出涸らしの部屋
痩せた髪の毛をして
あなたは白く白くなっている
会わなかった日々は十年
変わるには簡単な長さ
愕然とする僕を見て
君は変わらず
笑い返した
部屋の中は整っている
不必要な物が無いと
言った方が良いのかもしれない
君は細くなった手で
温かい飲み物を用意した
何も無い
白い 白い部屋
湯気が立ち上る
ここは
出涸らしの部屋
あれからどうなったか
僕は話をした
あいつは
こうなって
あの人は
ああなった
君は笑いながら
話を聞いては
一つ一つに
言葉を繋げた
「良いなぁ」って
言葉を繋げた
君の中は整っている
必要な物が無いと
言った方が良いのかもしれない
君は自分の事を語らないで
合間に飲み物を飲んだ
何も無い
白い 白い部屋
時間が消えている
ここは
出涸らしの部屋
周りの話を聞いて
君の状態は分かっている
だけど
君から話を聞くまで
僕は信じられなかった
何処を歩いたら
あの君がこうなるんだよ
言いたかったけど
何回も
飲み物と一緒に
身体の中へ封じ込めた
真っ直ぐ聞けば
曲がってしまうから
君に話す番を回した
殊更
君は当たり障り無い事を
話していく
唯一
残った物を
大切に触れるように
君は話していく
ゆっくり溶かさざるを得ない
氷山を前に
僕は無力だと思う
一番仲が良かったなんて
既に過去形で
現状は又聞き
連絡は取っていたけれど
「元気でやっている」を
信じていた
そんな
自分の事に
手一杯の人間だった
君の中は
ここには無い
ここには居ない
望む為の物が無くなったと
言った方が良いのかもしれない
君は時々
白い壁を向いて話をしている
そこには僕は居ない
そこには僕は居ないよ
何も無い
白い 白い部屋
人だった物が居る
ここは
出涸らしの部屋