最奥から ===02===
最奥から ===02===
俺が三日後に旅行に出発するらしい『無間』と、岡崎が居るらしい『叙々焔螺』と、どっちがいいのだろうか?わからん。
もう一度ネットで検索してみた所、無間というのはかなり厳しい地獄だと言う記述が多く見受けられる。というか八大地獄のうち一番ヤバイ地獄らしい。そのほかに、八寒地獄という括りがある。その八寒地獄の名称は不明で、恐らく叙々焔螺というのはここにありそうだ。
おかしいな。ネット大先生曰く、無間地獄は熱い系らしいのだが、手紙には寒いとか、涼しいとかアイスパフェとか寧ろ寒い押しである。俺は熱いよりは寒い方が好きである。ああ、熱い所と言われて人が来ないから、涼しいと宣伝しているのか?いやいや、選べるならそもそも地獄とか行きたくない。どうせならトラックで異世界転生がいいわ。
「どうすっかな…」
何もしなくても俺は三日後には無間へ逝くらしいのだ。何とか回避する術を見出さなければ…。こういう時はネットで質問に限る。そもそも最近騒がれているなら何かあるかもしれないな。
俺はネットで『地獄』だの、『封筒』だの、『無料引換券』だのと、思いつく限りの単語を組み合わせて、ネットや某掲示板で検索してみた。『無間 写楽』なども併せてみたが、それらしい物が中々出てこない。が、某掲示板で『地獄からの招待状』というワードが引っかかったので該当の掲示板を読んでみた。
結論から言うと、手紙の詳細は見つからなかった。が、知人が手紙を受け取った、急性心不全を起こした人宛に何かが届けられた。という事が書かれていた。
試しに掲示板に手紙の事を投稿してみる事にする。
『その地獄からの手紙、俺の所にも来たぞ。『無間』という所からで、ニュースやスターの名前を書いてアイスパフェを――』
詳細を書いて投稿しようとボタンをクリックした。すると
『gリb比ぶvづえれれ宇hおうdべrじぇ』
などと文字化けした。
「hヴぇrへうfdsf」
「えbhrへvhれれr」
「うぇvgsづsdrrv」
「rヴぇgvsdsds」
「えvhvhsssx」
音量ミュートのPCのスピーカーから意味不明な音声が吐き出された。
『ガコン』
「っひぃ」
超ビビった。謎の文字化け、謎音声、そしてお届け物のコンボである。
視界には何もいない。ベランダの方を見ると、暗いだけで何もいない。
「hjsぎぃぎd」
と思ったら、街灯が明滅した。何かが横切った。ここ二階なんだけどな。
「ってめぇ!」
なんか理不尽に怒りが沸いた俺は、カッター片手にガラス窓をスライドさせてベランダに出る。…何もいない。
『ドンッ』
隣の人からのあつい壁パンを貰いました。こっちもいっぱいいっぱいなんですよ。部屋に戻る。また同じように封筒が投函されてたので、同じように中身を見る。
『 [警告]
無間の業務妨害行為を行おうとした方へこのお手紙をお送りしています。
当方のイメージダウンに繋がる行為は控えていただくようお願い申し上げます。再度、同様の行為をされた場合、強制的に身柄を抑えさせていただきます。』
っざっけんなよー。これがネットに詳細が書かれてない原因か。見事に八方塞がりになった。
どうしよう。券を使うと俺の無間出発が早まるだろうし、かと言ってこのままでもいかんよな。マジどうしよう…。
~~~~
どうにもならなかった。西郷に相談したんだが、奴に手紙は見えなかった。近所のお寺にも行ってみたが、霊験あらたかなお札を貰えただけである。因みにこれ一枚で5千円。くそ、某お寺の跡取りのTさん探すしかないぞ。
無間へ出発が明日の午後三時、という状況になってしまった。後5時間である。PC類、ゲーム類は西郷に預けた。俺にかかっている保険も確かめた。もう一軒お寺を巡ってお札をもう一枚追加した。
でもこのままじゃ負ける気がする。なんせ、今日は二時間毎に――
「dsbfjhbvうぃw」
「hjrヴぇjhべrb」
――と、聞こえてくる。視界の端、飛蚊症の様に、餓鬼が見える。ガキじゃない。餓鬼だ。
醜悪な顔、ぎょろっとした黒目だけの瞳、小さな角、骨と皮だけの小さな体に、腹部だけ膨らんでいる、灰色の体。視線を向けると隠れる。でも俺の周りに、ずっと、居る。
まだか、まだかと言っているに違いない。
くそ、くそっ! なんで俺がこんな目に! 俺が何をしたって言うんだ!
どうせ誤差だ。誰か気に入らない奴を道連れにしてやろうか、あの政治家でもいいな、中学でクラスのいじめっ子だったあいつでもいいかな。
「ハハッ やっとわかったわ」
こうやって最近の不審な事件は増えてたんだな。俺の人生でそこまで憎い奴は居なかった。からくりがわかると反骨心が沸いてくる。お前らの思い通りにはならないぞ。
もう一度、どうにかできないか考えてみる。でもあまりいい方法は浮かばない。とりあえず岡崎を無間へ移動させてみるか。俺は先日受け取った手紙の通りに、無間フルコースご招待券に岡崎の名前を書き込んだ。その瞬間に招待券は燃え上がった。
「djfじbr御焚き上げhbrへbr」
これ、途中で『御焚き上げ』って言ってるのな。
『ガコン』
投函する奴を見てやろうと扉を開けておいたら、案の定、餓鬼が投函していた様だ。こちらを一瞥して『ニィ』と醜悪な顔を浮かべて通り過ぎていった。
例の如く封筒があると思ったのだが、今回は二通あった。
片方はお馴染みの『無間 写楽』で、もう一通は『叙々焔螺 久遠』とあった。
無間からきた手紙には、ニュースキャスターにアイスパフェを送った時と同様の文言と共に無間フルコースご招待券×8枚が同封されていた。お迎えの日時の変更はなかった。もうすぐだからかね。
叙々焔螺からきた封筒を開けると、手紙が入っていた。例に倣って三つ折りの手紙を開く。ハラリと、何か紙片が一枚挟まっていた。
『 [通告]
この度の貴方の行為により、当方をご利用されていたお客様に多大な影響が確認されました。これにより、当方に損害が発生しました。つきましては、当方は貴方の身柄を抑える権利を有した事を通告いたします。
しかしながら、貴方の身柄の優先権を他社も主張しているために、その判断を上告する形になります。裁判は八万年後に行われますので、理路整然とした答弁が行えるよう準備をお願いいたします。つきましては、この手紙を読み、理解した旨を確認するために、同封した確認票に貴方の氏名を記入してください。記入と同時にこの手紙の内容を承服したものとみなします。』
「え?」
これって、ひょっとして?ひょっとして?おれ、たすかる?
急に汗ばんできた。焦らずに俺はボールペンを右手に持ち、左手で『確認票』とやらを抑える。空欄がある。ここだな。
「bせvrヴぇれ」
「dhbhrvへるえ!」
「rbgjれbjヴぇbrjvべ!」
うるさいぞ餓鬼ども。いま集中してるんだ。『遠藤 拓海』っと。
書き込んだ瞬間、『叙々焔螺』関係の書類は全て燃え上がった。
「ぎぃーーーーーーーーー」
俺の視界の端でこちらを伺っていた餓鬼が確かな肉声を出して――そのまま見えなくなった。
「…やったのか?」
やばい、思わず気が緩んでフラグを立ててしまった。
――『ガコン』
一応これで完結です。急ピッチで仕上げたので描写が薄っぺらいです。
全然怖くないかも? (;´・ω・)
そういう描写力全然ないんですよぉ!
こっそり色々と改良していくかもしれません
『夏のホラー2016』公式さんには登録表明してないので載ってないです
(;´・ω・)