説明されまして
何時まで経っても来ない痛みを訝しみ目を開く。
「は?」
さっきとは意味が違う、呆然とした声が出る。
何故ならさっきまでいたはずのスーパーとは違い、何もないだだっ広い白いだけの空間にいたからだ。
周りを見渡してみても窓や扉の類は見えず、本当にただの空間として存在している。
「えー…」
思わずと言った風に眉間に皺がよる。
痛みが来ず拍子抜けしたことと、突然場所が変わったことへの疑惑でだ。
そして、今更だが来ていたはずのスーパーの制服が、シンプルな白いTシャツとジーパンに変わっている。
これは私が制服を紛失したことになるのかと考えていたところ、カツリと靴が床を鳴らした音が耳に入る。
振り返るとそこには金髪と黒髪の二人組の青年がいた。
ぱっと見は二人とも自分とそんなに変わらない年齢に見える。
さっきまで誰もいないと思ったんだが…
「おや、お早う。目が覚めたみたいだね」
声をかけてきたのは金髪の青年で何やらにこにこと笑っている。
眼はまさに海の色と言えるような深い、けれど鮮やかな青色である。
首にかかるぐらいの金髪も艶があり、サラサラとして透き通るような蜂蜜色だ。
おまけに肌は白いし、僧侶のような服も縁や首元が金色で装飾されているとは言え、基本真っ白である。
お腹の辺りにはやはり金色の装飾を付けた緋色のベルトを巻いている。
さて、延々と特徴について述べたが何が言いたいのかというと…
こいつは目に眩しい色をしているということだ。
更にこの配色で見た目もキラッキラした美形である。
正直こいつを見ていたら目が潰れかねんと思う。
とは言え、声をかけられたからには一応応える。
例え相手を微塵も知らず、自分の中では不審者一歩手前の人物だとしてもだ。
「はあ、お早うございます。えーと、どちら様でここは何処ですか」
「僕は神で、ここは死後の裁決の前の部屋かな」
やはりにこにこと笑いながら言ってくるが、今私の中でこの人は頭のおかしな人に決定である。
はあ、と生返事しか返せない自分を見て、今まで黙っていた黒髪の青年がため息をついた。
「話についていけてないようだぞ…最初から説明した方が良い」
頭に手を当てて苦々しく告げる。
こちらの青年は癖っ毛だが艶のある黒髪で、腰ぐらいまである髪が首の辺りで白い紐によって結ばれている。
肌は同様に白いが、眼は森の奥のような深い緑色をしている。
服は自称神の金髪と形は同じだが、色が黒をベースに銀色の装飾がされている。
そして銀色の装飾がされている焦げ茶色のベルトがされている。
やっぱり見目麗しいが、こちらの青年は色的に落ち着いており、顔さえ合わさなければ目が潰れそうにはならない。
「そうだね、じゃあ君は死んで今ここにいる。確かめる?」
自称神の金髪は、聞きながらすでに半径50cm程の水鏡のようなものを出している。
聞く意味ねーじゃんとか、その鏡はどうやって出したとか、何で手のひらから浮いてて水が零れないのかとか考えていたが、それらもその鏡に写る映像を見て全部吹っ飛んでいった。
そこには確かに私がいて、だけど直前に見た商品棚の下で頭から血を流しており、店内が悲鳴や倒れる人で阿鼻叫喚となっていた。
間違いなく自分の頬が引き攣るのを感じる。
「納得してくれたかな?」
金髪はというと、相変わらずの笑顔で確認してくる。
ややドヤ顔に感じるのは私の内心のせいなのか、そうではないのか。
その後ろの方では黒髪が無言で頭を押さえている。
思わず黒髪を憐れんでしまったのは仕方のない事だと思う。