勧誘に会いまして
今回は少し長いです
「さて、これで次の話に移れるね」
ご機嫌そうな金髪から言われた内容にまだ何かあるのかとため息がでそうになる。
ただでさえ、自分の死体を見るという、したくもない体験をした後だというのに。
元々イラついていた気持ちが大きくなっていく。
というか、走っていたガキ共は確実にトラウマになっただろうけど、殺されたのは私なんだからイラついても別にいいと思う。
「じゃあ、これが一番大切な話なんだけど…ジャジャーン!君は生きれます」
その言葉に今まで感じていたイラつきは全て驚きに変わってしまった。
いや、今しがた二十半ばまで生きてきた自分が死体になったのを見たんですが。
「え、私死んでますよね?あの体が生き返るんですか?」
そうすると、私ってゾンビの類に入るんじゃないだろうか…
「いや、それはないよ。もうあの体は死んだって世界に認識されちゃってるから」
ああ、やっぱりあの体は駄目なのか。
いや、じゃあそうするとつまりだ…
「あ、分かった?君には所謂転生というものが出来るんだ。体が死んだ魂がすぐに同じ世界に行くことは出来ないから異世界になるけどね」
金髪は漸く本題が済ませられたと晴れやかな笑顔である。
そのままその世界についての説明をしようとするが色々と待ってほしい。
「で、その世界なんだけどね、」
「いや、あの何で転生出来るんですか?今の言い方だと普通は出来ないみたいなんですが…何かそちらのミスでもあったんですか」
そう、まずこれである。
私の運は籤を引いたら欲しいものの三番目のものが出るとか、どっちでも良い時のじゃんけんに限って勝つとかそんなものである。
こんな特殊な案件に当選するとは思えない。
「いや、それはないよ!君の事故だって決められていた寿命だったし!本当に運が良かっただけだって!!」
ふむ、ラノベに有りがちなミスによる転生でもない。
じゃあ、それこそ本当に何でだよ!強調するのを含め十分に怪しいわ!
そして何よりなのは…
「いや、でも転生できるんだよ?何のリスクもないし、それから」
「あと、私別に転生したくないです」
「え」
今度は金髪が驚く番だった。
眼が見開かれて真ん丸である。
「え、何で?!もう一回生きれるんだよ?意識もちゃんと残すよ!」
「いや、面倒くさいので」
とうとう金髪が絶句した。
いや、子供には怒ってたし、自分の死体見たらもっとやりたいことあったのにとも思ったけども。
でもそれが一から人生やり直してまでやりたいかというとそこまでは…なのである。
「なので、このまま?死にますよ」
「でも、あの、えっと…」
何とか説得しようとしてきている金髪だが、正直おばさんにそんな気力がもうないことを理解してほしい。
「悪いが、転生はしてもらう。こちらにも事情があってな…」
今まで黙ってた黒髪の登場である。
ところで、事情って…
「はあ、事情…?」
「え、言っちゃうの?!それって余計に行ってくれなくなっちゃうんじゃ…」
「あー、事情だけなら取り敢えず聞きますけど…」
「え、いいの?!」
金髪と私でコントのような形になってしまったが黒髪に続きを促す。
「…俺とこいつが担当している世界の一つに、穢れに近いものが発生して環境に悪影響を与えている。本来世界が持つ浄化作用を上回って、だ。その原因はその世界に住む生物とは無関係で、直接手を出すと余計に悪影響が出るおまけ付きでだ。だから、その世界とは無関係なお前に浄化作用を付けた上で送り込みたい。このままだと世界の存続自体が危うくなるからだ」
「…それって私である必要は?」
「お前がその世界との親和性が高く浄化が作用しやすいからだ」
「無理やり送らないのは…?」
「一つに意志を尊重したいのと、任意で送った方が浄化作用が働きやすいからだ」
「何かしなきゃいけないことは…?」
「特にない」
「何か私に危険が及ぶことは…?」
「浄化することと浄化作用に関して害はない」
黙った私を黒髪とあと金髪が見つめてくる。
そんで私の決定と言うと…
「あー…まあそれなら受けてもいいですよ?」