第22章 激戦の〈マリューレイズ〉(1)
〈登場人物紹介 (追加分) 〉
ルフィール=フロンティア(16歳)
……〈グランヅェスト学園〉の生徒にして寮ではリリーナのルームメイト、同じく彼女とは親密な仲。外見や振る舞いからはミステリアスな雰囲気を放っていて謎が多い。所有する《ギルソード》は後に登場する。
ヴィザロⅡ(?歳)
……外見は30歳前後、中東で倒れたヴィザロ=ディオロールのクローン人間、兄様を慕っており、同じくクローン人間のアクバルⅡとは深き友情が結ばれている。
2人を殺された絶大な怨みを抱いている。
◇◇◇◇◇
「……ーナ? リリーナ……? あらっ、ようやくお目覚めになったわね……」
少女らしき声の呼びかけに、リリーナは重い瞼を開けて目を覚ました__
薄っすらとぼやけた視界で辺りを見渡せば、ここが病室だとすぐに気づく。
左腕には点滴が打たれ、血で汚れきっていた全身の包帯は、全て清潔な新品に取り替えられたようだ。服装も病衣に着替えさせられている。
「……思ったよりも酷い怪我よね。死んだような顔で眠っていたから、もう目覚めないのかと思ったわよ」
目の前には、学園の女子生徒が1人、こちらを覗いていた。
さらりと切り揃った黒髪ロングストレートからは、純白に染められた髪が覗き見えて、黒い瞳の下には、睡眠不足かメイクなのか、淀んだ藍色のクマが目立っている。
服装は漆黒の学生ブレザーと靴下に、赤のミニスカートを靡かせていて、間から垣間見える肌色も血色が悪く見えて、常人よりも大分色素が薄く白いそれ。
非常にミステリアスな雰囲気を放つ、そんな少女だ。
「実に久しぶりね。リリーナ……」
彼女の姿を、リリーナはきょとんとした反応で見上げる。
「……ル……ルフィール……? 来て……くれたの……?」
実は、彼女はリリーナのよく知る人物だ。
女子生徒ルフィール=フロンティアは、〈グランヅェスト学園〉の所属で、ヴィクトリアと同様、リリーナとは仲の良きクラスメイトであり、学生寮でのルームメイトである。
「当然よ、ヴィクトリアからの連絡を受けて、この病院に駆け込んできたわ……
それにしても、病室の外で護衛の人から身体検査と身分証明を強要されたのだけど、厳重な警備体制で頼もしいわね」
少々トーンの低い声で、ルフィールは皮肉を言う。
「あぁ……それは……ごめんね……最初からルフィール達を……疑ってかかってるわけじゃないんだけど……」
「寧ろその方がありがたいでしょ……? 少なくとも、そんな身体のアンタを1人にして平気なあの2人よりか……あら?」
ルフィールの会話を遮るかのように、唐突に病室のドアが、バタンと豪快な音を立てて開く。
「ぜぇ…………はァ…………!」
慌ててドアを開けたのは、汗だくで荒々しい呼吸を繰り返す女子生徒ヴィクトリア=スレイヤーだった。
「ヴィ……ヴィクトリア……?」
「……遅かったじゃない。貴女の情報を聞いて、私の方がいち早く彼女の元に駆けつけたというのに。あと、ここ病院だから、騒音なんて立てたらダメよ……?」
ルフィールの冷製な言葉をよそに、ヴィクトリアは、ぜぇぜぇと呼吸が乱れたまま、開いたドアの前に立ち塞がって、呆然と立ち尽くしていた。
想像に及ばぬ全力疾走の影響と、彼女の容態と身の安否が心底不安だったのか、彼女の顔面はリリーナ以上に蒼白としていて、酷くやつれた病人のようだった。
「あの……リリーナは……どうなの……? 怪我の具合は……?」
「見ての通り意識までは回復したわよ? でも、ちょっと動けば傷が開くし、高熱も全然下がっていないわ……! 絶対安静に変わりはないってトコね……!」
ルフィールがそう言うと、ヴィクトリアは息切れのまま、バタバタと足音を荒立ててベッドに近寄ると、横たわる彼女の身体をじっと見つめる。
「うそ……? ヴィ……ヴィクトリアまで……?」
リリーナがきょとんとした表情で見上げていると、今度はヴィクトリアの下瞼から、ぽろぽろと小粒の涙が零れ落ちてぐずりだした。
「うぅ……リリーナ……! ひぐっ……何があったのか分からないけど……こんなに傷ついて……痛い目にあって……
うぅ……こんなことなら……無理にでも私が付いていけばよかったよぅ……うえぇぇん……」
「え……? あの……ヴィクトリア……落ち着いて………?」
「ひぐっ……! だっで……! リリーナが死んじゃったら……もう私達……生きていけないわよぉ……!」
唐突に情緒が乱れる彼女に、リリーナは困惑と罪悪感に苛まれてしまったが、泣きじゃくる彼女の顔を見ると、リリーナは少し冷静になり、その心に対する感謝と敬意の気持ちが胸に満ち溢れていく。
厚かましく感じても、彼女なりに懸命に自身を案じて、労ってくれている。そんな心優しき思いが、リリーナには強く伝わっていたからだ。
ふとリリーナは、包帯に包まれた左腕をベッドのシーツから出して、涙に濡れるヴィクトリアの頬をそっと撫でながら言った。
「ありがとう……ヴィクトリア……心配かけちゃってごめんね……そうやって……自分をこんなにも思ってくれているルームメイトに恵まれて……私は幸せ者だよね……」
「……もう……! リリーナは常に危なっかしくて……! 放っておけないんだから……」
ヴィクトリアは照れ隠しの文句を言いながら、慌てて涙を拭い取って、少々ぎこちない笑顔をリリーナに見せた。
自身の思いが届いた喜びか、その笑顔は、安堵と親友を思う愛情に満ち溢れたような、暖かなそれだった。
「………そうだ……! 私……追手や尾行が気になって……ねぇ……ヴィクトリア……ルフィール……この病院の周辺に……誰か怪しい人影は……見えなかった……?」
重大な事柄を思い出したリリーナは、表情を深刻なそれにがらりと変えて2人に聞き迫った。
「あぁそうね、まず何から貴女に説明すればいいかしら? 結論から言って状況は最悪…………」
「ルフィール! ちょっと待っ……!」
「……何よ?」
ルフィールが順を追って話そうと口を開くと、即座にヴィクトリアが彼女を睨んで、「しーっ!」と、右手の人差し指を唇に当てる素振りを見せた。
それは、余計な一言で、手負いのリリーナを心配させたり、無茶をさせたりすることを断じて避けたいからだ。
「さ……最……? ……ごめん……よく聞こえなくて……」
「……あぁ大丈夫よリリーナ♪ ルフィールは大げさに悪いような事言ってるけど……
確かに、アンタの心配してる通り、怪しい人影くらいは確認してるけど、なんせここは《ギルソード使い》の学園の学区内だし! うちの学園生徒は強いヤツいっぱいいるし!
それに、ユウキとキルトだって動いてるんだから!
ここは私達に任せてさ! リリーナにお願いする事は、ゆっくり休んで怪我を治すことだよ♪」
不安で塗り潰されたような顔を見せるリリーナだったが、それでも彼女に心配はかけまいと、ヴィクトリアは爽やかな笑顔を絶やさずに、真っ直ぐな視線で彼女を安心させる言葉をかける。
横目に見ていたルフィールは、呆れと諦めの溜め息を1つ吐いて、「まっそういうことよ……」と言いながら、何気なく病室を出ようと、ドアの方へ足を向けた。
「……ありがとう……迷惑かけちゃうけど……みんなの無事を……私は祈ってるから………………」
リリーナはそう言って、少し安堵しながら、徐に窓の景色に目をやった。
刹那、見渡す景観の一部分に、違和感と危機感を覚えたのだ__
「………誰……?」
病院の向かいに建つ高層ビルの屋上から、1人の少女が、こちらを凝視して立ち尽くしている。
その距離は約50m程と近距離だったので、ある訓練で視力を鍛えられていたリリーナには、その姿はっきりと見えていた。
外見は亜麻色ツインテール、蒼く透き通る瞳、スーツ、革靴、スカートを黒染めに一新に統一した漆黒の服装__
自身の目と相手の目は、恐ろしい程に、ぴったりと合わさっている__
偶然か意図的か。だが1つ確信できるのは、あの少女は明らかに通常の一般市民ではないという事だ。
すると、黒服の少女はふと右腕を上に伸ばして、何かを合図するかのように、手首を前後に揺らして手招きの仕草を見せる。
その瞬間、リリーナの背筋には、戦慄の悪寒が走った。
彼女の手招きを合図に、その背後では、まるで軍の特殊部隊の武装を纏った男達が、機関銃や銃剣を構えて1人2人と次々に現れては、屋上から階段で降りていく行動がはっきりと見えた。
終いには、まるでリリーナが見ているのを知っての行動か、その視線を一切逸らすことなく、薄ら笑いを浮かべている。
リリーナは心の奥底で断定した__
彼女達は敵の刺客だ。そしてこの病院を確実に狙っている。危険な状況であると__
「ちょっとリリーナ? また顔色がすごい悪いけど……? 少しでも具合が悪かったら、すぐに看護師を呼ぶからね……!?」
青ざめた顔で外を眺めるリリーナを見たヴィクトリアは、急に容態が悪化したかと思ってしまい、慌てふためいた形相で右往左往し始める。
「いや……具合は今はなんとか……それよりも……今すぐに廊下で見張ってくれている兵隊さん達に伝えて欲しいことがあるの……! あとルフィールにも……!」
するとリリーナは、目つきだけでも、まるで戦士の如く冴えたそれに変えて、ヴィクトリアに言いつけた。
「へ……? どうしたの……?」
「……武装集団らしき人影が見えたの……! ここ一体がどんな事態に陥ってもおかしくない……!
早急に入院患者や職員を避難させて……この区域一帯の人達を守れる戦力を整えて欲しい……そう伝えて!」
◇◇◇◇◇
「ユウキ! 怪しい人影は見えないだろうな!?」
「おうキルト……! 今更この場所でそれを言うなよ! もう軍本部の近くまで来ちまったんだから!」
学園を一度離れて、ユウキとキルトは〈新都市マリューレイズ〉の最も繁栄した、経済関連の商業ビルが建ち並ぶ『中心街』へ足を運んでいた。
2人の目の前には、そのビル群の中で一際高く目立つ、1つの巨大かつ見事に芸術的な建築物が聳え構えている。
その外観は、かつて建造に200年掛かると言われた、旧都市バルセロナの『サグラダ・ファミリア』を時代の技術進化によって見事に再現させなような姿__
だが高度は、地上と空を守る巨大要塞として、万全なる設備が備えられたので、元の建造物から3倍近くにも膨れ上がり、600mとかなり高い__
この建物は軍の総本部として建設されたので、一般人は立ち入り禁止。
何より最大の特徴は、鉄壁の武装設備だ__
外壁を彩る無数の神聖な石像は、防爆の特殊コーティングが施され、強固な防壁となって、この要塞を守り覆っている。
「ようやくここまで来れたか……! この都市の守護の象徴、〈戴冠の女王軍〉総本部になァ……!」
キルトは、ここに到着するまで、相当気を張り詰めていたのか、聳え立つ総本部の門前で、安堵の溜め息をついてしまう。
「全く! ここに来るまで、すでに何回か襲われてるぜ!? 怪我人に無茶させやがって……!」
ユウキの服には、数カ所が赤い血液で汚れている。
学園を離れて以来、敵は自分達の思惑が読まれた故に焦ったのか、何度か狭い路地裏で、黒服の男達が彼等に奇襲を仕掛けていたのだ。
先刻のアクバルⅡの強襲で銃創を負っていたユウキを見て、絶好の機会と思ったのだろうが、拳銃やナイフ等の通常武装では太刀打ちができず、そのため彼に塗られている血は、全て返り血である。
「それで? 軍のお偉いさん方は、今の危機的状況を知ってんのか? 部隊の手配なり避難の誘導なり、適切な対処をしてもらわねぇと……!」
「心配するな。俺が手早く報告と連絡を回しておいた! お前が奇襲を蹴散らしている、その最中の短時間でな!」
「流石だなキルト……! つーか、俺への助太刀は一切考えてなったってワケ……!?」
苦い顔をするユウキに目もくれず、キルトは入口の手前に立つ警備兵に敬礼をしながら話しかけようと近づくと、逆に相手から声をかけてきた。
「おぉ! 先だって本部の上層部より報告を受けておりましたよ。〈グランヅェスト学園〉生徒会長兼理事長、キルト=グランヅェスト殿!」
「どうも、本部前の警戒、お疲れ様です! 改めて状況の詳細のご報告と、先日に奪還した《ギルソード》のご提出のため、参上致しました……!」
キルトは衛兵と握手をしながら挨拶をすると、彼から受けた指示は、予想していたそれとは意外なものであった。
「お2人の件は、重々承知であります。では、警戒態勢は上層部に任せて、《ギルソード》のデータ回収のため、これより地下の〈《ギルソード》開発研究機関〉へとお進み下さい……」
「えっ……!? しかし、今はそのような場合ではありません! ご報告申し上げたはずです……!
〈革新の激戦地〉と名乗る謎の武装組織が、すでにこの国に潜入し、国家機密を組織へ漏洩させていると……!」
「その件に関しては、すでに上層部の大佐から准将、少将、そして最高司令部の中将の方々へ情報は伝わって、対処が行われています!
それを故に、貴方達にはデータ提出のために、地下の研究施設へ案内するよう命令されているのです!」
衛兵はきっぱりと言い切ると、「では、ユウキ様方、ご案内します……」と背を向けて、そのまま総本部のロビーへと歩いて行く。
今度はキルトが、苦虫を噛み潰したような、どこか煮え切らない表情でいると、後ろからユウキが、事態を楽観視するような笑みで、彼の背を叩いた。
「上層部や更に中将クラスの人がそう言ってんだから、俺達はそれに従うだけだろ? 他にやりようはあるの……? ねぇっしょ♪」
そう言うと、ユウキは小さく鼻歌を歌いながら、悠々と衛兵の後に続いて歩いていった。
キルトは未だ納得できなかったが、上層部の命令には従わざるを得ないと腹をくくり、彼等の後を小走りで追った。
同時に不満を漏らすように独り言を、捨て台詞として吐き捨てる。
「……よく言うぜ……! お偉い様の命令に従っとけって……! そういうお前は俺達と違って、中将クラスの司令部と対等に肩を並べる程の、筋金入りの権力者だろーか……!」
◇◇◇◇◇◇
〈新都市マリューレイズ〉の『旧市街』から、地下約70mの地点、地下鉄よりも低いこの場所には、水道の総合処理施設がある。
電気や水道のライフラインに関連する施設は、国土が限られた人工島の国では土地の確保が困難な為、やむを得ず、まとめて地下に収容されている。
ここは浄水場と浄化センターが一体化した施設である。無論、理由は先に述べた通りだ。
本来ならば、本日もこれまで通り何ら変わりなく、浄水施設では大西洋から組み上げた海水を、新バイオ消毒薬で塩分と細菌を死別・離別させ、清潔な上水道が供給される……はずであった。
貯水槽付近で惨状が発生するまでは……
「ひぃぃ……! 何だよ……これ……うぅ……みんな……死んでるじゃねぇかよォ……!」
主任の男は、身に纏った作業服を赤黒い返り血に染め上げては、視界の恐怖に恐れ慄いた。
目の前には、夥しい数の作業員達の惨殺死体が辺り一面に散らばっている。
どの死体も人体の原型を留めていない。まるで対物用の機関銃で蜂の巣にされたようで、肉塊と言っていい程に__
「おぃぃ……! 誰か……生きていねぇのか……うぅ……誰にやられたんだよォ……誰が……!?」
泣き叫び、現実からの逃避を懇願しながらも、男は物を言わない死体を揺さぶって、震える声で意味もなく問いかけ続ける。
一人だけ、微かに息があった。事切れる間際であるが、うめき声を上げながら、瀕死状態で主任の男を見つめていた。
男は恐る恐る近づきながら、その者の様子を伺い、また問いかける。
「何が……起きたんだ……俺の顔を見たら……みんな死んじまって……何が……起きたんだ……」
すると、死にかけた者はうめき声わ震わせ、微かな声で答えようとする。
「あ……あれ……に………やら…れた……! に……人形から……弾が……ぁ"ァ……」
「に……人形? な……何を言って……」
耳を疑いながらも、主任の男は恐る恐る周囲を見渡した。
すると、彼の正面には、綺麗なフランス人形が、可愛らしく腰を据えている。
奇妙な光景だ__
子供の玩具が、このような労働施設に持ち込まれるなど有り得ない__
しかし、状況からして、彼はその人形を放置するわけにはいかなかった。本当にそれが多くの人間を殺戮できたのか、確かめる必要があったからだ。
恐怖に怯えながら、男はゆっくりとフランス人形に近づいて、そっと両手を差し伸ばした。
刹那__
『ア、ナ、タ♪ シ、ヌ、ワ、ヨ♪』
「え……? 今……喋っ……?」
人形が機械音声で喋りだした。男はその怪奇現象に戸惑い硬直する。
__その瞬間、突如人形の衣服が破れ、身体が綺麗な縦真っ二つに別れる。
すると、空っぽの身体の中からは、赤色の光を放つ粒子が大量に発生する。あの破壊兵器を構成する《ナノマシン》だ。
「ひぃぃ……! うぇあぁあぁ……! 《ギルソード》だぁァ……! 《ギルソード使い》の人殺し……!」
怯え竦みながら、彼はその正体を即座に理解した。知らないはずがなかったのだ。この都市に戸籍を置く者は、その兵器の特徴、そして恐ろしさを誰もが熟知していた。
__だが、理解したからといって、この男が救われることはなかった。すでに手遅れだったからだ。
人形の身体を引き裂いて現れた赤色の《ナノマシン》は、瞬く間に集団で密集すると、ある《銃》のような形状がそこに象られる。
それは、《対物ライフル》__
ここで働いていた作業員達を、無抵抗の者達を、大量に虐殺したそれ__
「助け……〈戴冠の女王軍〉……!」
__男が最後に絶叫した瞬間、人形の身体から飛び出した《対物ライフル》の銃弾が、絶大な轟音を響かせて炸裂され、無残にその頭部は八方に飛び散った。
「《融合造形の施工具TypeCustom》……この威力! やはり兄様の力はなんと素晴らしい……!」
貯水槽の物陰から、黒スーツ服の男性が、もう1人現れる__
年齢は30歳前後、痩せ型で細長い顎の輪郭、背丈と足も非常に永い。背丈は約190cm前後__
その時、中東で実際に対峙したリリーナは、その者の顔をよく認識していなかったが、顎の輪郭と細長く高い背丈、その他顔面外見等の特徴は、その場に居合わせたあの者の特徴に酷似していた。
「……では使命に取り掛かりましょう……!
本心は我が兄を無残な死に追いやったリリーナ=フェルメールを真っ先に惨殺したいところだが……!
偉大なる幹部フランツ=ロエスレル様のご命令だ……! 仰せになった標的を先に殺さねばなるまい……!
この水道施設は〈戴冠の女王軍〉総本部への最短の近道……寝首を掻くのは時間の問題……!
まずはあの紫髪のクソガキ、ユウキ=アラストルを討伐としましょうか……!
このクローン兵士第2号、ヴィザロⅡ(ツヴァイ)……! 偉大なる幹部様に捧ぐ至高の働きを見せてご覧に入れましょう……!」
ヴィザロⅡ、自らをそう名乗る男は、ご馳走を前にした獣の如く歪んだ微笑を浮かべ、地下水路に沿う暗闇の道を歩いて消えていった__




