144 昇格試験 〔 Ⅸ 〕
「どういうことですか…?」
「どういう事ってそれだけの期間、洞窟に居ただけだ。それ以上でもそれ以下でもないさ」
「そんな期間洞窟に居たら、食料持ちませんよ?」
「そんなん言われても、それだけの期間こっちには居なかったんだ。街の人らも心配していたぞ?」
ナユタたちはそれでもまだピンときていない様子だった。
「そんな悩んでいても何も始まらないさ。洞窟では何かあったか?」
「崩落に巻き込まれたんです。未開拓領域に居ました」
ギルドマスターはそれを聞いて驚く。
「どうやって出た?」
ナユタたちは渋っていた。
この試験のルールの中で、洞窟を比較的壊してはいけないとあったからだ。
「何?言えない理由なのか?」
ちょっと雰囲気が悪くなる。
「壁をぶっ壊して道を作り、元の道に戻りました」
「そうか。仕方ないもんな。未開拓領域はどんな感じだったか?」
特例で、怒られることはなかった。
「広いところがあって、そこから分かれている道は3つで、そのどれもがその広い場所につながっていたんです。言葉で説明するのが難しいですね…」
「おかしいな…どこにも繋がってなかったって事だろ?」
「そうですね…あと、子供がいたんですけど、連れてきたはずなんですが…」
「子供か…その子供とは何かあったか?」
「そうですね…道を教えてくれる代わりに自分を外に出して欲しいと言われ、ついて行ったんですが、行く先に竜が住み着いており、竜と戦うことになりました…」
「また竜と⁈ナユタ君はつくづく縁があるらしいな…」
「今回はみんなが頑張ってくれました。俺はほとんど何もしてません」
「まあ、これでなぜ長い間洞窟内にいたのに記憶がないのかが分かったよ」
ギルドマスターはゆっくりと話し出す。
「それは、ここに戻れたことが奇跡だな。ナユタらは植物人間と思われるやつに会っているな」
「植物人間…」
聞いたことがないものだった。
「これは聞いたことがなかったか?まあ、聞く事も少ないだろうさ。まず、こいつに会ったら生きて帰れないとも言われている。自分たち人間との関与をあまり持たない。その為、人間と会ったら殺そうとするのさ。そして、「60日の幻想」と言われるものを見させる。簡単に言うと、昏睡状態になるものだ。これから起きる事も珍しい事なのだが…まぁ、こんな事ほとんど怒らないから、伝説とも言われていたが。そんな伝説を連れて帰ろうなんて、ナユタ君も鬼畜だな…」
「そんなつもりではなかったんですが…」
こんな話を交えて、やっと現実味を帯びてきたような感じがする。
「また明日、ここに来る。帰り支度だけはちゃんとしておいてくれ」
そう言って、ギルドマスターは宿舎を出て行った。
「今日はしっかりと眠れそうね…」
その日は今までにないくらいの熟睡が出来た。
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