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何でも屋を始めるそうです。


「ほら、どうだユート!!ここが私たちの新しい拠点だ!!」


「うん……」


ユートを前で抱きかかえながら、レティがドヤ顔を浮かべている。

城内の隠し部屋にあった巨大な魔法陣の上に立つと、なんと自身の体が全く異なる場所へと移動したのだ。

緊急避難用とは言っていたが、立て続けの正真正銘の魔法にユートは嬉しさ半分胃痛半分である。


「一応さ、防御の魔法使ってみたんだけどあれで良かったの?」


「うむ!ユートの魔法はどれも素晴らしいな!あの防御魔法が効力を失うまで、およそ百年近くはかかるだろう」


「……自分でやったことが信じられないんだよなぁ……」


城を放置して火を放たれたりしたらひとたまりもない。そのため、レティに城を覆う防御結界の魔法を教えてもらったのだが……。

チラリ、とユートは自分の視界の左下にあるログを見る。


天恵「鋭キ刃」発動。

天恵「精霊王ノ加護」発動。

天恵「詠唱破棄」発動。

魔術「イージス」を使用しました。対象領域に防御結界を展開します。

天恵「鋭キ刃」により、魔術「イージス」が魔術「アブソリュート」に変性しました。

魔術「アブソリュート」を使用しました。対象領域に防御結界を展開します。

効果時間:525―――


その後、やたらと長い効果時間が書かれていたが、長すぎて途中で切れてしまっている。

ログにある魔法の名前に視線を合わせていると、にゅっ、と半透明の板が出現した。


イージス

魔術:防御・強化

消費魔力:800

属性:水・光

指定領域に、対抗:「近接」「魔術」を持つ結界を展開する。

対抗:指定された攻撃に耐性を持つ。

持続時間は術者のINTと技能:「魔術」熟練度に比例する。

突破:ランク6以上の「近接」「魔術」


アブソリュート

魔術:防御・強化

消費魔力:1800

属性:水・光・闇

指定領域に、対抗:「近接」「魔術」「特殊」を持つ結界を展開する。

対抗:指定された攻撃に耐性を持つ。

持続時間は術者のINTと技能:「魔術」熟練度に比例する。

突破:ランク9以上の「近接」「魔術」「特殊」



(どういう意味かは具体的には分かってないけど、ヤバそうなことだけ分かるのはなんでだろうね……)


半透明の板に記述されている魔法の効果に、ユートの顔がひくついた。

ランク、というのは攻撃の強さのことだろうか。要するに、めちゃくちゃ強い攻撃でなきゃ破壊できないよ、ということか。

視線を上に移動させると、ログが前に遡った。そこに表示されている情報を詳細化させる。



魔術「ファイアーボール」を使用しました。対象を選択して下さい。

天恵「鋭キ刃」により、魔術「ファイアーボール」が魔術「フレア・レイン」に変性しました。

魔術「フレア・レイン」を使用しました。対象領域を選択して下さい。


ファイアーボール

魔術:攻撃・延焼

消費魔力:5

属性:火

ダメージ:INT×105%

指定対象に、炎熱・延焼を付与する火球を放つ。

炎熱:属性「火」を持つ魔術効果を1.1倍。持続時間30秒。

延焼:10秒毎にダメージINT×10%。持続時間30秒。


フレア・レイン

魔術:攻撃・延焼

消費魔力:12

属性:火

ダメージ:INT×105%

指定領域内の敵対者に、炎熱・延焼を付与する火炎の雨を降らせる。

炎熱:属性「火」を持つ魔術効果を1.1倍。持続時間30秒。

延焼:10秒毎にダメージINT×10%。持続時間30秒。



「効果が単体から複数に変わってるってことは……」


つまり、「鋭キ刃」という天恵は、使用した魔法の効果を一つ上の魔法に変化させているということだ。

おおーと感心するユートに、なぜだかレティは不満顔だ。


「ユート、ユート。今は私が話をしているのだぞ。そんなものを見ていないで、これから始まる何でも屋の生活を楽しもうではないか」


「あのさ、本当に謎なんだけど、どうして何でも屋?魔王なんだし世界征服とかしないの?」


「何を言っているのだユート!」


「え、な、なに?」


「私がそんなカリスマ性を持っていると思うのか!?」


「……そうだね、なんかごめんね」


行き当たりばったりで何でも屋とか、人間の兵士に追い詰められている時点で、世界征服も何もあったものではないか。

素直に謝ったユートに、レティはいい子いい子と頭を撫でた後近くにあった古びた椅子に座った。膝にユートを乗せて。


「この際何でも屋でも、なんでも良いけどさ、流石にこんな埃の積もった小屋じゃ無理じゃない?」


すでに膝の上に乗せられることに慣れてしまった自分に頭を抱えそうになったユートだが、今現在の問題を優先的に解決すべく、レティにそれを切り出した。

転移先は、今にも崩れそうなぼろぼろな小屋の中。蜘蛛の巣やら、積もりに積もった埃やらで明らかに通常の生活基準を下回っている。


「そうだなぁ、まずは掃除からだな」


「……箒とかないよね」


「あると思うのか?」


「ですよね……」


うーん、とユートが唸る。この世界の技術がどの程度まで進んでいるのかは分からないが、掃除機なんてものを期待するだけ無駄だ。


「魔法でどうにかなったり……しないか」


小さくため息を吐いて、半透明の板を出現させる。表示される天恵欄を見て、まだ確認していない天恵があることに気付く。

ユートはそこに指を置いた。



観察眼

アクティブ:特殊

Lv1(この天恵にレベルはありません)

全てを識る眼力で、相手の状態を見極める。対象の「称号」「種族」「天恵」の詳細を知ることができる。

(自身より強い者、特定の天恵を持つ者には使用できない)



第六感

アクティブ:特殊

Lv1000

シックスセンス。並外れた直感力により周囲の状況を理解、最適な行動を見出す。

索敵範囲は天恵Lvに依存する。

-この天恵はマスターしています-



徒手空拳

パッシブ:近接

Lv1000

素手で相手を封殺する。武器未所持の時、技能:「近接」に補正を得る。

補正率は天恵Lvに依存する。

-この天恵はマスターしています-



魔陣ノ操者

アクティブ:魔術・禁術

Lv1(この天恵にレベルはありません)

禁術:「元素の支配者(エレメントマスター)

魔術王によって見出されし魔導の秘奥。魔術詠唱制限を最大三つまで取り払う。

(属性「禁術」を持つ天恵に、他天恵の補正を重ねることはできない)



魔法創造

アクティブ:魔術・固有

Lv1(この天恵にレベルはありません)

固有:「元素の支配者(エレメントマスター)

魔術起源の操作。魔術組成法則に介入する。世界に存在しない魔術を創り出す。

成功率は、自身のMP、INTに依存する。

(複数属性、相反属性を内包する魔術を創造する場合、成功率が大きく下がる)



唯識者

パッシブ:???

Lv???

この天恵の詳細を表示することはできません。



「……」


「―――ユート!私の話を聞いているのか!?」


「え?ああ、ごめん……なんだっけ?」


あまりの情報量と、天恵という力の詳細を見て絶句していたユートを覗き込むように、レティがぷんぷんと怒っていた。

やっと反応してくれたユートに、にんまりと笑う。


「さっきから言っているだろう!掃除は私に任せて、お前は人間の街に行って杖を買ってこい!」


「え?そ、掃除レティがするの?僕も何か手伝うけど」


「そうは言っても、魔法の触媒がなければ何かと面倒だろう?ほら、ユート、手を出せ」


おずおずとユートが手を差し出すと、レティはその手のひらに輝く小さな石を置いた。

深青に光り輝く石に、ユートが目を丸くした。


「今の時代の通貨は持っていないからな、それを換金してお金にしてくるといい」


―――何カラットのサファイアなんだこれ……。


小さい石、とは言っても、カラット数で言えば相当なものだ。心配そうにレティを覗き込むと、レティはまたユートの頭を撫でた。


「なに、気にするな。配下(かぞく)が困っているところなど見たくはない。それに、強くなっていくユートを見るのは私も嬉しい」


ニコニコと笑うレティに、ユートは思わず赤面する。

……恥ずかしげもなく、凄いことを言うなぁ、この魔王。


「む、それでも人間の街に着くまで三十分程かかるな。ここから東にいけば人間の街に着く。周囲は森林だから、気をつけて行ってくるのだぞ。魔物が出たらファイアーボール、いいか、よく覚えておくのだ。魔物が出たらファイアーボール。ほら、繰り返せ」


「なにその物騒な教訓」


不審者が出たら、の言い回しを思い出して、ちょっと魔物可哀想とか思ってしまった。

仕方なく、魔物が出たらファイアーボール、と力なく繰り返すと、レティがうむ、と頷いた。


「やっぱりこの世界、魔物とかもいるんだ……」


レティから離れて、ギスギスの扉を開ける。外には背の高い針葉樹が生い茂っており、気温も少し低い気がした。

どの向きが東なのかを確認しようとしたら、左下に第六感の天恵発動を知らせるログが現れた。

視界に映ったのは、半透明の赤い線。それが地面を這うように森の奥へと繋がっていた。

どうやら第六感の天恵は、自分が次に行う行動を補助してくれる天恵のようだ。


「便利だなぁ、僕の天恵……」


こんなに便利な天恵を持ってていいのだろうか、と不安になる。

草木の香りと独特な果実の香りに満たされる森林の中、ユートは東に向かって歩き出す。

後ろを振り向くと、腕組みをしたレティがこちらをじっと見つめていた。


「……なんなのこのはじめてのお使い的なノリ」


―――そこは深く考えてはいけないことなのだろうと、ユートは森林の出口を目指すことにした。


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