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1 異世界までは時間が掛かる

お久しぶりの方も初めましての方もよろしくお願いします。


 突然だが、澤利さわり雄馬ゆうまは今現在異世界に召喚されようとしている。

 そこは様々な色が混ざり合いぐにゃぐにゃとうごめいている空間。雄馬はそこを移動していた。いや、そこに雄馬の意思はない。ただ為す術がなく流されているだけだ。

 前を見ても後ろを見ても横も上下もどこも同じに見える。方向感覚は既に失われていた。同じ景色が続き、それがちゃんとした形を保ってないせいか距離感もつかめない。

 目的地はどこなのか自分はどこまで行こうとしているのかどれくらい移動したのかここはどこなのか。全てが不明だった。

 手足をバタバタさせようがそこには何の影響を与えられない。自分の意思が全く反映されない状況にやきもきするしかなかった。

 試しにつばを吐いてみたが、見事に顔に帰ってきた。そっちに動いてたのか……。最悪の気分だった。

 しばらく呆然としていた雄馬だったが、何もすることがないので考えることにする。


「なんでこうなったんだっけ……」


 雄馬はそう言い、数分前の記憶を掘り起こした。




 テスト終わり。

 定期テストという悪魔の期間が終わり、勉強という鎖から抜け出し自由になれる。

 そんな気分の学生たちに囲まれて雄馬もまた少しばかり浮かれていた。

 いつも通り特に問題もなくテストを終えたのもあるが、やはりテストが終わるというのは気分が良いものだ。

 これでテスト期間中は一応止めていた読書を再開できる。

 雄馬は読書が唯一と言ってもいい趣味なのだ。

 ライトノベルから文学、専門書からネット小説まで、とにかく読書をしていれば幸せだった。

 ホームルームも終わり、クラスから開放された学生たちが教室から吐き出されていく。その流れに乗って雄馬も帰路についた。

 雄馬はスマートフォンでネット小説を読みながらふらふらと道路を歩く。

 電柱にぶつかりそうになっては立ち止まり、信号を無視して横断歩道に突入しそうになっては慌てて戻る。

 そうしてノンビリと歩いていた時だった。

 突如として雄馬の足元が光りだしたのだ。


「うわっ、なんだこれ!?」


 そこは普通の道路。慌てて横へと逃れる雄馬だったが、光は足元を離れない。

 しばらく走って逃げたり飛び跳ねたりしていたが、ずっと付いてくる光に諦めて立ち止まる。


「なんだなんだ、何が起きているんだ!」


 突然の事態に驚きを隠せない雄馬だったが、そんなものはお構いなしに少しずつ光量が抑えられ、それが形作られていく。


「魔法陣……?」


 それは円形に広がり、中に六芒星と細かな文字らしきものが散りばめられた魔法陣だった。

 というよりもそれは魔法陣としか思えなかった。この世界に魔法があるなんて思ってなどいないがそれはマンガやアニメなどで目にする所謂魔法陣だったのだ。


「おいおいおい、嘘だろ。もしかしなくてもこれは魔法とでも言うの──」


 混乱の最中にある雄馬だが、その瞬間魔法陣は爆発したかのように激しく光り雄馬を飲み込んだのだった。


 その後その道路には何の痕跡もなかった。突然現れた魔法陣の痕跡も無ければ、雄馬がそこにいたという痕跡も何も残ってはいなかった。




「召喚……だよな、これ。どう考えても異世界に召喚されてるだろ」


 つい直前まで読んでいたネット小説でもよくあった異世界に召喚されるというもの。

 まさかそれに自分が巻き込まれるとは思ってもいなかった雄馬は混乱しちゃんと現状を把握しきれてなかったが、少しずつ冷静さを取り戻していった。

 それと同時に、この強引な召喚に対する怒りと召喚というロマンに対する喜びが生まれる。

 世の召喚される主人公たちはこんな理不尽な拉致のされかたをしていたのか。それよりもこの召喚時間の長さは何なんだ。普通は気づいたら異世界だったみたいな感じじゃないのか。と怒りがわく反面で、召喚という非日常にロマンをそして夢を感じずにはいられなかった。

 元よりネット小説なども読み、こういった異世界に召喚されてみたいとか想像したことがある身。ウキウキするのは止められなかった。諦めがよくポジティブな雄馬はそれほど思い悩むこともなく、プラスに考えが至るのだった。


「召喚と言えば、やっぱり勇者として魔王を倒してくれとかかな。可愛い姫様が俺を召喚して私の力になって下さいとか言ってくれるのかな! もしくは美人な召喚師でもいいな。もしかしたら変化球でエロサキュバスに召喚されて私の魔王さまになってくださいとか──」


 謎の空間で移動しながら腕を組み考えているうちに興奮してきた雄馬。

 絵面は奇妙だったが、雄馬からしたら既に可愛い女の子と仲良くなってあわよくばという気になっている。


「そうなるとやっぱり、最初が肝心だよな。ん〜、迷ったりせず即答。これが男らしくていいかな」


 そう呟くと、はい! とか、もちろんです! とか、無論! とか色々と試してどうするか吟味する。

 しばらくそうしていると周りの様子に変化が現れる。

 ぐにゃぐにゃしていた景色が段々と安定してくる。


「いよいよか……?」


 その様子を呆然と眺めることしか出来ない雄馬だったが、心のなかでは既に召喚主の姫様にかっこ良く決めるビジョンができていた。

 様々な色が混ざり合ってたそこは、色が集結していきそこに世界が現れる。


 雄馬は気づけば地面に立っていた。その地面には向こうで攫われた時と同じような魔法陣が薄く光り現れていた。

 その小さな部屋らしきところは何かの乗り物なのかガタガタと揺れている。

 ふと視線を上げると、そには天使がいた。

 白──それがその少女の印象だ。

 真っ白な髪の毛に真っ白な肌。そしてその身は白いワンピースに覆われている。

 年は12か13くらいという感じで、少し俯き目を閉じていた。


「ぁ……」


 小さく声が漏れる。それほどまでに美しい少女だった。

 ただただそこに存在しているのにどこか別世界のような、ただ1人だけ違う世界の住人の様な気すらする。

 それほどその容姿は完璧に整っていた。

 雄馬はその少女がゆっくりと瞳を開けるのを呆然と眺めていることしか出来なかった。

 その瞼から現れた瞳は見事な紅。

 真っ白の中に2つの紅眼が浮き上がってるようだった。

 普通ならその紅の鮮やかさにエグさすら覚え、恐怖を感じてもあおかしくなかったのだが、その瞳はどこか優しげに感じるのだった。

 緩慢とした動きで顔を上げた少女は、静かに口を開いた。


(query)──あなたがわたしのマスターですか?」

「はい、もちろんです!」


 その声は鈴の音のように綺麗に響いた。

 雄馬は事前に考えていた通り迷いなく答えた。その問いが少し予想と異なってた事は僅かの間気付かなかった。




「……えっ?」


はい、という訳でプロットなしの見切り発進ですのでどうなるかは保証できませんが、これからもよければ覗いてやって下さい。

不定期更新なんであしからず。

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