世界を飛び越えまして
「いいの?!じゃ、じゃあその世界について説明するね!」
金髪の顔が嬉しさからか物凄くにこにこキラキラしてる…
眩しくて目が潰れる…!
軽く光にやられた私を無視して金髪は説明を始める。
こいつ調子いいな…
「まず、世界の名前はセレスディア。大きな大陸が一つあって、東西南北にそれぞれ国がある。中央には協会があって、大体協会がある宗教はレイノア教っていうやつかな。東はエリシアって名前の、エルフとかドワーフとかの妖精族が多い緑豊かな国。西はウァーシスって名前の、人間が多い王政都市の流通の盛んな国。南はサーザリスって名前の、竜人とか獣人とかの亜人族の多い伝統芸能がある国。北はネモリアって名前の、魔族が多いお酒と温泉が名所の国。各国、種族はそれぞれに尊重し合い、それぞれに発展を目指している。とりあえずこんなところかな?」
「うん、覚えられない」
この空間内が奇妙な沈黙に包まれるけど私は悪くない。
口頭で、しかも初めて聞く地名やら国やらを一発で覚えられるか。
私の脳みそでは不可能だ。
「あー…お前は人間が多い西の国、ウァーシスに送るからそれは覚えておけ。王政で、大まかに王族、貴族、平民の位がある。他の国の名産品を流通させている商業が盛んな場所だ。」
「あー…なるほど?」
すかさず黒髪のフォローが入る。
黒髪さん流石ですわー。
王政の商売国ね、なるほど?
しかし貴族とかいるのかー…面倒くさそうだなー
黒髪と金髪が不安そうな目で見てくるが、生活してれば覚えてくるだろうから気にしないでくれ。
「うん、まあ納得してくれたんならいいけど…じゃあ送る前に浄化作用の力を渡しとくね」
金髪がそう言いながら差し出した手の上には。ラムネっぽい白い粒がありました。
…え、これ?
訝し気に見てたのが分かったのか、金髪が慌てて説明する。
「これは、浄化の力を濃縮して形を持たせた結果だからね!」
ああ、なるほど。ごめんね?
どうみてもラムネだったもので。
「これは飲み込んだらいいの?」
「そう。しかもエネルギー体だと浄化の力に周りが気づいて大変なことになる。けどこれなら周りは気づかないし、呼吸するだけで浄化が行われるんだよ!」
マジか、すげー。
ラムネとか言ってすみませんでした。
金髪がそこまでドヤ顔するのも納得の一品ですわ。
金髪の手からラムn…もとい浄化の力を受けとって飲み込む。
飲み込む時に清浄な空気とスッとする匂いがした。
これラムネじゃなくてフリスk、いや浄化の力でした。
「うん、浄化もしっかり働いてるみたいだね。これで向こうでも呼吸するだけで浄化ができるよ」
金髪のチェックも無事に済み、あとは転生されるだけらしいが…
「こちらの準備はできたぞ」
少し離れたところで何かしていた黒髪さんがこちらに戻ってきた。
黒髪さんが何かしていた方に目を向けると、そこには両開きの大きな扉が建っていた。
僅かに開いた隙間からは極彩色の光がもれていた。
え…あそこに入るの?
私の当惑は無視して、黒髪さんと金髪が扉の両隣に立って完全に扉を開く。
「それでは、僕達が管理する世界、セレスディア。朝と始まりの神を務めるレイディクト」
「俺達が管理する世界、セレスディア。夜と終わりの神を務めるノアヴァルド」
「「浄化の力を持つ魂を、この世界は、我らは歓迎しよう」」
金髪はにっこりと、黒髪さんはやんわりと笑みを浮かべながら、歓迎の言葉で私と言う存在を祝してくれる。
さて、それでは新しい世界でのんびり過ごすことにしますか。
そうして私は足を扉の中に踏み入れた。