心配性の古壱菜緒
私・古壱菜緒は佇んでいます。
…いいえ、誰だって佇むことはありますよね。大切なのは理由です。佇んでる理由!
私はつい先程まで、通っている高校の教室でぐっすりと眠っていました。放課後までぐっすりで、友達数人に叩き起こされるまで全く目覚めませんでした。
それから教室を見渡して、やっと気づいたのでした。
昨日転校してきた、都宮司くんの姿が見えないのです。
村の案内をすることで、やや強引に仲良くなれた都宮くん。
彼は執拗に、あの雑木林の事を私に尋ねました。なんと彼、例の幽霊少女の気配を感じ取ってしまったのです。……あ、ダジャレじゃないです!例と霊をかけたりなんて、してないです!
…コホン。話を戻しましょう。
都宮くんはどうやら、あの雑木林の幽霊少女が気になっているご様子でした。引越してきたばかりの都宮くんに、私は必死で危険だということを伝えました。
しかし彼は、一向に納得してくれませんでした。ヘタレそうな顔して、都宮くんてば肝が据わっています。
勿論、寮に戻る際にも忠告はしました!絶対に、行かない方がいいって。
それでもやっぱり、曖昧な返事しか返ってきませんでしたけど…。
だからこそ、私は心配しました。
まさか、あの雑木林に行ったのではないかと。
友達に急いで帰るという旨を伝えて、私は走って雑木林へ向かいました。
そして丁度、見てしまったのです。
都宮くんの後ろ姿を見つけたと思ったら、彼、やっぱり入って行ってしまったのです。
どこにって?…雑木林に決まってるじゃないですかぁ!
私は大声で都宮くんの名前を叫びました。しかし届かなかったのか、都宮くんはどんどん先へと進んで行ってしまいました。
そして今私は、佇んでいるわけです。その雑木林の前に。
ええっと…どうすればいいんでしょう、これ。今から入っても、絶対に追いつけません。すごい勢いだったし。道も悪いし。
誰か呼びに行くべきなんでしょうか。だけど、大人だって入りたがらないんですよ?ここ。呼んだってきっと無駄です。
うんうん唸って頭を抱えます。
暖かな初夏の太陽の下。
一匹の白猫が、ニャーと鳴いて雑木林の中へと消えました。
一方私はフラフラと、元来た道を戻って行きました。