・乱戦乱舞、《ギルソード使い》(2)
語録紹介(追加分)
《死の要塞の大巨人R》………中東地方で自由軍を恐怖に陥れた
《死の要塞の大巨人》の復刻版、初期型はリリーナに破壊され、開発者も死亡したが、そのクローン人間であるヴィザロⅡによって復元・再開発された。
◇◇◇◇◇
「ゲホッゲホッ……! 煙てぇ……! ヤバい目にあったぜっ……!」
周囲に立ち込める硝煙と火薬の匂いに苦しみながらも、ユウキは瞑っていた目を恐る恐る開ける。
「……もう目起き上がっていいぞ! 爆発による外傷は俺もお前も一切ないから安心しろ……!」
キルトの言葉に、半開きだったユウキの目はばっちりと開く。
気がつけば、ユウキはキルトの立つ後方に隠れて、身を伏せていた。
辺りを見渡せば、爆発の熱と衝撃によって、通路は粉砕した瓦礫にまみれ、貯水タンクの施設には裂傷の亀裂が幾多も生じている。
「……助かったぜ! またお前のおかげで命拾いしたワケだ……! この俺が誰かに貸しを重ねるとはなァ……!」
「気にするな! 俺の所有する《熱炎吸収の破壊狙撃銃》の力は、この状況でこそ発揮される……!」
そう言って、キルトは無傷で仁王立ちしていた。
ふと、その右手に目をやると、握っていた彼の武器《熱炎吸収の破壊狙撃銃》の銃先から、何やら青色の『コウモリ傘』のような、膜状の《ビーム状の盾》が薄っすらと張られている。
実はこの《盾》こそが、爆炎と爆風から2人の身を守ったのだ。
「知ってるぜ! お前の《ギルソード》の〘特殊能力〙、知ってはいたが、実際に見たのは初めてだけどなァ……!
高出力な《メガ粒子砲》をぶっ放すシーンしか見たことねぇけど……!
その《ライフル》の銃先から射出してる膜、それ《高熱粒子の盾》ってヤツだろ!」
「あぁそうだ……! まだ試験段階でな、俺の《銃》の他に、ほんの数機の《新型ギルソード》にしか搭載されてはいない……!
だが、俺の《これ》は、他のとは全くの別物だ!
単なる火器から防御するだけが売りの《高熱粒子の盾》じゃない……!」
キルトがそう言うと、彼の胸の前に、小さな《空間ディスプレイ》が出現する。
一般の《ギルソード》には全て備えられた機能で、メンテナンス状態などを、必要時に《空間ディスプレイ》を表示して報告してくれる機能である。
薄く平らな『ディスプレイ』には、こう記されていた。
[吸収完了。エネルギー充填率、100%]
「……へぇ100%か! こうして見るとすげぇなァ!
海の上でもあんだけ大火力《メガ粒子砲》をぶっ放して、ここでも弾を消費して、チャージなんてする時間なかったってのに……!
普通で考えたら、とっくにエネルギー切れを起こしてるはずなのにな!」
起き上がって、キルトが見ているディスプレイを横から覗きながら、ユウキは言った。
「何を言っている……! 俺の《銃》の〘特殊能力〙は、もう知っているのだろう!!?
それに、さっき言ったはずだ! コイツが放つ《高熱粒子の盾》は、他とは全くの別物だとな!
寧ろ目的が違うんだ!
この《高熱粒子の盾》は、防御した火力を〘吸収〙する力がある!」
「吸収……? その《盾》にか!?」
「正確には、この《盾》に仕込まれた《ナノマシン》が、だな!
盾の表面には、高耐性高出力の《高熱源ナノマシン》に紛れて、隅々まで《火力熱力吸収ナノマシン》を張り巡らせている。
手榴弾、ミサイル、ビーム砲の他、火災、ガス爆発、ありとあらゆる熱や火力を〘吸収〙して、それをこの《銃》のエネルギーや弾数に変換できるんだよ!
火力を吸収して奪う盾、《吸収・高熱粒子の盾》! それがコイツの能力__!
だから俺のこの《ギルソード》は、開発班から《熱炎吸収の破壊狙撃銃》と名付けられた訳さ__!」
「……へぇ! それで俺達は、あの爆発の中で無傷でいられたワケだ!
実際に目で見て説明されると、机上理論より理解が深まるよ! ありがとな!
けど……やっぱり俺の思った通り………」
改めて辺りを見渡せば、その惨状は酷かった。
焼け焦げた貯水タンクは破損して亀裂から水漏れを起こし、通路やバルブ等設備は、形状を変えられて、炭色で覆われている。
通路の上に倒れた殉職者の遺体は、もはや原型など留まってはいなかった。
「……安らかにお眠りください………あの男の断罪を以て……どうか貴方達の魂は……」
慈悲と自責の念を抱いた顔でキルトは呟くと、2人はその場で胸元に十字を切った。すると……
「急ぐぞキルト!! 奴はこの先なんだろ!? 〈総本部〉への侵入を防ぐのも第一だが……!
この場所で野郎がやった行為は、絶対に許さねぇ!!
ロエスレルも追わなきゃいけねぇけど!
まず俺は、奴を追い詰めて断罪する事に専念するぜ!!」
1つの迷い無き決断を抱いたユウキは__
その剣幕な表情を噛みしめるように、キルトを背にして通路の奥へと突き進んでいった。
「………いざという時に、アイツの覚悟に染まった背中は、どうも頼りになっちまって、そして魅入られっちまう……
アイツという男が、あんな奇麗で立派な一面だけなら……どんなに良いことやら……!」
キルトは、悟ったようにボソリとほくそ笑むと、《銃》から出ていた《吸収・高熱粒子の盾》の電源を落とし、先を行くユウキの背中へと静かに続いていった。
◇◇◇◇◇◇
〈新都市マリューレイズ『産業廃棄物処理施設』〉___
地下70m、水道処理施設から500m、〈総本部〉から400m離れた地点に位置するこの場所は、水銀、シアン化合物、PCB等、この都市の工業廃棄物を一度保管し、適切に処理を進める隔離施設である。
瓦礫類から鉄屑、有毒物質から爆発危険物、さらには放射性物質まで、あらゆる廃棄物が区別なくこの場へ送られる。
そんな恐ろしいこの場所が、軍の〈総本部〉からの近距離に設置されているには、理由と名目がある。
軍の意向は、この都市が軍事国家である以上、市民の生活基盤、衛生、保安は、軍がその采配と責任を追うべきものだと。
故に、市民の安全を脅威となる危険物は、生活圏から最も遠く、かつ軍の監視が最も行き届くこの場所で安置する目的で、当施設は設置されたのだ。
それがこの場所である。
「……ここが〈総本部〉への通過地点『廃棄物処理施設』か……!
にしても、〈総本部〉の最短ルートなんてよく知ってたな! てか、薄暗くて視界が悪いじゃねぇか……!」
暗闇の地下通路を抜けて、ユウキ達は10分程度でこの地点へ到達した。
一足先に着いたユウキが気にならざるを得なかったのは、景観の悪さだった。
この『産業廃棄物処理施設』は、天井高さ120m、面積300㎡、施設内の壁は対核の防爆構造と大それた設計だが、あくまで目的は廃棄物・危険物の処理・安置を前提としているので、この場所での人員作業は視野に入れていない。
それ故、証明は総面積の割に天井と壁面を合わせて25ヶ所程度しかなく、さらに建物を解体した瓦礫等の巨大な廃棄物に灯りを遮られて、彼等の視界はほぼ暗闇である。
「ったく! 小細工が好きな敵にとっては、持って来いの奇襲スポットだろうな……! なぁキルト……!」
「……それは当然の思考だな! 侵入者やテロリストをここに誘き出した際に、袋の鼠状態で一斉淘汰できるのも、ここの設計の利点だからな……! 当然…………」
ぼやくユウキを諭しながら、ため息混じりにキルトは施設内に足を踏み入れた直後__
【………オ″ォ……!! オ″ォ″オォ″……ヴァ″ァ″……!!】
絶大かつ史上最悪の騒音が、2人の耳を貫くように打った。
__魔物のような者の、猛々しく、悍ましき絶叫。
それが暗闇の地下シェルターに、突如爆音として轟いたのだ。
「ぐぁ……! クソッ……耳が痛ぇ……! 何だ!? 何が潜んでんだ!? 近いぞ!? いや、てかこの部屋の中だ!! 何かの怪物型兵器でも潜入してんのかァオイ!?」
「………待てユウキ!! 今の音……聞き覚えがあるぞ……!?」
思わず耳を強く塞いでしまったキルトだが、この咆哮に対する強い心当たりが、彼の脳裏に引っかかっていた。
いや、寧ろ鮮明に覚えていた。即座に記憶は蘇り、記彼の身体に悪寒が走る。
「……あ? 今のクソでけぇ音か? 何の正体かは知らねぇが、奴がここに現れていたという確信だけは掴めたぜ……!
今度はどんな胸糞悪い小細工を仕掛けたことやら……!?」
その咆哮の正体を、ユウキは知らなかった。
だが刹那、あの男の声と共に、その姿を目の当たりにする。
「ソイツはここにいますよ〜? 暗闇に慣れてきた目で、よ〜く上を見渡してご覧なさい……!」
先の水道施設で聞いた、忌々しい男、ヴィザロⅡの声。
「あァ!!?」
ユウキは敵意と覇気を剥き出しにして、闇に慣れた目で真上を見上げた。
次の瞬間、ユウキは顔色を少し変えてしまう。
突如視界に飛び込んだのは、この世にあらざる怪異の姿。
地上約30mの巨体に、赤紫の《ナノマシン》の光に包まれた全身。
内側から垣間見える身体の内部には、《ナノマシン》の結合によって構成された《電気ケーブル》、《圧力ホース》の集合体と幾多の《制御装置》が、内臓のように設置されている。
鉤爪のような攻撃型の《触手》、そして怪物の被り物のような禍々しい《鎧》。
人が創り出したとは思えぬ、禍々しき恐怖の外観、かつて呼ばれた残酷な神『クトゥルフ神』に酷似したそれ。
「オイオイオイ……! 汚えハトが銃弾ぶち込まれたような顔してんぞぉ〜!?」
愉快にそう言いながら、ヴィザロⅡは《大巨人》の左肩に乗りながら、ひょっこりとその姿を現した。
憂さ晴らしの捌け口を見つけたように、こちらを見下ろしながら__
「………ッハハハハハハ!! その目だよ! テメェのその怖気づいたような目が見たかったんだよォ!!
もう命乞いなんざ無駄だ!! 良き兄と盟友の仇を討たなくちゃなァ!!」
ヴィザロⅡの凶悪な高笑いをよそに、ユウキ達は密かに囁き合う。
「なるほど……これが《死の要塞の大巨人》ってヤツか…………!
話には聞いていたが、こうして間近で目視すると、なんて禍々しくて気持ち悪い奴だよ……!
まるで人間のエゴと邪悪が具現化したようなモンだな……! キルト、お前これ一度見たことあんの?」
「あぁ……直接ではないがな……! リリーナの操る《ブレイン=ナノマシン》から伝達される通信映像で、コイツの姿は確認していた!
気をつけろユウキ! 奴は『要塞』その物だ!
あの巨体には、全身を100門にも及ぶ《ビーム砲》やら《主砲》やらで覆い包んでいる!
一斉砲火などすれば、都市1つ灰にするのに数分と掛からん……!
実際に奴は中東の戦場で、味方ごと無差別に焼き払っていた……!
そして、コイツのせいで……! リリーナは瀕死の重傷に追いやられたからな……!!」
「……リリーナを傷つけた奴……ねぇ……! オーライ、分かったよ……!
でも……もう仕方ねぇ。ここは潔くやろうぜ……《ギルソード》には……相性ってのがある。
もう結果は決まっちまったようなものさ………!」
ユウキが何かを諭すように呟いた直後、《死の要塞の大巨人R》の歪な動力音がシェルターに響き渡り、その形状を変形させる。
《大巨人》の肢体からは、あらゆる《表面パーツ》が着脱され、内蔵や骨が表皮から剥き出しになり、小型の《ビーム砲台》から大型の《メガ粒子砲台》まで、内部に隠された100門の火力砲台が露になった。
「……辞世の祈りは終わりましたか? このフロアは爆発物や危険物がありふれている! 逃げ場は無いし、逃げようとしても爆発物に引火すれば死ぬだけだ……!!
別に私は悔いはない……! お前達を道連れにするだけで、ロエスレル様に大きく貢献できるのだから! もうこれで終わりだ!
では、《死の要塞の大巨人R》……!
全てを撃ち尽くせ!! 奴等を木端微塵に破壊しろォ……!!」
ヴィザロⅡの絶叫と共に、《大巨人》の身体を覆う無数の《砲台》は、一斉にユウキ達2人に照準を向けて、《ビーム砲》の出力とエネルギーを蓄え出す。
射出まで、すでに秒読みである。
「なぁキルト、1つ確認したいんだけどさ……!」
ふと、ユウキが口を開く。
「何だ? ユウキ……!」
「……帰り際に、アイツから話を聞いたんだけどさ……!
アレの中………人が入ってんだよな……! しかも……もう助からないような状態で……!」
ユウキが確認と放った言葉。それは、中東の荒野でリリーナが目の当たりにした光景のことだった。
すでにユウキは、その全貌を彼女から聞かされていた。
彼女が《大巨人》の攻撃を躱して頭部を切断した際、その断面から、奴の中枢装置に当たる部位が露わになったという。
だが、彼女が見たものは、世にも凄惨で狂気的だった。
1人の人間が、無数の《中枢装置》に取り囲まれ、全身を《有線ケーブル》が突き刺さって繋がれていたそうだ。
身体は機械と一部と同化して、養分を生気共々吸収されたために、ミイラのように痩せ細り、管が食い込んで血液がまともに流れず、皮膚は灰色、死体のようだったという。
「……もうリリーナから全部聞いてるよ! 震え上がったぜ……!
アレは1人の人間を《ギルソード》に無理矢理取り込んで、そのまま機械の動力源にしちまった挙げ句、死ぬまで生き殺しにするんだろ……!?
信じられねぇよ……! でもあん時と同型の《それ》ってことは、同じ『被害者』が中で犠牲になってるってことだろ……!?」
「……あぁそうだ……! だからアイツは、それを目の当たりにしたときにショックを受けて、止めを刺すのを躊躇って殺されかけた……!
けどユウキ、奴の《動力源》にされた以上、どの道人命は助からない! ……もう……! どうしようもないな……!」
「分かってるよ……! 教えてくれてサンキューな! ………これでもう……心の準備はできたぜ! ここは頼むぜキルト……! 俺は彼を……救ってくる……!」
ユウキはそう言って、一度深い深呼吸で神像の調子を整えた。
「……エネルギー充填100%ォ!! テメェらは終わりだァ!! 骨も残さず消し飛びやがれぇェェェェ!!!」
ヴィザロⅡの絶叫と共に、極限までエネルギーを蓄積した100門の《ビーム砲》は熱源を解き放つ。
狙われた彼等は容赦なく、嵐の如き大火力の脅威に晒される。
「……何も焦りはしないさ! ユウキの言う通り、相性が悪すぎるんだよ……!
『貴様の《大巨人》が、俺の《愛銃》に対して』って意味でなァ!!」
熱源体の嵐雨が2人の頭上に直撃する寸前、キルトは《熱炎吸収の破壊狙撃銃》の『銃先』を、迎え撃つように天井へと掲げた。
そこから再び姿を現したのは、あの『コウモリ傘』のような、膜状の《ビームの盾》。
しかも、それは『防御』だけを目的としていない。熱源体を《吸収》する、彼の愛銃の《特殊能力》。
「《吸収・高熱粒子の盾》__!!」
それの発動と同時に、100発の《熱源の嵐雨》は、全てが彼の《高熱粒子の盾》へと直撃する。
火力こそ圧倒的であった《ビーム砲撃》だが、やがて、その《盾》に触れて集中するにつれて、その威力がみるみる弱まってしまう。
「なっ……何だ……!? 《高熱粒子の盾》ってヤツか……!? だとしても何故破壊できない!? 威力はこちらが圧倒的に上だろ……!?」
「……諦めろ! 《ギルソード》には、絶対的に相容れない、勝算のない『相性』というのが必ずある……!
だから、そいつの性能や《特殊能力》に頼ったところで勝てはしない! これは〈我が国〉に属する《ギルソード使い》なら誰でも知っていることだ! 素人が!!」
キルトはぴしゃりと言いながら、ふと胸元に表示されていた『空間ディスプレイ』に目をやった。
[エネルギー充填率、300%………400%……500%……]
「フッ……! 充填なら最大で3000%なら余裕だ! 溜め過ぎは、射出時に負荷が掛かるので、あまりよくはないが……!
さて……このシェルターの温度が高くなってきたな……!」
「なっ……温度……だと? それが……どうしたんだ……!?」
余裕を示す口調を叩くが、ヴィザロⅡは焦燥に駆られ戸惑う。
予測不能な事態を目の当たりに、彼の思考は冷静な判断力を削られつつあった。
その直後__
【……シェルター内、温度異常上昇!! シェルター内、温度異常上昇!!
特定危険物発火の恐れあり!
施設の保安状態を維持管理すべく、《バイオ消火液》を散布します!
施設の保安状態を維持管理すべく、《バイオ消火液》を散布します!】
けたたましいサイレン音と共に自動音声が流れると、広く高い天井から、薬品の香りを放つ液体が、豪雨のように降り注ぐ。
それは、そこにいる全ての者達の、髪と体を濡らす。
「つ……冷てぇ……! この液体は……!?」
頬に滴る、やけに冷やされた液体を触り、男は不可解そうに呆然とする。
「あぁそうさ。ここは特定危険物の処理廃棄場だ! しかも軍の〈総本部〉から最も近い地下施設……! そのリスクを承知して完備なセキュリティを施すのは普通だろ__!
この施設は、照明がない代わりに、壁という壁のあらゆる隙間に、『温度感知マイクロセンサー』が埋め込まれている。
室内温度は徹底的に維持されていて、それが60℃に達した途端、どんな状態でも異常警報が鳴り響いて、天井もしくは高所の壁から、大量の《バイオ消火液》を散布される構造だ!
万一、ここでの《ギルソード》を用いた戦闘も想定済みだ!
この液体には《熱源冷却化ナノマシン》という独自に開発された《それ》が混入されている!
摂氏90℃を超える温度の物質を自動で冷却化する性能は折り紙つきでな__!
《ギルソード》の基本リスクは、互いの《それ》で激しく戦闘する際、どちらか一方がもう一方を破壊する時__
エネルギーの膨張もそうだが、構造の異なる《ナノマシン》同士は、拒絶反応を起こして、破損した側のそれが『粒子引火』して爆発を起こすが……!
《熱源冷却化ナノマシン》は、そんな《ナノマシン》による拒絶爆発も、熱を冷やして無効化する代物だ!
見事な防災設備が整っているなぁ。我が国〈新都市マリューレイズ〉は本当に偉大なものだ……!
__分かっただろう? もう貴様の《死の要塞の大巨人》は役に立たない!
蟻地獄に堕ちた獲物同然だな……!
ユウキ……! 後はお前の仕事だぞ……!」
「……っ!?」
ヴィザロⅡは震え上がった。
勝利を確信し、男の罰を確定付けた、そんなキルトの冷徹な目線の先を、男は恐る恐る振り返る……
《大巨人》の頭部に、ユウキは座っていた。
いつの間に……!? などという些細な疑問は、今の彼は持ち合わせていなかった。
『殺意』というべきか。
目の前の獲物を喰わんと、確実に息の根を止めんと決意した、処刑人の如き冷酷残忍なユウキの睨みが、最早ヴィザロⅡの心臓を突き刺しては、その正気を保たせない。
「……ふざけやがって……! 俺はお前達に……止めを刺さねば……ならない……!
我が組織への忠義のために……死んだアクバルⅡの名誉のためにぃぃイィィィィ……!!」
震える声で必死に叫んだヴィザロⅡは、突如両手に出現した真紅色の《ナノマシン》を操り、血に染まったような赤色の《工具》を製造・出現させる。
右手に《巨大レンチ》、左手に《電動》ドライバーがそれぞれ握られている。
これ等2つの道具こそ、彼の能力《融合造形の施工具》の本体の姿。
「うぉおあぁアアアアァァァァ……!!」
彼は、直接その手にかけようと、ユウキへ襲いかかる__
それは本当に、最後の悪あがきだった。
《大巨人》は冷却設備で火力を無効化され、行動を封じられたのだから__
だが、次の瞬間には__
「……あ"ぁ……!! か"ぁぁ"……!!」
ヴィザロⅡの嗚咽と共に、その両腕と鮮血は宙を舞った。
ユウキが振るった《高速射撃の剣》の高速斬撃によって、誰の目にも留まることなく、無力にも、無情にも、彼の血は刃の錆となって、呆気なく散っていった__
「止めを刺す……? それはこっちの台詞だ! この大量殺戮者……!
接近戦や剣術で俺に勝てるなんざ思うな……!!
ここで殉職した隊長達の名誉のためだ……! 地獄の招待状をきっちり渡すから覚悟しろよ……!!」
怒り叫ぶユウキの左手は、すでに《高速射撃の剣》が追加で3本、計4本が、巨大な鉤爪のように指に握られていた。
エネルギーを蓄え、稲妻を発した4つの《剣》は、握られたユウキのその手と共に、そのままヴィザロⅡの頭上へと振り上げられる。
「なっ……!? あァ………助……け……!!」
「_______悪夢魔の裂く鉤爪!!!」
その手から放たれた波動の斬撃は、天竜の爪に裂かれるが如く、《死の要塞の大巨人R》の身体を、原型も留めず引き裂いた。
頭部を、胴体を、四肢を、中に取り込まれた《培養の人間》までを……
斬り裂かれ崩れゆく《巨人》の肉塊__
血を吹き出し断末魔を轟かすヴィザロⅡ__
それ等は共に、50m下のコンクリート床へと落下し、バラバラに散りばめられた。




