第17章 戦火に滴る女神の涙(1)
用語説明(追加分)
《死の要塞の大巨人 (デスフォート・ジャイアント)》……〈旧政府軍〉将軍、グスタフ=アッディーン少将が取り込まれた巨人の《ギルソード》。《ナノマシン》の調整が不完全な失敗作。
追加説明
※……《ギルソード》は基本、手持ちの武器が破損した場合、追加で何度も《ナノマシン》で武器を造り直すことができる。数は無限。
《剣型ギルソード》に例えるなら、1本、2本、3本と、何本も発動し実体化させ、制限なく量産することができる。
「……使用者の命令だ!《死の要塞の大巨人》……!
俺と共に来い……!理想の国の建国を邪魔する愚者を、直接この手で裁きに行くぞ……!」
静かな怒りに震えるヴィザロの、凍てついたような声が放たれると共に、足元に潜む《怪物》は、それに同調するかように、猛々しい唸りを轟かせる。
【………オ″ォ…!!…………!!オ″ォ″オォ″……ヴァ″ァ″……!!】
「よ~し……良い子だ……! こっちへ来い…! とびっきりのご馳走を用意してやる……!」
ヴィザロはそう言って、硝煙が立ち上る死の方角へゆっくりと歩み出すと、地の中の《怪物》は再び唸って共に動き出し、彼の足跡を追って地の亀裂をゆっくりと走らせた。
◇◇◇◇◇◇
「っ………………!?」
『……どうしたリリーナ? いきなり顔を蒼くして硬直しやがって……!』
「そんな……!? まさかっ………!?」
『……リリーナ!!? 一体どうしたって言うんだ!?』
あちこちで劫火の焚かれた惨状跡の中心で、リリーナは《粒子器発動の覚醒瞳》の解除された緋色の瞳を大きく見開いて、呆然と硝煙の先を眺めていた。
《ナノマシン》の通信機能で監視していた仲間は、特にその異変を気に止めることないまま、リリーナはその細脚を重々しく前へ動かし、若干身体を震わせながら、灰色の景色の狭間をかき分けるように歩き出す。
『どうしたリリーナ……!? 敵軍はもう全滅したんじゃないのか? 何を慌てている……!』
「違う……!〈旧政府軍〉と戦ってた時……遠くで嫌なものが見えた……密集した《ナノマシン》が地面に埋められてて……あれが結合して《ギルソード》に実体化したら……とてつもなく巨大な《もの》になる……!!」
『巨大な《もの》ォ!? 何だその抽象的な言い方は!? ベースになった既存兵器は!? 形は!? もっと正確な情報は無いのかよ!?』
「そんなこと言われたって……! 私の《瞳》が遠くから解析できるのは《ナノマシン》の位置や特性だけ……!《ギルソード》の正体までは大まかな予想しかできないよ……! 実物を見ない限り正確には分からな…………っ!!?」
リリーナは途端に足を止めると、目線を荒野の大地に向けてぴくりとも動かなくなる。
『何だ!? ……今度はどうした……?』
「静かにして……!!」
彼女は全神経を研ぎ澄ませるように、意識を目と耳に集中させ、まるで獣を足音を探る狩人の如く、その場で膝を突いてしゃがみ込む。
「……高速で移動してる……! 地面の下を……!」
『地中ってことか……? オイオイ……! お前の目には一体何が映って……!』
「っ!? まずい……!!」
彼女が激しく叫んだ刹那、突如として一筋の《ビーム光線》が大地を焼き貫いて放たれ、目にも止まらぬ速度で彼女を狙撃する。
「ぐっ………!! うぅ………!!」
脅威の瞬発力で、後方へ急速回避し、それの直撃を免れる。
しかし、瞬時に顔面を守ろうと、右腕を前に被せてしまったため、麻布のマントから露出したそれは、グレー色の長袖ブレザーごと焼き削られ、彼女の赤い鮮血が宙に舞い上がる__
『おい無事か!? モニターに血が見えたぞ!?』
「平気だよ……!! ただの掠り傷だから……!!」
リリーナは少々枯れたような声で、赤い血が滲み出る右腕を左手で押さえながら叫ぶ__
『何だ今の《ビーム砲》は……!? 速すぎて分からなかったぞ……!!』
「……別にっ……? ただ私が油断しただけ……! これで《もの》の正体が判明した……! これは……最悪……!」
『おい……!? 一体何なんだそれは……!?』
相手の質問攻めに答える間はなかった。
突如、足元に小さな地割れが起きたかと思うと、急速に半径20m周囲を深いヒビで覆い尽くし、震度6相当の地震の如く、大きく地面が揺さぶられる。
【オ″ォ″オォ″……ヴァ″ァ″……!! ウ″ゥ″ワ″ァ″ア″ァ″ァ″!!】
「……!? まずい……! 《創造する脳操槍剣》……!! 空中浮遊!!」
足元が地割れによって崩れ落ちる寸前、彼女は《創造する脳操槍剣》を身体の正面に発動させると、魔法の箒のようにそれに跨がって、空中へと緊急避難する。
だが刹那__
まるで地中のマントルが突如地上へ吹き出すかのように、地割れで粉々に破砕された大地が、絶大な衝撃音と共に宙へ舞い上がり、ついに地中で身を潜めていた巨大な《もの》が姿を現す__
「……なっ……何っ……!!これ……!?」
それを目の当たりにした瞬間、リリーナは、大きく見開いた目と開いた口が塞がらなかった。
地上約30mの巨体、赤紫の《ナノマシン》の光に包まれた全身__
その内側から微かに垣間見える身体には、《ナノマシン》の結合によって構成された《電気ケーブル》、《圧力ホース》の集合体と幾多の《制御装置》__
鉤爪のような攻撃型の《触手》、そして怪物の被り物のような禍々しい《鎧》__
人が創り出したとは思えぬ程の禍々しき外観は、まるで神話に登場する『クトゥルフ神』に酷似したそれ__
「……最悪だ……!! 私の《覚醒瞳》で解析した《ナノマシン》の動きや特性から……嫌や予感はしていたけれど……!
……っ!!?」
彼女が少し呆気に取られていた途端、今度は背後から、別の《ビーム光線》が、自身の頭を目掛けて射出されている事に気づく。
即座に反応したリリーナは、瞬時に左手でもう1本、《創造する脳操槍剣》を※追加発動・召喚させ、その《槍》の先端で《ビーム光線》その物を斬り払う__
歴戦の覇者でさえ習得することのない神業を、彼女は堂々と発揮したのだ__
「なるほど、よく避けられましたねぇ。地中からの一撃の回避といい、さらに私の放った《ビーム》を斬り払って回避するとは、いくら《ギルソード使い》とはいえ、そんなこと容易に行える人間はおりませんよ?」
《ビーム光線》の射出された背後に振り返れば、黒いビジネススーツを纏った痩せ型の男性ヴィザロ=ディオロールが、妙な微笑を浮かべて仁王立ちしていた。
右手と左手には、《巨大な電動ドライバー》と《巨大なレンチ》を握りしめている。
交渉を生業としたようなビジネス服の容姿には、あまりにも似合わない__
「なるほど~?《ブレイン=ギルソード使い》ですかぁ? 正直私としては、貴女相手には、どうしてもハンデを感じますなぁ?
見事な回避技を披露されたとはいえ、私達がどこに隠れても、貴女の《覚醒瞳》には、身体に纏った《ナノマシン》が見えていたのでしょう? 全く平等性に欠けるものだ!!」
ヴィザロは、左手に握った真っ赤な《巨大レンチ》をコンコンと左肩に担いで当てながら、不満げにリリーナへ文句を投げた。
「……そうですね! 正直、貴方の姿も一緒に見えていましたよ?
ですが、あの《怪物》に気を取られたので、あまり眼中にありませんでした!!」
リリーナは、ヴィザロに対し敵意を丸出しにして、彼を挑発するような口調で応えてやる。
「ほーう……? 随分と舐めてくれたものだ……!〈旧政府軍〉の総指揮官にして、我が偉大なる組織〈革新の激戦地〉の作戦行動隊長であるこのヴィザロ=ディオロールをォ……!」
気高き誇りが傷ついたヴィザロは、その憤怒を剥き出しにリリーナ威嚇する。
しかし、そんな彼の様子など構うことなく、リリーナは、破壊兵器《死の要塞の大巨人》の胴体の心臓部をじっと見続ける。
「……………何だろう? ………中枢部に違和感が……?」
『……あっ!? 何か言ったかリリーナ……!?』
「……いや何でもない!! 自分で調べてみる……!!」
何かが脳裏に引っかかるような感触を覚えるも、リリーナは即座に首を横に振って、目の前の《怪物》との対決に専念する。
「忌々しいガキを殺せ!!《死の要塞の大巨人》ォ!!」
【オ″ォ!!……ア″ァ″ア″ァ″……!!】
ヴィザロの怒りに同調するが如く、死の咆哮を大地に轟かせた《大巨人》は、そのままリリーナの方に、殺意を露わにするように顔を向ける。
同時に、彼の《口元》から、閃光のような白い光を覗かせる。
それも白く強すぎて、直視できない程のそれ__
「……っ!? さっきの《ビーム砲》!!」
彼女が呟いた刹那、白く強い光のそれは、瞬き程の速度で彼女を目掛け放たれる。
流星の如く空間を迸った《ビーム砲》は、先程まで彼女が魔女の箒のように跨がっていた《創造する脳操槍剣》を一瞬で焼き払う。
「……っ!? やったか……!?」
《ビーム砲》を射出した先には、《創造する脳操槍剣》共々、少女リリーナの姿さえ見当たらない。同時に焼き払ったのだろうか。
「残念だね……!! 同じ手は通用しないよ……!!」
「何ィ……!?」
否、リリーナの声は、別の方角から聞こえた。
慌ててヴィザロがそちらに目をやれば、《ビーム砲》を瞬時に回避リリーナは、既に《大巨人》の右肩に飛び乗っており、そのまま彼の首筋を目掛けて、追加発動した《創造する脳操槍剣》を片手に駆け出していく。
「………《脳操変形》!!」
彼女の絶叫に応えて、《創造する脳操槍剣》の先端である《ツツジの刃》は再び《ナノマシン》の光に包まれて、別形態に《変形》する。
すると、今度の形態は《ビーム砲》でも《大剣》でもない。
それは長く鋭き《大鎌》の形態__
まるで死神の担ぐような、三日月を2つに分断したような、または、花の茎から長く垂れた葉のような形態に例えるべきか。
紅色に煌めく、妖しくも美しい《それ》__
「《形態:大鎌″オリヅルラン″》!!」
首筋を目掛けて、リリーナは巨大な《紅の大鎌》を横一文字に振り払い、彼の頭部を分断させる。
《大巨人》の頭部は、垂れ下がった髭のような《電気ケーブル》や《圧力ホース》と共に、零れるように地面へと崩れ落ち、異なる《ナノマシン》同士の拒否反応によって、落ちた地上で炎を吹いて爆散した。
『やったか!? リリーナ……!!』
「ダメ……まだ終わってな………!! ……………………っ!!?」
不意に、切り落とした首の断面が見えた瞬間、リリーナは目を見開いて絶句した。
「…………うそっ………!? ……人が……………取り込まれて………!?」
〈最近定番の会話コーナー〉
リリーナ「ちょ…!ユウキ追いついて…!」
ユウキ「もう許さんぞクソ作者ァ!!前の後1話で俺を出す約束はどぅしたぁ!!相変わらず口だけでテメェ……!!ぉお!?」
作者「わかんねぇ……とりあえず……次の話で登場予定だから……本当はリリーナ編も今回で終わり予定だったのに……」
キルト「とりあえず読者様方……本当に申し訳ないが、次の話で物語が動くそうなので……飽きないで見てやってもらえるとありがたいです……(深々とお辞儀)」




