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新科学怪機≪ギルソード≫   作者: Tassy
2. 少女リリーナと戦乱の女兵士 編
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第14章 悪行の狂騒〈下〉(1)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「……クソッタレ共がァ!! ……何でどいつもこいつも…! この世界を変革する《力》の素晴らしさと偉大さに気づこうとしない……!!」




 怒りの皺を顔中に掘り尽くしたイザールは、コンクリート壁の残骸に靴の足裏を叩きつける。



 〈自由軍〉の拠点とする地下豪から1.5kmと離れた地点、比較的ビルやマンションの残骸と瓦礫が集中する目立たないこの場に、イザールと漆黒の少女ディズレーリは身を潜めて顔を合わせていた。




「ふ~ん、あっさり却下されちゃったの? アイツ本当に通りのフヌケ野郎だったのね~♪


人道的にとか、人の人生がとか、そんな余計な事考えて、今目の前で苦しんでる地下住民を放置するとか、指導者の風上にも置けない。犬のクソ以下だわ♪」





 焼け焦げて崩れた煉瓦壁の瓦礫に腰を据えるディズレーリは、お気楽に言いながら、マニキュアで爪のネイルを弄っている。





「……ラティファは上官である俺の命令を遂行しねぇ……! あろう事か司令官アフメドまでもが……直々に俺に計画を中止しろと迫りやがった……!!


おかしいだろ……!!『我等国民の等しき自由』を誰よりも目指して戦ってきた指導者が……!!


たかが《ギルソード》なんて兵器にビクついて……!その理想から最も遠ざかるような行動を取ってやがる……!!」





「……でも〈自由軍〉の連中って、戦力も生活環境も相当追い詰められてるんでしょ?


 このまま皆殺しにされるか、狭く光のない空間で命を終えるかの選択肢に比べたら、《ギルソード》に身を捧げて、1人2人の人生くらい犠牲にするなんてワケないこと……♪

 

  実行も時間の問題……♪


 あ~でも…あの女の《眼》と監視がある以上は、下手に《ギルソード》使って事態がややこしくなるのはマズいわよね~?」





 ディズレーリはそう言うと、座っていた煉瓦壁から腰を上げ、ゆっくりとイザールへ近づく。



そして、親に甘える幼子のように、ゆっくりと彼の両肩に手を、その背中には胸と腹をくっつける。





「どうする~?アンタの思うとおりにしていいよ~♪ 私達が直々に説得して親身になるか、威圧を掛けて脅すかで相手の反応は……」




「いや……いい……」




 イザールはディズレーリの言葉を遮った。皺の寄った顔は血相を変えることなく、即座に次の言葉を口にした。



 その言葉を口にすることは、まずディズレーリは予想もしていなかった。





「暗殺だな! ラティファかアフメドのどちらか一方を、あの女と一緒に暗殺してくれ!


それを〈旧政府軍〉がやったことするんだ! 名案だろ……?」




「へ?」





 ディズレーリは、身体がもたれ掛かっていた彼の背中から、思わず身を離した。思うもよらない衝撃的な言葉に耳を疑う。





「暗殺ぅ?アンタ今殺すって言ったわよねえ?


いくら意見や考えが合わないとはいえ、共に死地をくぐり抜けてきた仲間なんじゃない?


 いいのぉ? そんなことして___?」





「仲間ァ? ……まさか! 俺は昔からずっーと連中は嫌いだった……!


 理想論や説教ばっか説きやがって戦果はださねぇ……!


 何よりも早く現状を変える意志や力を持ってねぇ……!


 その癖、現実を見ねぇで綺麗事にばかり逃げやがる! たがら今こうして〈旧政府軍〉に追いつめられてんだよ!


 だがどうだ? もし2人のうちどちらかが倒れれば、いい加減地下豪の腰抜け共も目が覚めるだろう……?


〈旧政府軍〉を虐殺せねばと、奴等への憎悪と殺意に変わるだろう!そうなれば間違い無く《ギルソード》は使われる……!


あの兵器さあれば、この現状どころか……世界の理まで変えられるんだぁ……! っははははははははァ……!!」





 イザールの顔は、まるで彼とは違うそれに変貌していた。徐々に目と口元を恐ろしいほどに歪ませ、まるで獣の牙のような歯を微笑みと共にさらしながら、彼は高らかに笑う。





「ねぇ、アンタってさぁ?《ギルソード》を何を目的として使おうとしてんの?〈


 旧政府軍〉を殲滅するため?〈自由軍〉として避難民を守るため? それとも、自分のため……?」





 ディズレーリは、冷静な瞳で疑問を投げかける。するとイザールは、笑いをぴたりと止めて、途端に物静かになって何かを考え出す。




「目的……か。最初は殺された身内の報復のために戦っていた……!


 だが、やがて虚しさに堪えながら、俺は命の危険に晒されていた。


 あの傲慢な連中に家族を奪われ、狭くて暗い地下空間に追いやられ、食べ物の確保もままならないまま、〈自由軍〉の無能共と無駄な足掻きを続ける始末……!



 もうこの状況に希望なんざ見いだせねぇんだ!!いつまで不幸のままでいりゃいいんだよ!!


……けどよぉ! そこに現れたのがアンタだったんだ!夕べにあの《ギルソード》が送られた時は高揚に満ちていた……!


ようやく俺の求めていた希望の活路が見いだせたと思ったんだ…!


 だがどうだ!?


 そんな救済のうつわがありながら、馬鹿共はすがろうとしねぇ!! 俺は思ったよ!! 馬鹿や臆病者にどんな神器を渡しても腐らせるだけだ!!


ならば、もう連中が殺されようが暗闇で朽ち果てようが構いやしねぇ!!


 この途方もない地獄を……連中の代わりにアンタ達が変えてくれ!!


 アンタ達がこの世界を支配してくれぇ!!」





 イザールはディズレーリの足元にひれ伏して、歪んだ笑みで口元を唾で汚しながら、すがるように彼女の裸足の足首を掴んでいた。



 彼の歪な欲望に満ちた酷い表情は他の誰かに初めてみせるそれは、ラティファ達〈自由軍〉や避難民達の一体誰が知りうるのだろうか。





「ありがと♪ アンタの意外な本音を教えてくれて、まぁ一度思うとおりに働きかけてみるわよ♪


最悪アンタが使ってこの一帯を滅茶苦茶にする手段だってあ・る・し♪ 任しといて~♪」





 ディズレーリはそう言って、震えた声で笑うイザールの掴まれた足首を振りほどいて、その場を立ち去った。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「全ての支度は整った……! 今日は素晴らしい日だよヴィザロ君……! 歴史に名を残す前夜祭なのだからなァ……!」 





 〈旧政府軍〉最高指導者グスタフ=アッディーン少将が、ヴィザロに呼ばれて、極少人数の士官と共に新アゼム宮殿の地下軍事要塞に赴いていた。





「わざわざお呼び立てをしてしまい申し訳ございません。グスタフ=アッディーン少将殿……!」


 



地下要塞の最深部にて待機していたヴィザロが、グスタフの顔を見るなり、主人を敬う使用人のように頭を下げる。



 

「それよりも……! 例の《モノ》は用意したんだろうなぁ! 何って? 私へのプレゼントに決まってるだろう!」




「勿論にございます……! ほら、ここに……!」




 ヴィザロの背後には、1台の《超兵器の聖母体(ギルソードマザー)》が用意されていた。



 だが、通常それとは違って、《ナノマシン》の光が、どこか歪で濁ったような禍々しい輝きを帯びている。




「貴方様の率いられます兵士達には、皆各々の《ギルソード》を保有させております。


 指揮の高揚を計るため、こちらの特別な《ギルソード》を、少将殿の御為に御用意させて頂いたのです…!」





「……素晴らしい! 我等が先代の指導者様方の栄光の再生の約束のため……! 偉大なる御方々が目指した理想の信教国家の実現のため……! 私は喜んでこの身体を天に捧げよう……!」





 グスタフは、覚悟の言葉と共に、その輝かしい肩章がつけられた軍服を脱ぎ捨て、上裸の姿で《超兵器の聖母体(ギルソードマザー)》のカプセル状の蓋を開けて、その中に寝そべった。




 ヴィザロは、即座に装置のフタを密閉させ、そっと起動スイッチに指を置きながら、ガラス越しのグスタフに語りかける。





「心から祝福を致します。この美しきダマスカスの栄光と共に、貴方様が新たに生まれ変わりますことを。


 新たな聖地として生まれ変わりますことを。


 ……我等が真の革命組織、〈革新の激戦地(ヴェオグラード)〉の支配下として__!」






「今……何と言った?」





 グスタフが耳を疑ったとき、全ては手遅れだった。





 その言葉を発した直後、毒々しく煌めく《ナノマシン》は突如として凶暴な輝きと動作を起こし、瞬く間にグスタフの身体を覆い尽くした。






「なっ……何だ……!これは……!身体が……熱い……!痛い……!あっ…!頭がァ………あ″あ″あ″…あ″あ″あ″あ″ぁァァ……!!!」





 カプセルの中から轟く壮絶な悲鳴が、広大な地下要塞の隅まで見事に響き渡る。



 グスタフの身体に纏わりつく《ナノマシン》は、次第に彼の口や鼻__


 さらには耳の穴から人喰い蟻のように侵入し、徐々に彼の神経や感覚をじっくりと殺してゆく。





「申し訳ございませんねぇ? この《ギルソード》の正体を説明していませんでしたぁ……!



 これは我が組織〈革新の激戦地(ヴェオグラード)〉の新技術の開発を試みた《試作型》でしてねぇ!



《ギルソード》と人間の生身の身体を一体化させることで、絶大なる『破壊力』と自由自在に制御コントロールできる技術をあわせ持つ画期的な《新型ギルソード》になる予定でしたが……


生憎コイツは……新技術の先駆けとなる《ギルソード》にはならなかった…《失敗作》のようです……!」





 ヴィザロは、歪に歪む口元の皺を、容器に閉じ込められたグスタフに見せつける。



 体内の奥底に侵入する《ナノマシン》は、無情にも身体のあらゆる感覚を喰い尽くしていく。



 薄れゆく意識の中、グスタフは掠れる声を精一杯に絞り出しながら、彼の背後に立つ我が官僚達に目を向けた。



 しかし、士官達は自身の異変には一切反応を見せることはない。



 それどころか、何故か満面の笑みで祝福の拍手を贈っている。

 


 

 答えは簡単だ。裏切られたのだ。見限られたのだ。



 

 そして、嵌められたのだ。


 

 閉ざされた空間の中で、絶望を知った。






「あ″あ″ぁ″……ぐぞォ……我の″ォ″……タ″マ″スカ″ス″に″ぃ……」


 




 最期の叫びと共に、彼の意識は失われた。






「……おっと、皆様ここから避難しましょう、まもなく地下空間はこの宮殿と共に崩れ落ちます」






「……ん? どうしたといいうのか? まだ作業は終わっていないのだろう?」





「直に分かりますよ? この《ギルソード》の恐ろしさがねぇ__!」





 ヴィザロがそう言った刹那、《超兵器の聖母体(ギルソードマザー)》のケースに小さな亀裂が生じた。



 1つ、2つと数を増やし、ガラスやメッキが砕かれる衝撃音を立てながら、次第に亀裂は面積を拡大させていく。




 ケースの中は、大量の《ナノマシン》が溢れんばかりに増殖し、もはや《超兵器の聖母体(ギルソードマザー)》は木っ端微塵に吹き飛ぶ寸前の様子だ。




「さて、式典の始まりだ。この素晴らしき改革の日に盛大なる祝福を……!」




 ヴィザロは冷淡な目で微笑みながら、士官達を先導して、地下要塞を立ち去った。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




〈おまけの会話コーナー〉


作者「あと少しだ……あと少し…残り2話程でこの物語の本編が指導する……!!」


ユウキ「え?遅いな……今までの本編じゃなかったの……?」


ロザリア「序章だったらしいわよ?計画性なく小説書いてるとこうなるのよ!」


作者「うわあああん!!どうか飽きずに読んでくれると心が救われますぅ~。゜(゜´Д`゜)゜。」

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