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新科学怪機≪ギルソード≫   作者: Tassy
3.〈新都市マリューレイズ〉と武装組織の逆襲 編
57/105

第23章 乱戦乱舞、《ギルソード使い》(1)


◇◇◇◇◇◇




____その頃、中心街南部に位置する〈マリューレイズ軍立赤十字病院〉では……




「……ルフィール? リリーナの具合は……どんな感じ……?」




 一時的に館内と周辺の偵察に出掛けていたヴィクトリアだったが、彼女の容態が気がかりで、病室へ戻ってきた。




「……安心なさい。少し落ち着いたから、今はぐっすり眠っているわ。

 全身の包帯もさっき交換してもらったから、このまま寝かせてあげましょう……?」




 患者用ベッドの隣で腰掛けていたルフィールは、冷静な態度で、すやすやと眠るリリーナの頭を撫でながらそう言った。



 ヴィクトリアは余程心配したのか「はぁ〜、よかったぁ……」と、安堵のため息を漏らす。




「……それよりも、他の入院患者の避難はどうなのよ? 周辺の住民には、軍の上層部が先に避難指示を出したって聞いたけど……?」




「あぁ……そうそう……! 勿論順調よ! さっきのリリーナの指示通りに、最上階の患者から順番に、病院真下の〈軍事用対核地下シェルター〉へ降りてもらって、もう直に1階の患者全員の避難が完了するところ!


 全患者の避難が終わったところで、最後にリリーナを地下へ移送する。ここまでは手筈通りだと思うけど……問題は……!」

 




「えぇ、そこは皆まで言うな……よ。外の景色を見れば分かることだから……!」




 ルフィールは徐に席を立って窓辺に赴き、閉められていたカーテンを微かに開けて、下の景観を覗き込んだ。




 武装した集団が、病院周辺を取り囲んでいる__



 火器、防具、刃物を一式備わった彼等の装備は、極めて豊富かつ厳重だ。


 その格好は、そこらの弱小テロ集団とは程遠く、旧先進国の特殊強襲部隊を名乗っていても何ら不思議ではない。



 しかも、辺りを見渡せば、向かいのビルの目立たぬ窓辺、病院入口に近い路地の中庭等には、すでに各8〜15人程度の強襲要員が数十箇所に渡って布陣されている。



 つい先程まで、ビルの屋上から覗いた少女以外、人影は無かったというのに__


 この短時間で、敵の連中は用意周到に相応の大人数と戦力を揃えているという事は、彼等が以前より念入りに計画が進行していた証明だ。


 


「……これは、嵐の乱戦になりそうねぇ……! 雑魚の始末は私達には容易い……! でも最大の問題は、リリーナを狙う暗殺者の毒牙から、警戒を解かずに戦えるかどうか……!」




 ルフィールが窓辺を目に、しばらくしかめっ面で考え込んでいると、ヴィクトリアは何も悩まないかのように、再び病室を出ようと、再び出口のドアに手をかけた。




「……ちょっと、また見回りにでも行くの? もう敵の位置見えてるわよ……?」




「……ねぇルフィール? 今、乱戦になるって言ったわよねぇ? 連中は確かに用意周到で挑んでるけど、エスパーみたいに刻一刻の変化なんて予知できてるのかしら?


 例えば、リリーナの傍には、すでに《ギルソード使い》が守りに徹していて、かつ乱戦が()()な護衛が配置していたらぁ……?」




「……っ!? アンタまさか……!?」




 ヴィクトリアの思考を察した刹那、ルフィールの視界の右端を、何かの物体が浮遊する。




 ふと気づいて目をやれば……




 《機関銃(マシンガン)》が、《翼》を生やして飛んでいる__




 だが最早異様な光景ではない、これはヴィクトリアの所有する《ギルソード》だ。



宙を飛ぶ《翼の機関銃》、その形状は旧時代の『H&K MP5』に酷似しているが、色は鋼鉄の黒や銀ではない。彼女の鮮やかな髪色と同じ『炎色』の輝きを帯びている。

 


 さらに、それは単体ではない。いつの間にか、同型の《翼の機関銃》が2丁3丁と出現しては、即座にヴィクトリアの周囲に集結し、まるで親に群がる小鳥の如く、彼女の周囲を自由に飛び交う。




「……先陣切って特攻するつもり……!? 気が早いわ……!? もう少し敵の様子を探って……!」




「……お断りよ! 私には向いてないわ! 友人の命が懸かっているなら尚更引けない……!


 それに、私のこの《銃撃連隊の(ブレッドファミリア)機関銃(・マシンガンズ)》は敵地への強襲が得意分野なのよ!!


 アイツ等に教えてあげるわ……! 私達〈グランヅェスト学園〉生徒は、鉄火場叩き上げの実力者揃いだってことをねぇ……!!」





 ルフィールの制止を振り切って、ヴィクトリアは宙を舞う《翼の機関銃》と共に、リリーナの病室を後にした__





◇◇◇◇◇




〈新都市マリューレイズ〉地下40mに位置する、水道総合処理・貯水施設___



 ユウキとキルトは、今回のテロ事件の首謀者フランツ=ロエスレルと、その部下であるクローン兵士ヴィザロⅡの両者と対峙していた。




「……ほう? 俺の首を取るなら取ってみろ!! ……とでも言いたいが、生憎だが我々は遊んでる暇は無いのでなァ……!


 それに、非力な《非ギルソード使い》の俺は、まともにあのガキ共には歯が立たない!


 なので後退して別の抜け道を行くとしよう。後処理は任せたぞ? ヴィザロⅡ……!」





 ロエスレルはそう言うと、ユウキ達に背を向けて、元来た道を1人戻り歩こうとする。




「何1人で逃げようとしてんだ!? テメェ……!!」



 怒るユウキが追おうとした、次の瞬間__




【……ドゥン!!】



 

 __と、1つの銃声が轟くと共に、ユウキの右肩から鮮血が吹き出す。



 背後から撃ち抜かれたのだ__




「あぁ"っ………ぐっ………!」




「ユウキ…………!!」




 即座に彼を案じたキルトは、どこから撃たれたのか、振り返って銃声の先を目で追った。すると……




「………味方が………撃ったのか……?」




「……は……はぁ? 何言ってんだ……!? 背後に味方は……!」




 どくどくと血が流れる肩を引きつりながら、その方を見やった。




 その瞬間、ユウキは目を見開いた__




「隊……長……!?」




 そこには、兵器と化した犬型ロボットに殺されたはずの部隊隊長が、何故か横たえた身体の右腕だけを上げて、拳銃を持ち構えている。



 つい先程、確かにユウキは彼の死亡を認識した。


 

 鋭い牙で、顔面を頭蓋骨ごと食い破られ、脈も意識もなかった。なのに……





「オイ! なぜユウキを撃った!? 理由を言え! 聞こえているのか!? ……何だ!? 聞こえてないのか……? 意識はないのか……?」




「やめろキルト……! 彼はさっき俺の目の前で殺されたんだ! 生きてるはずがない……! ってことは………!!」




 導き出す答えは1つしかない。


 死体が操られている__



 《鉤爪のテディベア》や《人食いアイボ》と同じ、物のように、生きていた人の命だというのに、踏み躙られ、身勝手に弄ばれている。その生命を愚弄するように__





「………ヴィザロⅡ……!! あの野郎!!!」




 迅速に全てを理解し、激昂したユウキは、その正面に立つ男、ヴィザロⅡに怒りの眼光を投げ飛ばした。




 男は、笑っていた__




「……察しがいいのは面白いぜぇ? ユウキ=アラストル君よォ〜〜?



 私の《融合造形の(コンバインモールド・)施工具(ドールズ)typeR(タイプリターン)》は、全ての物体に《ギルソード化》の改造を施すことができる……!



それは何も玩具やガラクタに限った話じゃない。このように生物の死骸だって《改造》して『兵器』に変えられる! 生きた人間や動物だって同じだ!!


 例えば、戦地で捉えた敵兵士やその亡骸を勝手に《改造》して、『同士討ち』や『騙し討ち』をさせる事も私の《能力》では容易いのさっ!!


 彼の死は無駄じゃない! 我々が意義のあるように役立たせてやる!


 彼だけじゃないよ? 周りの者も全員なァ!!」





 邪気と狂気が形相から満ちるヴィザロⅡの言葉と共に、周囲からカタカタと、歪で奇怪な音がどよめき出す。

 


 本能的に危機を察知したユウキとキルトは、即座に周囲の警戒すべく目を配る。




「「………………!?」」




 無情にも、地獄絵図は現実の光景と化していた。




 虐殺された作業員達の遺体が、次々に起き上がっていく__




「う……嘘だろ……!? 殺された人達が……これも奴の《ギルソード》の能力なのか……?」




 キルトは、現実だけでなく倫理や道徳からも外した現象に、ひたすら驚愕し目を疑う。




 手足や首、部位の所々を損失させた血塗れの身体。いや肉塊__




 だが、そこには"ナノマシン"で形成された《強化改造武装》が、死体の背中や奪われた肢体の断面に、無理矢理に固定され、繋がれたように装着されている。



 

《クレイモア状の剣》《伐採用チェンソー》《鎖鉄球》から、《対物機関銃》《小型ミサイル弾頭》、

 さらには特攻人員としてなのか、全身に《大型手榴弾》を巻き付けた死体まで見られる。




 最早、故人の遺体が兵器の部品として扱われている。彼等の人徳など、配慮の欠片すら無い。




 

「……ふざけんなよ? クソッ……!! 何が有意義に役立たせるだよ……!!


 どこまで人命の尊厳を踏み躙れば気が済むんだァ!! テメェの《ギルソード》はぁァアア!!!」





 その非人道極まる行為に、ユウキは怒りの絶叫を轟かす__





「何とでも言え!! 私は私の忠誠と正義によってこの《能力(ギルソード)》を振るうだけだ!!


 悔しかったら必死こいて、この《死体兵器》の集団から生き延びて見せろ!!


 どうせ無理だろうがなァ! ぶっ殺せよ! お前等ァ!!」




 ヴィザロⅡの狂気猛々しい叫びと共に、近接武装の《死体兵器》達が、《チェーンソー》の電動音を奏で、《クレイモア状の剣》の光沢をギラリと見せつけながら、よろめく足取りで一斉に襲い掛かる。





「接近戦用の武器で! この俺を倒せると思うなよォ!!」





 彼等がこちらへ3歩ほど進んだ刹那、ユウキは瞬時に能力武器(ギルソード)高速射撃の剣(ダーツ・ブレード)》を発動して抜刀し、高速で立ち向かう。



 彼の驚異的な速度と素早さは、《死体兵器(かれら)》のそれを7、8倍をも上回り、彼等の駆る斬撃を可憐に回避しては、バッサバッサと斬り裂いていく__




「待て……! ユウキ! その人達は殉職者だぞ! いくら敵の手に落ちたとはいえ……遺族だっているんだ……! そんなに身体を……!」





 残された者達に引き渡すべく、これ以上の損壊などあってはならない。



そう脳裏に過ったキルトは、咄嗟の罪悪感からユウキに制止を呼びかけてしまう。



 しかし………




「じゃあ手加減しろと言いたいのか……! それが仇になって俺達が死んだらどうする……!?


 ここで無残に殺された人達は、それで報われるのか!!


 誰があの張本人(クソヤロウ)に鉄槌を下すんだ!!

 

 誰が皆の魂を祈ってやれるんだよォ……!!?」



 

 ユウキは静止しなかった。行く手を阻む《死体兵器》達を斬り続けて圧倒していく。



 しかし、その表情には悔しさで歪んでいた。



 死んだ味方の遺体を斬る__



 その自らの行為に対する恥辱と罪悪感が、敵を薙ぎ払うと共に、ユウキの心を追い詰めていく。




 そして、僅か5分足らずで、30体程あった数は残り12体にまで減っていた。



 だが、残っている彼等に装着された装備は近接戦装備ではない。《対物ライフル》等の射撃武装だ。




【……………………!!】




 残りの《死体兵器》達は、歪な機械音を響かせて、武装された《対物ライフル》を、即座にユウキの身体へと照準を定める。



 

「射撃要因か……! 撃つなら撃ってみなよ……!」




 

 ユウキが冷静かつ挑発的に呟くや否や、《それ》の銃口は瞬く間に火を吹いて、銃弾の嵐を炸裂させる。 



 だが、最早ユウキの視覚と洞察力は、その射程距離や回避方法など、すでに相手の攻撃など見切っていた。



 弾丸が弾き飛ばされるコンマ0.5秒前、ユウキは即座に左斜め50cmへと身体を軽やかに傾ける。



 同時に《高速射撃の剣(ダーツ・ブレード)》の剣先を差し向けると、柄に装備された《小型ターボエンジン》を発火させて、《狙撃銃(ライフル)》のように撃ち抜いて、相手を粉砕させた。



 最初の1体を爆散させると共に、2体、3体、同じ方法で撃破を続け、その卓越した手腕によって、《対物ライフル》装備の7体は、次々に消滅へ追いやられていく__




「あぁクソッ!! 俺だって、あまり死体を損壊させたくないってのに……!!」




 やはり犠牲者を悼む葛藤に苦しむユウキだが、残り僅かな《死体兵器》は、無情にも追撃を休めることなどない。


 


 追い打ちをかけるように、《ミサイル弾頭》装備した3体の彼等がユウキを襲う。



 装備弾数6発、計18発の一斉射撃をお見舞いされ、ユウキ目掛けたミサイルの脅威が獣のように喰いかかる。



 だが刹那……




「ユウキ! 下がってろ!」




 キルトの声が響くと共に、背後からミサイルの軌道上にかけて、一閃の《ビーム光線》が放たれる。



 見事にミサイルの斜線上を横切ったため、一斉に射出された18発全ては、瞬時に一閃の高熱源体に機体が触れてしまい、敢え無く爆炎の塵と化した。




「キルト? 今のはキルトか……!?」




 彼の声が聞こえた方角を振り向くと、巨大なライフル銃《熱炎吸収の(バーンジャック・)破壊狙撃銃(バスターライフル)》を構えたキルトが、ユウキの立つ方向へと銃先を向けていた。


 

 たった1発の射撃で、十数に及ぶ数のミサイルを破壊したその技は、選りすぐりの精鋭戦士でも、そう成し得るものではない__




「……相変わらず、お前の射撃は見事な達人技だな! 自尊心の強い俺でも敬意を表するぜ!」




「当然だろ! 学園内では、精密射撃において俺の右で出る者はいないからな……!


 ユウキ! ……それより、ヴィザロⅡはどうした!? どうやら《死体兵器》に気を取られ過ぎていたようだな……!」




「……………アイツか!?」




 キルトの言葉に、ユウキは改めて注意深く辺りを見渡した。



 やはり男の姿は消えている。


 悪い予想通り、逃げられたようだ__



「チッ……! 思った通りのクズ野郎が!《死体兵器》達を盾にして、自分だけは悠々と逃げやがった……!」




「オイ……どうするんだ!? ヴィザロⅡと主犯ロエスレルの双方を取り逃がしてるぞ……!」




 キルトは焦って苛立っているが、一方ユウキは、やはり冷静だった。落ち着いて状況を整理した上、キルトに助言する。




「……焦んなよ! こんな状況だったんだ! どっちか一方を徹底的に追い詰めればいいだろ!?


  ロエスレルの台詞を信じるかは別として、奴は《ギルソード》を持たねぇと言った……!


 普通の人間が単独行動したところで、どうせ上層部から送られた《ギルソード使い》の部隊に玉砕されるのが目に見えている!


 ここはせめて、あの厄介な《能力》を持ったヴィザロⅡを始末するのが先決だろ!


 どの道、ここでやったアイツの所業は絶対に許さねぇ……!


 断罪は必須だな……!!


 ん? あの通路へ繋がってるのは確か……!」





 そう言いながら、ユウキは通路の最奥を指差した。



 そこには、水道処理施設から、更に別の地下施設へ繋がっているであろう通路の入り口があった。



 入口の扉は破壊されて焼け焦げている__



 この施設に繋がる通路は2ヶ所以外に見当たらない。1ヶ所はユウキが扉を壊して突入したそれ。もう1ヶ所が現在ユウキが指差しているそれ。



 見るからに、あの敵2人がこの場を出入りした通路は、またヴィザロⅡが逃げ込んだ先は、後者の通路以外考えられない。




「……あそこの通路は〈戴冠の女王軍(マリー・ルイーズ)総本部〉に達するまで、至る地下施設や回廊に分岐している! かなり複雑な経路が形成されているが……


 どのルートを辿っても必ず通過する施設が1ヶ所あるな……!」




「だよな! そうだと思ったよ! あわよくば、先回りして待ち伏せできるよなァ!?」





「……無論だ! ここから最短距離500m先にある『地下廃棄物処理施設』。


 産業廃棄から排出された危険物質を一時保管、廃棄する所だ。


 〈戴冠の女王軍(マリー・ルイーズ)〉が用心深く監視するのを目的に、最も目の届く範囲に建築してある。つまり、その施設から〈総本部〉へは目と鼻の先!


 念には念を入れて、様々な方面へ分岐する『ダミー通路』を張り巡らせてはいるが、〈総本部〉から最短で繋ぐ『本通路』の距離は400mしかない……!


 つまり、『地下廃棄物処理施設』は、ヴィザロⅡを討つ最終防衛ラインとなる……!


 ついて来い! そこへ着く最短ルートなら、俺がよく知っている……!」





「それは頼りになるぜ! ……とはいえ、まず問題は周囲の彼等だな……!」





 ユウキとキルトの周囲から、残り5体の《死体兵器》がゆらりゆらりと近づいてくる。



 2体は特攻のため《大型手榴弾》を身体中に装着され、《ミサイル弾頭》を装備していた残り3体も、特攻以外に手立て無しと、その体内から【カチッカチッ】と、歪な機械音を静かに響かせている。




「……どうすんだよ! 空中へ逃げるかァ? 俺が大袈裟に刃物振り回してたら、間違いなく爆炎が吹き荒れるぞ……!?」





 ユウキは少々深刻そうな目で呟いていたが、今度は、やけに冷静になっていたのは、キルトだった。




「……ちょうどいい! お前は背後に隠れて身を守ってろ! 俺の《ギルソード》の〘特殊能力〙をここで使用する!!」




「あぁ……! ってはァ!? お前……そいつの能力なんて使ったら……!? 被害者の身体は絶対にタダじゃ済まねぇぞ!!」




「……さっきは容赦しろなんて言って悪かった……! 殉職者の遺体に傷をつけることが怖くてな……!


 俺としたことが、生半可な覚悟だった……!


 だが腹を括ったよ……!


 だが……これは俺達が責任を果たす為……! 被害者の魂を慰める為だ……! 迷っている場合じゃない!


ユウキ! 俺の背後に回れ!!」




「……分かったよ! 頼むぞ! 我等の生徒会長さんよォ……!」




 キルトの指示に従って、ユウキは彼の背後に飛び込んで身を隠した。


 

 刹那、《死体兵器》達は最終手段として、この《大型手榴弾》で彼等を道連れにせんと、威信をかけるように猛突進で駆け込んでくる。

 



「悪く思うな! その貴重な火力は頂いていく!


 俺の愛銃《熱炎吸収の(バーンジャック・)破壊狙撃銃(バスターライフル)》がなァ!!」




 

 キルトが銃口の先を《彼等》に突きつけた。


 刹那__



 地下水道処理施設を、爆炎と暴風の嵐が駆け巡り、一面を劫火と硝煙で覆い尽くした。



 


◇◇◇◇◇◇◇




 地下の『水道処理施設』と『廃棄物処理施設』が直結する緊急連絡通路____




 明かりの灯1つない暗闇の回廊を、ヴィザロⅡは息を荒げながら、独りでに走り突き進んでいた。





「ハァ……ハァ……クソッ……! 俺が創り上げた《死体ギルソード兵器》を……ああも簡単に再起不能にしやがって……!


 やはり兄さん(プロトタイプ)やアクバルⅡが殺られた理由はこういう事かよ……!


 今でけぇ爆発の音がした……しかし……あの強ぇガキ共があの程度でやられるとは到底思えねぇ……!


 策だ……! 1つでも多く策を企てねぇ限り……俺も彼等と同じ末路を辿る……!」





 走り疲れ、ふらりふらりを千鳥足の歩を進めるヴィザロⅡの足は、ガタガタと震えていた。


 

 ユウキ達と対峙する前、彼等に関する諸々の事前情報を、ロエスレルから聞かされていたのだ。




 友だったアクバルⅡの死に際、中東地方やシチリア島での彼等の記録、リリーナが秘める桁違いの《能力》、ユウキの容赦のない残忍な戦闘術__




 それ等の情報は、ヴィザロⅡにとって脅威的でしかなかった。


 


 彼の所持する能力武器(ギルソード)《《融合造形の(コンバインモールド・)施工具(ドールズ)typeR(タイプリターン)》は、生憎、乱戦や混戦に適した性能ではない。



 それが力を発揮するのは、暗殺、極秘強襲、テロといった暗躍の活動と戦術を得意とする。



 故に、常に相手に勝る一手がなければ劣勢を強いられ、隙を見せれば一環の終わり__



 だが、忠義溢れるヴィザロⅡは、それを承知でも彼等に戦いを挑んだのだ。



 彼を生み出し、そして生かす組織のために__





「…………だが私は幸運だ……! もう切り札は用意している……!


 そのためにまずは連中を誘い込んでやるさ……! 相応しい死に場所へとなァ……!」




 

 暗闇の廊下で、悪意に満ちた笑みを浮かべた直後……



 彼が歩を進める先から、悍ましくけたたましい《怪物》如き獰猛なる唸り声が地下を轟かせた。




【オォ″……ヴァ″ァ″……!! ウ″ゥ″ワ″ァ″ア″ァ″!!】





 それを耳にした瞬間、ヴィザロⅡの目元口元は歪みを極めた__



 まるで薬物に侵されたような表情で、彼はゆっくりと回廊を歩いてゆく__




「準備ができたよ……兄さんの力が蘇った……! 復元できたよ……!


 兄さんの創った《ギルソード》は失敗作だのゴミだのと罵られたが……!


違う……! 兄さんの力は俺を救ってくれる……! そうだろう……?




死の要塞の(デスフォート・)大巨人(ジャイアント)R(レストレーション)》………………!!」


 

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