ君がダメじゃなかったらまた教えに来てもいいかな?」
ここまでしてくれたんだ。俺は断る理由もなく、「はい、こちらこそお願いします」と答えた。
*****
「今日はもう暗いからこれで、家に帰って安静にしておくのよ」
そう言って、シオンさんは帰っていった。
ところで、次はいつ教えに来るのか…聞くのを忘れていた。
少し離れたところで母の声が聞こえる。
「ナユタ、そろそろ帰って来なさいよ」
俺はそれからすぐ家に帰った。
*****
次の日、父は「仕事がある」と外に出ると、2秒で家に帰ってきた。
「そ、そそとに、外におおお、女の子が、、、」
いくらなんでもビビりすぎだろ…
俺はそう思い、外へ出た。そこには、髪の長い女の子が横たわっていた。
「わぁぁぁ!って、シオンさんじゃないですか。何してるんです?」
地面に横たわっている女の子、シオンさんがいた。
「いやぁ、昨日のナユタ君の反応が可愛かったから、これからナユタ君のいろんな反応を見たいなって。今日の「わぁぁぁ!」も可愛かったですよ」
シオンさんは満足そうだった。
後ろでまだビビってる父をどうにかしてほしい。本当に冒険者やってる?
「今日は私、午後に試合があるから、午前は一緒に練習しようって思って来たの?迷惑だった?」
俺は「そんなことありませんよ。ありがとうございます」といって、すぐに練習の準備を整えた。
シオンさんは「ちゃんと休みましたか」と、体調のことをよく聞いてくる。学園長が言っていた「面倒見がいい」というのは嘘ではなさそうだ。
「おそらくシオン君、今、学校に来るのはちょっと難しいようですから、試合の中継のモニターを渡しておきますね。これでちょっとでもナユタ君の勉強に力を貸せるなら…」
とてもありがたいことだった。
こうして俺は、両親のほかにちゃんと信頼を持てる人が、1人できたのだった。
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