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新科学怪機≪ギルソード≫   作者: Tassy
3.〈新都市マリューレイズ〉と武装組織の逆襲 編
80/103

第33章 戦乱の予兆(1)

登場人物紹介《追加分》


・レーシェル=コンシェルジュ(26歳)


 〈新都市マリューレイズ〉の国防軍、〈戴冠の女王軍(マリールイーズ)〉の上層部員、階級は少佐。


〈《ギルソード》開発研究所〉のエヴァンズ所長とは同等の位だが、互いの関係は相容れなく、


 〈グランヅェスト学園〉の生徒は、孤児上がりで教養、道徳性が低いと、基本あまり良く思ってはいない。





「終わりだ……! フランツ=ロエスレル……!!」



「あァ………! ヒィ……!」




 怯えるロエスレルを徹底的に叩こうと、ユウキの瞳は冷酷に、冷徹に、見る者に恐怖させる殺気の眼差しで、刃をゆらゆら上下させ近づいていく。




(……まさか、こんなガキに不覚を取って、俺の人生を締め括るとは……!

 

 コイツはやられたぜ……! まァ……罰は覚悟だ! 今までそれだけ殺してきたからなァ……!


 逆の立場になろうが……文句はあるめぇ……!)




 己の身体すら動かせず、反撃の手立ては無い。



 覚悟を決めたロエスレルは、無抵抗のまま、少年ユウキの振り翳す刃を、その身に受けようとした。



 刹那___




【__ガシャアァ!!】



 振り翳した《高速射撃の剣(ダーツ・ブレード)》が手から滑り落ち、ユウキの身体は崩れるように倒れ込む__

 


 何が起きたのか、ユウキは絶句した。


 意識は鮮明なまま、意思と相反した現象に、たぜ倒れたのかも理解できず、そして呟いた__




「……身体が……動か……ねぇ……苦……し……」




 ユウキの身体は、震えていた__



 酷い痙攣に、虚ろな目は焦点が合わず、虚空をあちこち見つめ、血と涎の混じった液体が、口からだらだらと溢れ出ていく。


 何がその身体を蝕んでいるのか__



 咄嗟に(命拾いをした__)と安堵したロエスレルは、彼の状態を見るなり、即座に推察ができた。




「フッ! いや、道理で化け物じみた体力と精神力だとは思ってたが……!



 知ってるぜ。その薬、『Hexe(へクセ)』だろ?


 痛覚を殺して神経を暴走させる、戦場の麻薬__


 

 

 ガキの頃から、少年兵として戦場を駆けていた俺は、この薬を飲んだ奴、そして死んだ奴は嫌になる程見てきた……!


 まさか、あの毒物がこの国に出回っていて……! お前がそれを飲んでいたとはな……!?


 こりゃ本当に恐れ入ったよ……!」




 低く小さな声で、ロエスレルはクスリと笑みをを浮かべたが、ユウキを見下す意味合いではない。



 ロエスレルは知っていた__



 知識の問題だけでなく、人命を弄ぶ危険薬品が出回った背景、実態、陰謀や裏事情さえも__



 実際に、戦場の麻薬『Hexe(へクセ)』、惨殺の毒薬『ジル・ド・レェ』は、彼が少年兵の頃に大人達から所持・使用までを強要され、そして悲惨な死を遂げた者達を大量に見せられている。



 ロエスレルは過去の実体験と共に、その脳に焼き付けてきたのだ。



 __だからこそ、自ら危険薬品を服用し、身体を蝕ませて戦い続けた挙句、倒れ苦しむユウキを前に、ロエスレルは思った。

 

 


 (コイツの覚悟と無謀さ……! 俺は知ってる……!


 戦場で惨殺された隊長や同僚達がそうだ。連中は良い奴だった……!


 自分の命よりも味方を助ける奴だった。だから死んだんだ! 良い奴でいればいる程、戦場じゃあ苦痛を伴って死んでいく……!


 だから、俺は反面教師にして生き延びた! 良い奴の逆をやった……! その方が強いからな!


 だが、いつかの連中と同じコイツを前に俺は……妙な気分だぜ……!)

 

 

 ロエスレルの思考に、止めを刺すという発想が消えていた。怪我と出血で体力も限界だが、彼の心中に迷いが生じていた。




「……ガハッ……! ゲボォ……! ぅ……」



 __血と吐瀉物を口から溢しながら、ユウキは痙攣して藻掻いていた。


 その体温も、急激に低下していることだろう。



 その姿を見るに耐えなかったか、ロエスレルは、自らの判断を示し、姿を消そうと身体を動かす__




「コイツは敵わねぇな……! 今回は俺の負けだ。負けを認めてやるよ……!


 だが! 勝ちを譲る見返りに、俺は生き延びてこの場を脱出させてもらうぜ!


 どうせ、異変を感じた援軍が駆けつけるだろ? 救助されるまで、頑張って生きるんだなァ!


 __次は殺してやる。俺1人じゃ勝てねぇな! 複数の幹部に応援を要請するか!


 我が〈組織〉の威信をかけて、お前の首を狩るから覚悟しておけよ!?


 ユウキ=アラストル__!!」



 ロエスレルはそう言い残すと、倒れたユウキを放置し、血に汚れた身体を引きずって〈女神像の泉〉から立ち去った。




「……ぅ……がぁ……ァ……」




 立ち上がる気力すら失われたユウキは、床に伏せたまま、呆然と苦しみ呻く事しかできなかった__




◇◇◇◇◇




 場所は変わり、ここは国土不明の地__


 とある瓦礫と溢れた廃都市、その半壊したビルの屋内にて__

 



「ねぇロエスレルの奴、失敗したみたいよ♪


 あの後、ユウキ=アラストルに惨敗した挙句、まだ潜入していたうちの部下の手助けで、辛うじて地下迷宮から脱出したんだってさ〜?

 

 ククッ♪ あんだけ堂々と必勝宣言掲げてあの(ざま)って、恥ずかくて死ねるっつーの♪」


 


 日の光が差さない薄暗い部屋の中で、武装革命組織《革新の激戦地(ヴェオグラード)》の幹部、少女グレーネス=ディズレーリは、陽気な表情で笑いながら言った。



 組織内の不仲な同僚がしくじった際に、その不幸を蜜の味として楽しんでいるかのように__




「そうロエスレル君を貶す事はないだろう? 彼は良い功績を出した方じゃないか。


 新型の《ギルソード》を奪取して軍を追い込み、ユウキ=アラストルとリリーナ=フェルメールを窮地へ追いやったんだ__


 あの孤軍奮闘の中、よくあそこまで踏み込めたものだ。多少の事は目を瞑って称賛を送るのが、大人の常識ってものだろう?


 ディズレーリのお嬢さん__?」




 彼女の背後から、物腰の穏やかそうな男性の声が囁くように聞こえる。



 それに対し、自分が文句を言われた捉えたディズレーリは、ムッとした顔を浮かべて、その者に嫌味を言い返す。




「へぇ〜? 随分と他人事の物言いねぇ__!


 今回の不測の事態って、アンタにも半分責任ってのが、あるんじゃないの!?


 __ねぇ?  


 そもそも、アンタがあのユウキとリリーナのガキ2人を面白半分で実験して放り捨てなければ……


 今頃あんな厄介者、生まれなかったわよ__!


 ()()()()()、『Dr.(ドクター)グナイスト』__?」




 皺を寄せ、嘲け笑うような悪顔を見せて、ディズレーリは、その声がする真後ろを振り向いた__


 その視線の先には、ある1人の男が、デスクの机上を多い囲む『三次元ディスプレイ』に釘付けになりながら、手元に置かれた旧時代の『キーボード』を叩くのを忘れ、呆然とする姿が薄っすらと伺える。



 部屋の照明が薄暗くて良く見えないが、微かな光の反射が写し出した、男の灰色の髪と度の強い眼鏡が、特徴ある像をよく表している__


 どういう理由か、騒音の鳴る古い機械は見当たらないのに、彼の周囲からか、いや、その『体内』からなのか__



 ガガッピーピピッ……と、微かな機器の制御音が、その周囲で不快に響く。




 『Dr.(ドクター)グナイスト』__



 彼女からそう呼ばれたその男は、右手で眼鏡をくいっと上げながら、静かに口を開いた。




「面白半分とは言ってくれるねぇ。研究開発に携わる者として心外な言い方だぞ。ディズレーリ?


 そうだね、今になって思えば__


 僕は、人の親が務まる人格ではなかった。実験動物(モルモット)を育てるのに適した人間だったのさ。


 僕なりに愛情は注いでやったつもりだよ。


 でなければ、放浪児だったユウキを拾って面倒なんて見なかったし、居候先の屋敷の令嬢だったリリーナと、顔を合わせて親友になんてさせなかった。


 少しは良い思いもさせていただろ? でも今、その恩を仇で返している事態なら__


 僕が【彼等の街】を武装集団で焼き払ったあの時、いっそ2人揃って死んでくれていた方が__


 僕にとって好都合だし、後に彼等が味わった地獄の境遇を思うと、まだ幸せだったろうね__!」




 男は表情どころか、声色1つ変えることなく、冷徹な態度でそれを言い放った。



 その途端、ディズレーリは堪らず唾を吹き出し、腹を押さえて笑いを堪える__


 そして徐に、手元に置いてあった『旧型の電子パッド』を手に取って操作しては、【ある文章】の書かれたページを開きて、画面をグナイストへ見せつけるように掲げてやった。




「『Dr.(ドクター)グナイスト』? 今の言葉、本気(マジ)で言ってる? 頭イカれてるわよ相当♪


 だってほら、あのガキ2人のこの【詳細情報】、アンタが書き記して周知させたんじゃなぁい!?


 よく言えるわ。2人の人生を狂わせておいて……!


 

 浮浪孤児だったユウキを拾ったアンタは、開発中の《ギルソード》を、真っ先にあの身体に植え付けたわよね? 彼は育ての親と思っていたけど、実際はただの実験人形……!


 良家の次女だったリリーナは、アンタが家族を(そそのか)して、さらには民衆ぐるみで彼女を押さえつけて、無理矢理に脳を切開し【改造手術】__!


 終いには、街で村八分にされたアンタは、隠した私兵団で、あの子達の故郷を焦土にした……!



 そういえば、ユウキ=アラストルの瞳と髪、なんで不気味な赤紫なの?と思ったら……その時アンタが使った【細菌兵器】の悪影響らしいじゃない?


 あの子達があんな姿になったのも、行き場を失って、あの『雛鳥の宿』なんて地獄に収監される嵌めになったのも……全てはアンタのせいよ!?


 どうなの!? この史上最悪の屑野郎!♪」



 悪意満面の微笑みで、ディズレーリは言葉攻めに挑発と嫌味を重ねたが、当のグナイストは何も動じる素振りはなかった。


 それが当たり前かのように、彼等の今後に我関せずとも主張するように、グナイストは静かな物腰で、そっと口を開く。




「だから、今言っただろう? 僕に適したのは、子育てではなく、実験動物(モルモット)の飼育だと。


 でも気分が良い。あれは、僕が手掛けた至高の芸術作だ__!


 たとえ、それを自らの手で処分する結果になるとしても、あの誇らしい【発明の傑作】は__


 僕の軍事技術者の人生において、非常に有意義な過程であったと思えば、気分は清々しいよ……!


 我等と同じく最高幹部の少女兵士、【ゼフィーネ=クライシス】という《ブレイン=ギルソード使い》を生み出せたようにねぇ__!?」





 その本性と本能を露わにしたかの如く__


 グナイストは己の顔面を隠しながら、目の前の『三次元ディスプレイ』に向かって、独りでクスクスと笑い出した。



 その異様な姿を不快に、また気味悪く感じたディズレーリは、彼から距離を置こうと席を立ち上がり、去り際に一言を言ってやる。




「あーそう! じゃあアンタの過去の傑作を、幹部総出で私達が消してあげるわ!!


 首領(ボス)の意向なのよ__!


 アンタも責任を持って、奴等の始末に協力と連携くらいはしなさいよね!?」




 __そう言い放って、ディズレーリは薄明かりの暗い部屋に彼を1人残し、静かに退室した。



 

 暗闇に消えた彼女を横目に、グナイストは歪んだ笑顔で吐き捨てる__




「軍事技術者ってのは、結局は僕のような人種、人の姿をした怪物の集団だろうよ……!


 薄汚れた開発意欲に、血が支配されている……!


 この世に《ギルソード》を生み出した〈アルスダート=ギルソード〉も、恐らくは……クククッ!」





 __暗い部屋に独り、彼は密かに笑っていた。



◇◇◇◇◇◇




 __その日の夜中近く。

 

 

 〈新都市マリューレイズ〉、そのの中心街南部に位置する〈マリューレイズ軍立赤十字病院〉45階。


 重体者集中治療室の入り口前__




「……………クソッ……! ………畜生がっ……!」

 



 照明の消された仄暗い廊下、その窓から覗く夜景と星空を見上げながら__



 緑髪の少年キルト=グランヅェストは、絶望に覆われた目で窓硝子を殴りつけては、独りで呟いていた。


 この一連の事件にて、キルトは自分自身の弱さと共に、軍事国家は名ばかりか、この国と軍の脆弱さを嫌と言う程に思い知らされたのだ__



 地下回廊で行方を晦ました主犯ロエスレルには、行方も知れず逃走を許した。



 大切な仲間が死にかけた。


 大きな傷を負わされた。


 大勢の市民、そして衛兵達が犠牲になった。

 


「何だ……俺のこの怠惰さは……!? お父上……俺は何のためにこの立場に……!?」



 窓に写る自身の姿に隠れるように、キルトは人知れず自責の涙で顔を濡らす__




「……アンタが自分を責め続けたって、何も変わりはしないわよ……


 なんて、人の事言えた口じゃないけど……さ……」



 背後から、活気の失われた少女の、低く暗い声が耳に入る。



 微かな明かりで窓に反射する彼の背後には、待合室代わりの小さいベンチがある。そこに黒髪黒服の女子生徒が座り込み、憔悴した姿でうなだれていた。



 同じ学園の生徒、ルフィール=フロンティア__


 

 彼女は負傷した仲間を守るため、暗殺者の少女ラインフェルトと正面から戦った。


 その際に負った傷の手当を受けて、その額や手足には厚く包帯が巻かれている。




「……思い返せば、私達はあの殺し屋女に言われたわ。


【相応の訓練はされてても、《ギルソード使い》相手の実戦経験が少ないでしょう……


 そんな醜態で、仲間や大事な存在とか守れるのか】

 

 ですってよ…… 今になって、恐ろしく胸を抉る言葉だわ……?


 そう思わない? ヴィクトリア……?」




 呆然とした表情で、虚ろの瞳で、ルフィールはキルトとは逆方向の、集中治療室の内部を覗ける窓ガラスを押さえつける少女に目をやった。



 そこあるのは、同僚の女子生徒である橙髪の少女、ヴィクトリア=スレイヤーの悲惨な姿__



 

 彼女もルフィールと同じく、暗殺少女と戦った際に負傷し、その顔、脇腹、手と細い脚は治療を受けた包帯とガーゼが覆っていた。



 だが、悲痛に苦しむその表情、目から滝のように流れ出る涙、その様相は、傷の痛みを感じる猶予さえ、微塵も存在しないような__



 小さく掠れて、弱り果てた声で、その窓の奥に横たわる瀕死の仲間の名を呼び続ける__




「リリー……ナ……リリ……ナ……」




 __集中治療室の窓奥を見つめ続ける彼女の瞳は、精神が破壊されたかと思える程に、暗く、光を遮って涙を絞り出す絶望のそれ。



 まともに直視できなかったルフィールは、不意に彼女から目を逸らしてしまい、悔しさのあまり、八つ当たり口調でキルトに苛立ちをぶつける__




「……ねぇキルト? クラウスやスタイン達はどうしたのよ……? 仲間が生死を彷徨ってるってのに……駆けつけてさえ来ないわけ……!?」

 



「連絡は取ったさ……! だが俺達以外の生徒は、避難民や負傷者の救助活動に追われている……!


 相当逼迫してるらしい……! 一刻も早く駆けつけたいが、目の前の救護に精一杯だそうだ……!


 ユウキだって深手を負った。この無様さよ……!


 情けないの一言に尽きる………!」




 そう呟いて、力無い拳で夜景の窓を殴るキルトの表情は、自責の念に圧迫されて暗くなっていく。


 見たくもない、心苦しい光景が次々と……


 そんな心中を隠し、ルフィールが弱々しくため息をついた、その時の事__





「__ずっとその表情で、この病棟に留まっていたのですか? 貴方達は__?



 お辞めなさい。みっともない__


 無意味な懺悔で得るのは、時間と精神の消耗だけだ。


 これは、この国家の運命的な厄災。


 ここで思い詰めたって、悪い状況は1つとして改善されないし、誰かの傷だって治りはしない__ 」




 背後から、1人の女性の穏やかな声が聞こえた。


 低く優しい声だが、悩み苦しむ者に対しての無配慮なその言葉に、ルフィールの神経は苛立つ。




「__どちら様ですか!? 急に来られるなり随分なお言葉を投げてくれるものですね!?


 こっちは、大切な仲間が国を守るために!! 瀕死状態まで傷つけられて!!


 そんな状況の私達によくもそんな事を!!」




「ばっ馬鹿……! やめろルフィール!!」




 

 冷淡な言葉を浴びせる女性に、ルフィールは飛び掛かろうしたが、焦燥に駆られた顔で、キルトが即座に静止させた。




「まさか……!? 貴方様が……?」




 目視せずとも、声の主が誰かなど分かっていたからだ。だが、この状況下で耳にするのは、彼にとって予想外であった。


 故に、キルトは仰天した顔で、声を聞いた病棟廊下の側へと振り向かされる__




「上層部の方が直々にお見えになるとは……宜しいのですか!? レーシェル少佐殿……!?」




「当然の事です。()()()()()の危機__


 上からのご命令でもありますが、お国に忠誠を誓う身とあらば、駆けつけるのが使命__!」

 




 彼等の前に姿を現した若い女性は、冷静な顔色を変えず、ただ背筋を伸ばしたまま淡々と語った。


 名はレーシェル=コンシェルジュ、階級は少佐。



 年齢は26歳、身長は170cm前後、血色の良く可憐な肌艶だが、瞼は尖ったつり目な形__


 彼女が身に纏う新緑色の長裾の軍服、その肩部には、権力の中堅階級を表す【銅色の肩章】が装飾されている。


 


「……そう……ですか……! これは軍の上層部様でいらしたとは……!


 先程は無礼を……!働きました……!! 申し訳……ありません……!」




 ルフィールは、苦虫を噛み潰したような顔を隠せず、礼儀のみを通さんと、頭を下げて苦し紛れに謝罪を述べる。


 無論、彼女が発した配慮の欠片もない言動は、許しなどしていない。





「別に、非礼程度に一々腹を立てる程暇ではない。


 それに、貴方達の所属する〈グランヅェスト学園〉が【雛鳥の宿】の『継承学園』と考えれば、教養の問題など仕方ないのでは__?


 それはさておき、エヴァンズ所長の見舞いも伺ったついでに、そこの看護婦から報告を伺った。


 ユウキの()()、お目覚めになっているようだぞ? 諸君?」


 



「なっ……!? ユウキが……すでに!?」



「目を覚ました……!? ですって……!?」



「……………?」




 レーシェル少佐の淡々とした報告に、キルトとルフィールは呆気にとられ目を見開く。



 その離れでは、今まで呆然と集中治療室の向こうを眺めていたヴィクトリアが、虚ろな目で、やっと少佐の方へと顔を向けた。




「あの暴走薬『Hexe(へクセ)』をお飲みになったと知って、身体への悪影響がどれ程かと案じていたが__!


 ユウキ様はリリーナ姫とは()()()で、回復が本当にお早いな__!


 さぁ早急にお会いに行くといい。ただし__!


 リリーナ姫の容態……!


 彼にお伝えする際は、覚悟しておけ………!」




 そう言って、レーシェル少佐は、静かにキルト達の元から立ち去った。




 この時、辺りの空気は、室内なのに寒く、気温さえ忘れるように、一層凍てついて肌に染みた__




◇◇◇◇◇

お詫び:この頃、仕事や資格勉強を理由に、ただでさえ遅い更新が余計に遅くなっております。


まだこの章は全然書ききれていませんが、予定、文字数、その他諸々の都合で、途中でも更新を決めました。


 本当に期待を裏切ってしまう事ばかりで、情けなく、申し訳なく思っております。


 それでも、お時間がある時で構いません。気が向いたら覗いて頂けるだけでも、ありがたいです。。

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