・暗殺少女の特攻(2)
〈マリューレイズ軍立赤十字病院〉病棟廊下__
ルフィールは狙われたリリーナを守るべく、彼女の医療ベッドの上から、暗殺少女ラインフェルト(略称:ライン)と対決・対峙していた。
彼女は戦闘意思を剥き出しに、《暗黒魔術の砲撃拳棒》の棍棒部を高速回転させて威嚇する。
「……ルフィール……? ……1人で……大丈夫? ……私も……援護を……」
傷を負って動けないリリーナは、無理に重い上体を起こし、ルフィールを見上げて提案した。だが……
「だから……! 無理に身体を動かすんじゃないわよ! そんな状態で何ができるの? 患者なんだから、黙って私の後ろにいなさい!」
ルフィールは厳しく、ぴしゃりと彼女を叱責する。
「……うん……ごめん………」
リリーナは瞬時に萎縮するも、我に返って考え直した。
軽率な行動で、彼女に負担がかかっては本末転倒だ。ここは背後で見ている他ないと、奥歯を噛み締め腹を決める。
「……これが……! 〈戴冠の女王軍〉の《ギルソード使い》……!」
3m程離れた位置で立ち尽くすラインは、強張った表情で2人を見つめ、そう言った。
予想外の反撃に、惑い恐れを覚えたのだろう。対峙するルフィールは、そう思っていた。
だが、次の瞬間__
「……ぶっくくっ! あはっ……あはははははっ!」
唐突に、ラインは歪な笑顔で嘲るように笑う。
「は? 何笑って……?」
と、ルフィールは、その不気味な様子と態度の変貌に、妙な戦慄を瞬間的に感じ取ったが、その異変を誰よりも逸早く察知して警告する者が傍にいた。
「ルフィール危ない……! 床に伏せて……!! 今すぐに……!!」
ベッドで上体を起こしたリリーナが、剣幕な表情でルフィールを見上げ叫ぶ。
ふと、その目を覗けば、あの《ギルソード》を透視・解析できる紅色の瞳、《粒子器発動の覚醒瞳》が、再び輝きを帯びている。
「……どういうことよ!? 本当にリリーナの目には何が映って……!」
「……いいから伏せて!! 相手の《ギルソード》は接近戦用なんかじゃない!! 遠距離からも攻撃してくる……!!」
混乱するルフィール対し、リリーナはとにかく必死に警告するが、生憎、暗殺少女の打つ手は予想外に早かった。
「次はこっちの番よ!! まだ手の内が残ってるから何!? その程度で勝ち誇んな! じゃあお前は! この攻撃までは予測できたのかしらぁ!?」
狂気に満ちた顔面に豹変したラインは、その顔をルフィールに見せるや否や、何故か標的の彼女達から3mも離れた位置で、徐にサマーソルトキックを1人でお披露目した。
一体何がしたいのか? ルフィールがそう思った刹那__
爆撃のような暴風が吹き荒れる共に、鎌鼬現象とでも言い表そうか、巨大かつ絶大な風圧の暴風、《斬撃の嵐》が、壁や天井を斬り裂いて2人を襲う。
「ぐあっ……! 何……!? 風が……空間を斬って……!?」
ルフィールは《斬撃の嵐》に正面から曝されるも、瞬時に顔面を両腕で覆って足腰を踏ん張り、その場を辛うじて耐えきった
……ように思えたが、《嵐》が収まった刹那、彼女の額と頬と右腰、右腕から血飛沫が溢れ出す。
「ぐっ!? がぁ……うぁあ……!! うぅ……!!」
ルフィールは、傷の激痛に悶絶し嗚咽するも、流血する前額部と右腰を両腕の袖で拭いつつ、目の前の敵ラインをぎっと睨み続ける。
「フンッ! 舐めないでよね! まぁどうせ殺すんだし? 隠しても仕方ないから言ってあげる!
これは私の、《斬撃破風の脚靴剣》の能力__!
ていうか、私は殺し屋だよ? しかも《ギルソード使い》……! それを相手にする意識が脆弱じゃない?
あっ、思い出した。そういえばアナタ達って、相応の訓練はされてても、《ギルソード使い》相手の実戦経験って少ないんだっけ……!?
そんな醜態で、仲間とか大事な存在とか守れるのかしら!?」
ラインから浴びせられる容赦ない言葉により、ルフィールはふと瞬間的に、嫌な予感と寒気を覚えてハッとする。
「しまっ……リリーナは……今の攻撃でリリーナは……!?」
慌てて振り返った瞬間、目にしたくなかった絵図がルフィールの視界に突きつけられる。
リリーナが横たわっていたはずのベッドが、縦真っ二つに破壊されて倒れ転がっていた。
彼女の左手に繋がっていた点滴も、折れたポールは倒れて、斬り裂かれたパックから液体が溢れて地面に広がっている。
「いやぁ……! リリーナ……! リリーナぁ!?」
取り乱したルフィールは、目を見開いて彼女の名を叫ぶと……
「……ルフィール……ここだよ……」と、弱々しく声が聞こえてきた。
よく見ると、大破して転がったベッドの奥で、リリーナは座り込んで壁にもたれかかっている。
無事のようで安心だ……と思った瞬間、ルフィールはその姿を見渡して顔を青く染めた。
元々重傷で動けなかった、包帯まみれのリリーナの身体は、さらに切り傷を負ったようで、押さえていた右腕から流血が見られる。
そして《斬撃の嵐》から辛うじて回避した際、ベッドから飛び降りて身体の至る箇所をぶつけたのか、その額や腹部、両腕両脚は、傷口が開いたようで包帯は赤黒く滲んでいた。
ぜぇぜぇと苦しげに吐息を漏らす口元から、ツゥーッと、吐血の糸が顎に滴っている。
「うぅ……リリーナ……! ごめんなさい……! 私……リリーナを傷つけるつもりはなかったのに……! 私のせいで……!」
「……ルフィール!! 今は私のことなんていいから……!! お願い後ろを見て……!! 後ろを……!!」
「後ろ……!?」
リリーナの危機的な警告で我に返ったルフィールが、瞬時に振り向いた刹那、間近まで接近していた暗殺少女ラインは、己の能力である《刃の脚》を振り上げて、踵から頭を粉砕しようとしていた。
「死ねっ……!」
冷たく凍った、殺意の一言が放たれた瞬間、ルフィールの背中には、暗殺少女の踵は振り下ろされる。その寸前__
「………《創造する脳操槍剣》ァアァァ!!」
持てる力を振り絞ったリリーナが、自身の能力武器、《創造する脳操槍剣》を『遠隔操作』でルフィールの頭上で発動・召喚させる。
【ガギンッ……!!】
「なっ……!!」
鋼鉄同士が削れ合う衝撃音と共に、ラインの刃の脚《斬撃破風の脚靴剣》は、ツツジの形状をした紅色の槍、《創造する脳操槍剣》の刃に弾かれた。
予想外の事態に、暗殺少女の精神は再び焦りを呼び戻す。
「くっ……! そうか!? リリーナ=フェルメールの《ブレイン=ギルソード》は……希少な遠隔操作ができる能力……!
……っ!? な……何……これ……!?」
ふと、ラインは《創造する脳操槍剣》の先端の刃に、何やら異変が起きているのに気づく。
芸術的な造形をした《ツツジの槍》の刃と柄の間、花に例えれば『花托』の部位、そんな箇所から、何やら1本の《蔦》が分裂して形成され、そして何処かへ細く伸びている。
その《蔦》を目で辿ってみれば__
いつから嵌められたのか、それはラインの身体に絡んで巻き付いていた。
「なっ……!? 何これ!? 茎!? いつの間に……!?」
「《脳操蔦芽》! この《蔦》は私と一心胴体なの……!!
その蹴りを防いだ瞬間……すぐに捕らえたよ……!
……もう逃さない!!
《脳操変形:捕縛の縄"薔薇の蔦芽"》!!」
絶叫と同時、リリーナの意思に共鳴した《蔦》が、紅の輝きを帯びて少女の身体を締め上げた。瞬時__
「ぐうぁ"……!! 痛ぁ"……い……!!」
ラインが苦痛の悲鳴を上げる。
よく見ると、身体を締め付ける《蔦》には鋭い棘が幾つも見られ、そこから赤い血が滴っていた。
これは《蔦》ではない。《茨》だ__
「ぐっ……! これは……棘……? そうか……これが食い込んで……!」
痛覚で原因を察知した彼女は、激痛に悶えながらも、《茨》をどうにか解こうともがくが、動けば動く程、その棘は深く身体に刺さり、焦りも次第に増長していく__
「ぐっ……! あがっ……! 解けな……い……!」
「……お陰様で助かったわリリーナ。
けど、ホンっと……! 自分は大怪我してるってのに、自分の命どころか人の身や心配ばっかりして……!
自分のことを第一に考えてほしい時だってのに、アンタのそういう性格はもう変えられないわね……!
だからこそ、私達はリリーナをこの上なく大切な仲間として、ずっと思っているのよ。
そんな大切な仲間を……痛めつけて苦しめたこの女は、絶対に許しはしないわ!!」
ラインが《茨》の縄に苦しんでいる最中、傍にいたルフィールの影がゆらりと立ち上がった。
ふと彼女の目を覗くと、その瞳は暗く冷徹冷酷で、見る者に慈悲の感情を持たない、静かな怒りで染め上げたようなそれ。
ルフィールはそのまま、闇の瞳で睨みつけながら、ゆっくりとラインに近づいてゆく。
「はぁ……はぁ……! なっ……舐めるな……! 別に茨の棘が食い込んでいようが…… お前ごとき……この《脚》で真っ二つにしてやる……!」
《茨》が身体に絡んだまま、ラインは我が獲物である《刃の脚》をぶん回して、豪快な横蹴りを炸裂させる。
ルフィールは見越していたようで、容易く見切っては右からの蹴りを左手の《G・トンファー》の先で軽く受け止めた。
その時、ラインフェルトは混乱と戦慄を覚えた。
「はっ……!? ……えぇ……?」
《斬撃の嵐》が発生しない。彼女がお見舞いした一撃は、なんの変哲もない、ただの低威力な『蹴り』だった。
「どうして……? 真っ二つに裂けないの……? まともに《斬撃》を食らわせたつもりなのに……!
《ギルソード》の不具合……? バグ……? まさか!? そんな不具合なんて過去の記録でも聞いたことがない……!!」
そう、《ギルソード》は約350年前に開発されてから今日までの長年、《ナノマシン》の故障や不具合は、まだ1件も報告されていない。
まだ既存兵器よりも歴史は浅いが、鉄製等の既存兵器とは違い、《ギルソード》は、一定のプログラム等を《ナノマシン》に組み込んでしまえば、後は運用するのは『人間の身体』である。
既存兵器のように、1から部品を形成して構成したのではない。かつ定期メンテナンスも必要はない。開発陣営も想定はしていない。
よってこの状況は__
「__そうね、まず自然な故障なんて起こり得ないわ! ていうか故障や不具合なんかじゃないもの!
だってこれは__私の《能力》が引き起こしたんだから!
ほら、アンタの視界の周囲、よーく見渡してご覧なさい__!」
ルフィールに言われて、ラインは慌てて周囲をキョロキョロと見渡した。
「……何よこれ……! 黒い……『霧』……?」
気がつくと、彼女達の周囲には、どす黒く毒々しい黒紫の『霧』が発生し、周囲を覆うように漂っていた。
濃度が薄かったので気がつかなかったが、徐々にそれが濃くなっていくあたり、今唐突に発生したのではないと分かる。
一体どうして、この霧は発生したのだろう。《ギルソード》の不具合と何か密接な関係があるのだろうか……
「__知りたい? この霧の正体。改めて手品を明してあげる!
私の武器の名は《暗黒魔術の砲撃拳棒》!
名前から察しできると思うけど、呪い、妖術、魔術といった非科学的な効果や現象を《ナノマシン》の演算能力によって実現することが可能なの。
この時代で言い換えれば、『科学魔術』っていうのかしら?
まっ、悪魔を取り憑かせたような能力の《ギルソード》なのよ。私のこれは__!」
「はっ……? 魔術? ワケの分からないことを……! 何をした……!? 私の《ギルソード》に何をしたァ……!?」
「だから言ってるでしょ? この霧は《呪術の霧》。正式名は《暗黒魔術の粒子:崩壊の呪い》__!
アナタの脚の武器は機能を停止するわ。この《霧》がある限りね……! 《斬撃》の蹴り技なんてもう起こせない……! まぁ見ればわかるけど……」
「………!?」
ラインは、ふと自身の脚回りの武装《斬撃破風の脚靴剣》に目をやった。
銅色に輝くブーツ形状の様相は熱で溶けるように乱れ、黒紫の《ナノマシン》が表面に繁殖して、銅の色も輝きも死に、挙句、機械の破損状態の象徴か、電流の稲妻まで発生して、脚回りをのたうち回る。
ラインフェルトの表情は変わった。焦燥と危機的な心境が一目で伺える。
「……じゃあ、次はこっちの番よ!」
ルフィールはそう言った瞬間、右手の《トンファー》を高速回転させ、ラインフェルトの左脇腹を殴りつけた。
「ぐっ……! かはっ……!!」
「罰はこれからよ__! 仲間にやった仕打ちを私は許さないし、そのお仕置きも容赦しない! そして、すぐに終わらせない!
でも時間に余裕がない。短時間を有効に活用しつつ、ゆっくりとアンタに苦痛を与えてあげるわ……!」
ルフィールの様相は変わり果てた。その目はまるで、冷徹非道な魔女の如きそれ__
彼女は、そのまま両手の《トンファー》を高速回転させ、速度に拍車をかけて、少女の全身を次々に殴りつけていく。
まずは左頬、そして右脇腹、左腕、みぞおち、両肩__
至るヶ所の骨を砕くように打撃を加え続けると、最後に右足で彼女の胸を雑に蹴を入れる__
「がはっ……ごぽっ……! ……オエェ……! ゴホッ……ゴホッ!」
無残に痛めつけられたラインは、全身は青痣にまみれ、よろめきながら嗚咽を繰り返し、血と吐瀉物を足元に撒き散らす。
「どう? 苦しいでしょ? 私達とこの国に喧嘩を売った愚行……後悔するといいわ」
冷徹な目で冷酷な言葉を吐いたルフィールは、ついに終いの一撃を与えようと、《暗黒魔術の砲撃拳棒》の《ビーム砲》発射口をラインの顔面へと向けた。
だが刹那……
「……惜しかったね!」
《銃口》を向けられ追い詰められたラインは、何故かほくそ笑んで言った。
不可解だとルフィールは思ったが、ふと目線をその向こうやった瞬間、背筋が凍る。
ラインの背後、20m先の壁に、携帯式の『時限爆弾』が転がっていた。
迂闊だった。彼女は《ギルソード》の他に、暗殺者やテロリストが持ち歩くような携帯武装も隠し持っていたようだ。
小さな警告のライトは赤色にチカチカと光出した瞬間、瞬く間に轟音を轟かせ、爆風と硝煙を撒き散らした。
「うわっ………!!」
「きゃァ………!!」
ルフィールとリリーナは爆風の衝撃で、後方へと吹き飛ばされた。
すぐ背後にリリーナがいたので、怪我を負っている彼女の身体をこれ以上傷つけまいと、ルフィールは瞬時に彼女の身体を抱きかかえて、覆い庇うように転がっていた。
幸いにも、爆弾自体にそれ程強い威力は無かったようだ。
それ故、数カ所に打撲を負ったのはルフィールだけで、リリーナは最小限のダメージで済んだ。
__だが実際は、ほんの少しの衝撃とダメージが、リリーナ脆く傷ついた身体に、深刻な負荷を与えていた。
その事実は、後に明らかになる__
「ルフィール……ごめん……! 大丈夫……?」
すぐに仲間の身を案じる、リリーナの優しい声が聞こえたが、ルフィールはこの時、答える余裕など失っていた。
__焦りで目が見開いている。
「……なんてこと……! 《暗黒魔術の粒子》が……吹き飛んだ……!」
つい先程まで、この廊下に蔓延していた黒紫の《呪術の霧》。それが今、辺りを見渡せば、その霧は爆風で吹き飛ばされ、《霧》濃度がもう残されていない。
ふと、先程の爆弾が転がっていた場所を見れば、最悪なことに、この廊下は建物の最も外際に位置していたと判明した。
壁の向こうはすぐ外、見事に風穴が空けられて、青空と都市の景観が覗いている。《呪術の霧》は、ほぼ病院の外へと逃げて風に流れていったようだ。
暗殺少女ラインの危険な《能力》を封じていた生命線であったというのに、それが失われた今、優劣はとうに逆転している。
ルフィールは冷や汗を流し、奥歯を噛み締めた。
「……で? どうするの? さっきの《呪いみたいな霧》さァ……! 爆発で消し飛んじゃったけど!?」
冷徹な声が、背後から聞こえてくる。
2人が振り向くと、ついに激昂した暗殺少女ラインは、殺意の眼光を2人に突きつけて、ゆっくりと近づいてくる。
恐ろしい対応力だ。自分を吹き飛ばされた爆風を利用して、自分達よりも素速く後方に移動したようだ。
見ると、彼女の上体を締め付けていたの《捕縛の縄"薔薇の蔦芽"》が、完全に解かれている。
「なっ……! リリーナの《能力》で縛っていた《蔦》が……!」
「あぁこれ? 爆弾で飛ばされたときに緩んだみたいよ……!
少し《斬撃破風の脚靴剣》を膝で引っ掛けただけでビニール紐のようにきれちゃったのよ!
これ、脳で自由に操る《ブレイン=ギルソード》って言うんだっけ? 使い手の意識が乱れると、《ナノマシン》ってこうも弱くなるみたいねぇ……!?」
「……ごめん……ルフィール……私の失態……あの《蔦》の強度……コントロールを乱して……」
ルフィールの横で、リリーナは肩を落として自責する。
「馬鹿ね……! アンタは大怪我人だっていうのに無茶してるのよ……! 仕方ないじゃない……! よく頑張ってくれたわ!」
泣きそうになる彼女を慰めようと、ルフィールはそっと頭を撫でてやる。
「安心なさいリリーナ! 約束したのよ。リリーナは何が何でも守るし、これ以上傷つけたり負荷を追わせたりは……絶対にしないわ!」
ルフィールは、リリーナの盾になるように立ち塞がって、ラインを目掛け再び《暗黒魔術の砲撃拳棒》の《ビーム砲》発射口を構える。
だがラインは最早怯みもなく、恐ろしい眼差しで、再度あのサマーソルトで《斬撃の嵐》を起こそうと素振りを見せる。
「……よくも随分といたぶってくれたわねぇ! あの《霧》が晴れてくれたおかげで、基本機能が徐々に回復してるみたいよ……!
あらァ? 丁度同じ立ち位置に、2人一緒に転がっているわ!
つまり次の《斬撃破風の脚靴剣》の一撃で、2人まとめてバラバラにできるってことじゃない!
さぁ、いい加減諦めてお祈りでも捧………げ……っ!?」
一瞬、ラインの歩が止まった。
次の瞬間、彼女の正面から《銃弾の弾幕》が一斉に彼女へと襲いかかる。
「くっ……! 援軍か……!?」
咄嗟に後方へ飛び上がって、ラインは軽やかに銃弾を回避した。
だが直後、少女は自身が目の当たりにした光景に、目を見開いて唖然とする。
「《銃》が……!? 空中を飛んでる……!?」
「……遅かったわねアイツ、待ちくたびれたわよ!」
ラインを攻撃し、ルフィール達を防衛した者の正体は、翼を生やした8丁の飛行機関銃《小鳥の機関銃》だった。
仲間の生徒ヴィクトリア=スレイヤーが操る能力武器《銃撃連隊の機関銃》の一部であり、彼等は自動操縦機能を有して、使用者である彼女の指令に忠実に従い、敵を攻撃する。
8つ揃った《小鳥の機関銃》達は、まるで戦闘機のように飛び交って現れるや否や、瞬く間に編隊を整えて、2人の正面に覆い被さって防壁の陣を形成し、その全ての《銃口》は、敵のラインへと向けられた。
「こんのクソ殺戮魔女が! この私を奔走させて弄んだ挙句、大切な友達まで傷つけて……!!
この《機関銃》で、ミンチにされる覚悟は、当然あるんでしょうねぇ!!?」
ルフィール達の背後から、ドスの効いた、女子の低い怒り声が周囲の空気を唸らせる。
灰色ブレザーと赤スカート、銃弾の形を模したヘアピンを装飾した輝く橙色のボーイッシュヘアー、
そして普段は愛らしい女子特有の丸く明るい瞳は、激昂と憎悪に染まった、戦場に荒れる狂戦士のそれ。
「ヴィクトリア……無事だった……良かっ……た………」
青白く衰弱した顔色で、リリーナは酷く咳き込みながら、ヴィクトリアの無傷な様子に安堵した。
身体中の包帯から滲み出した血を、衣服で隠しながら………
「ったく! 勝手な行動した分、アンタには存分に働いて貰うわ!
とはいえ、私の傷は大したことないし、まだ余裕で戦えるから、ここからは2対1で総攻撃ができる!
……時間との戦いよ! リリーナは平然を装ってるけど、確実に容態は悪化してる……!
これ以上、あの子の身体に負荷はかけられない! よろしくて!?」
そう言って、再び腰を上げて立ち上がったルフィールは、両腕の《トンファー》をぶん回しながら立ち上がった。
そんな彼女の言葉に対し、すでに表情を怒り一色に染めたヴィクトリアは、正面で焦り汗を流すラインを睨みつけながら、やけに落ち着いた低い声で唸るように言う。
「悪かったわね! 独りにして無理させちゃって……!
そのお詫びに、私のやり方に相応しい至高の『狩猟術』を見せてあげるから!
……ただ、少しグロテスクかもしれないからさ! お見苦しさは我慢して貰うけどね!!」




