家族につきまして
ここで、我が姉エリシアについて紹介させていただく。
まず見た目は、私の正反対だ。
つまり、配色や顔立ちは父親似で、髪質が母親似なのである。
サラサラストレートの白金の髪に、少し吊り目気味なアイスブルーの眼。
吊り目を少し気にしている様子を見たことがあるが、幼児の大きな目ではさほど特徴にはなっていない。
正直我が姉は物凄く可愛いと思う。
将来は絶対に美人になると確信している。
そしてあの金髪の神のように目に痛くないのである!
性格も父に似てか、この年にしてはしっかりしているし真面目である。
やや固いとも思わなくもないが、可愛いものが好きなのか私が持っているヌイグルミを見ている時がある。
これは、私がヌイグルミを持つ理由の一つとなっている。
昼寝する時は、幼いからか双子からか、一緒のベッドで寝るのだが、間にヌイグルミを置くと嬉しそうな顔をするから可愛い。
店内で走っていたガキとは大違いである。
しかもこの姉、所謂天才である。
何時の間にか魔法に興味を持ったのか、父親の書斎の魔術書を借りて勉強している。
今姉が読んでいる本はまさにそれである。
流石にまだ魔術に関しての大まかな概念、要は魔術の初歩に関してだが、本人なりに考えて読んでいることは知っている。
私も魔術に興味がないわけではないし、心惹かれるものはあるが、必要になるまで勉強はしたくない。
のんびりできる時はのんびりするのがモットーである。
どうせその内やらなきゃいけないことが出てくるのなら、やらなくて良い内はやらないでいたい。
この国の女性が当主になれるかは知らないが、姉だし実力もあるエリシアが継ぐならこの家は安泰だと思う。
良かったね、父よ。
ちなみに双子とだからとか言われても私は絶対継がん。
そんな如何にも面倒くさそうなもの断固お断りだ。
ところで、さんざん貴族について面倒くさいと言っているが、別に家族は嫌いではない。
姉に関しては言わずもがなだが、母の穏やかで優しい所や琴の腕前は尊敬してるし、父も部隊長で日々研鑽し努力している所は尊敬している。
自分が面倒くさがりでやる気がない為か、一生懸命な人は凄いと思うし尊敬する。
まあ、それで自分が行動にうつるわけではないんだけども。
つまりは、今の家族のことは好きだということだ。
あっさりとこの世界を受け入れられたのは、色々考えるのが面倒くさいというのが一つ。
それと地球での記憶がぼんやりとしたものになったからだろう。
これは、多分あの神達の仕業だろう。
知識はあるが、交友関係や家族、自分の名前は霞がかかったような状態になっている。
だからこそ、変に混乱せずに受け入れて対応できたのであろう。
じゃないと絶対、リリシアなんて呼ばれてもすぐに反応出来ない。
で、知識と言うか、記憶があるのは浄化の力のことを忘れさせないためだろうな。
…息するだけで良いって、そう内忘れそうだけど。
何やかんや考えているうちに、窓から見える空が赤から群青に変わってきている。
部屋の外の慌しい雰囲気もなりを潜めている。
見計らったように部屋の扉がノックされてメイドの声がする。
「エリシア様、リリシア様。お食事の準備が整いました」
「…分かりました」
「はーい」
エリシアが読んでいた本の頁を確認してから閉じて椅子から立つ。
私も虎もどきのヌイグルミを、他の人形やヌイグルミが入っている箱に入れ扉に向かう。
待っていたのは若いメイドで、名前は覚えていないが顔は見たことがある。
正直この家には人が多すぎて覚えられそうにもないが…
そのメイドの先導で、私は姉と食堂に向かった。