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新科学怪機≪ギルソード≫   作者: Tassy
1. 少年ユウキと闇社会の楽園 編
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第8章 夜明け前の抗争(1)


 

「さて、国家機密を知っちまったこの落とし前は、どうつけて貰おうかァ? なぁロザリアお嬢様?」




 ユウキは豹のような鋭い眼光をロザリアに向け、思惑の邪魔された静かな怒りを胸に、左手の剣の刃を彼女の首筋にぴたりと当てる。




「……あ…… え……?」




 ロザリアは、ユウキに言葉一つ返すこともなく、撃たれて血を流し衰弱したロゼッタを抱きしめたまま、小刻みに震えている。



 見たところ、彼女自身の顔も酷く青ざめており、今にも意識を失いそうだ__



 刃の当たった首筋からは、一滴の血が滴っていたが、どうやら体力と精神力の限界で放心状態に陥り、その傷の痛みさえも感じることができない。



 ここまで弱り果てた少女に対し、怒りに任せて責任や代償を問いつめるのは、流石にユウキも躊躇いを感じた。




「チッ……! しょうがねぇ! 本当は見つかった時点で殺っちまうのが理想なんだが、この件は屋敷に帰って休んだ後だな!」




 ユウキは、握った剣を鞘に収めることなく地面に放り投げると、ロザリアの元へ近づいて、仏頂面を見せながら手を差し伸べた。




「ほら、誰かに見つかる前に帰るぞ! ちゃんと立てるか?……って、


やっぱり何でもねぇ。それは愚問だったな……!」




 ロザリアは放心状態な上、彼女の左足に目をやると、包帯の色がすっかり赤黒く染まっていて、中の状態など想像に耐えない。



 無理してでも立てと言えるのは、もはや悪魔の所業だろう__




「ったく! ……やっぱりコイツぁ面倒事だぜ……!」




 ユウキが文句を吐いてガリガリと頭を掻き毟っていると、運の悪いことに、真っ暗なシェルターの入口の方から、怪しげな足音が2つ聞こえる。

 


 恐らくヴェルニーニ=ファミリーの連中で、帰りの遅いイダルゴの様子を伺いに来たのであろう__




「クソッ……! 適当にボコボコにして、服従させて手伝わせてやるか。運が良かったなぁロザリア!」




 ユウキは冷そう言って拳をパキパキと鳴らし、足音が近づく方へ一目散に走り向かった。



 その間、ユウキがいくら話しかけても、青ざめたロザリアは、言葉が何1つ聞こえていないかの如く、返事など一切しなかった__

 

 

◇◇◇◇◇



 パレルモ中心街の路地裏の奥地に聳え立つ屋敷『ヴェルニーニ邸』からは、男達の猛々しい怒声が、真夜中の中心街に轟いていた。




「イダルゴが死んだだとォ……!? 何の冗談だってんだこれはァ……!?」




 屋敷の会議室では、頭領マッツィーニ・ドゥ=ヴェルニーニが、息子のローツェと科学者アクバルを含めたファミリーの全組員を召集しては、感情のままに怒鳴り散らしていた。



 その魔王の如く恐ろしい形相に、組員の一同は恐怖で硬直する他はない__




「……落ち着いて下さいお父上。なぁアクバル。ヤツが死んだ原因は解明できないのか!?


 奴はお前から与えられた《ギルソード》を装備していたはずだぞ?


 チンピラ風情に討たれるなど、あり得んだろ!?」




 ローツェは、マッツィーニの威圧に少々狼狽うろたえながらも、とにかく話を進めて議題を進展させようと試みる。



 冷静かつ冷徹なヴェルニーニの次期頭領と賞賛された男でも、やはり今現状において最も恐ろしく、怒らせてはならない人物をしかと心得ているのだ。




「それは当然ですとも、国1つ滅ぼす最強の《兵器》ですよ? まっ! 可能性があるとするならば……


 同じ《ギルソード》を身体に宿した人間《ギルソード使い》ですねぇ? それ以外に何か思いつきますか?」




 だが、緊迫する空気をよそに、アクバルは、場違いと言えるような、どこかリラックスした態度で集会に臨んでいた。

  


 これには、ローツェも回りの組員達も、頭領の怒りを確実に買うだろうと、青ざめた顔で彼を見ている。




「ふざけやがって!! 俺は永年この時を待ちわびたんだ!


 この苛立って仕方ねぇヴィットーリオのクソ独裁体制をよォ! 打破する事をどれだけ夢見てきたか……!


 《超兵器ギルソード》の導入。偶然重なった不幸『豪華客船プレヴェザ号』の轟沈事件。


 誰がが裏で糸でも引いてる? そんなこたァどうでもいい!!


 寧ろ神から賜った至高の賜物だ!!


 この機に忌々しいヴィットーリオを殲滅して、我がヴェルニーニの理想とする支配体制をこのシチリアに飾ってやる!!


 俺が! 俺の家だけが支配する!! 夢に見た理想の独裁国家をォ!!


 アクバル!! 今、俺達が保持している《ギルソード》の台数はどれくらいあるんだ!?」




 マッツィーニは、拳を握って椅子の肘掛けをドンと叩き、アクバルに威圧をかけて問いかける__




「え~《簡易型》の安物ですが、ざっと700台ってところでしょう!


 新たに取り寄せた900台! その全てを献上する予定でしたが、どうやらヴィットーリオの連中にネコババされたようで……!


 まぁ、それでもこちらが余分に500台程と、圧倒的に有利ですよ~♪


 その中の500台は、既に貴方様の傘下のファミリーが使用して戦闘体制に入っておりますので、後はヴェルニーニ=ファミリーの準備が整い次第、いつでも襲撃を決行可能……という状況です♪

 

 ……ところで、その『プレヴェザ号』とやらを轟沈させた犯人は?


 そいつを最優先に追い詰める必要は、もう無い解釈で宜しいですね?」





「馬鹿かオメェはァ! 誰が船を沈めたかなんて、最初からどうでもいいんだよ!


 原因不明っつったて、そんなの《ギルソード》に決まってんだろうが!


 だったら人数も多くはねぇはずだ! 2、3人か多くて10人程度だろうがよ!!


 それに比べたらどうだ!? えぇ!? こちとら神も恐れる人体兵器、《ギルソード使い》が500になるんだ!!


 わざわざ探さなくても、この戦争の業火で炙り出して殺しちまえば全て解決するだろうがよ!


 そうだろ? 後は簡単じゃねぇか!


 俺様がこのシチリア島の王になるまで……もう時間は秒読みなんだからよォ!!」




 マッツィーニは、度々に激怒と高揚を繰り返し、怒声を上げるだけ上げた後、まるで弱々しい小鹿を喰い殺そうとする獣のような狂気の瞳で、薄ら笑いを浮かべた。



 一方で、そんな彼とは反対に、顔を青くして不安げな様子でいるのは、横で会話を聞いていた組員一同だった。




「あの……頭領ファーザー……質問をしちまうんですが……?」



 

「あ!? なんだ言ってみろ!!」




「あの……さっき《ギルソード使い》の数が500になるって仰っていやしたが…… それは…… まだそいつになっていない俺達も…… その…… 強制的に《ギルソード》を持って……」




「オイオイ! 鈍臭ぇこと聞いてくんじゃねぇよテメェ! 何のために、これだけの人員を揃えたと思ってやがる!?


 テメェ、ひょっとしてアレか……? 自分の身体を捧げるのが怖くて仕方ねぇのか!?」

 



「……な″ぁ……!?」




 マッツィーニに図星を突かれたようで、1人の組員は黙り困惑した。




「そりゃそうだ! 《ギルソード》なんてモンが身体に取り憑いたら、お前ら死ぬまで《人体兵器》だもんなぁ?


 だが安心しな? 怖いのは一瞬だ……!


次第に《兵器》となった自分を受け入れるようになるさ……!



 あのイダルゴだって、最後は笑ってたぜェ!?



だからよォ……? 安心してその身体と命を我がファミリーに捧げてくれや……! な……? 俺の夢の礎になれる……光栄だろ!?」




 牙を剥き出しにした、人を喰らう怪物のような笑みをマッツィーニが浮かべた際、組員達は涙しながらこう悟った。



 もう逃げられはしない__


 このシチリア島で生き残るためには、己が人間としての姿を棄て怪物となり果ててでも、この暴君に従ってしがみつく他はない、と__ 




「ではお父上、これで今からすべき事は決定しましたので、準備に取りかかります。


 アクバル! 先にこちらへ……!」




 ローツェは、傍らで我が組員達の悲惨な境遇に同情しつつ、アクバルを手招きで呼び出して、ひとまず会議室を後にし、その者と共に廊下へ赴いた。




◇◇◇◇◇




 会議室を後にすると、ローツェはアクバルを人目のつかない暗い廊下までアクバルを誘導する。




「全く、あのような暴君を父親に持つと、ストレスで胃が破壊されそうですねぇ♪ ローツェの若様♪」




「別に? それもすぐに()()されるんだ。さて……アクバル!!」




 陽気な男の無駄話を振り払った彼の眼光は、明らかにマッツィーニの傍で見せていたそれではなかった。



 冷徹な瞳が見開いた、魔王のようなそれ__


 人前で隠していたローツェという男の本性__




 だが、その時アクバルの目には、彼の変わり果てた姿を見ても、驚きはしなかった。





「様になってますよ~? その雰囲気♪ 血を濃く受け継いでいるようで……♪」




「お喋りはここまでだ! アクバル、傘下の連中の状況は? さっき親父に言ったとおりか!?」




「ええ! 既に《ギルソード使い》となって、もう準備万端です!素直で勇敢は彼等は、ローツェ様の御命令とあらば、何時でも戦闘可能ですよ♪」



「根回しも洗脳も抜かりないな。流石は見込み通りの男だ!」




 性格や態度に難はあれど、仕事の素早さと用意周到なアクバルを、ローツェは高く評価している。



 だからこそ、この取引が持ち上がる前から、ローツェは誰よりも彼との信頼を手に入れようと誓っていたのだ__



 実際、マッツィーニの目を盗んでアクバルと内密な会話ができるのも、この判断が功を奏している__




「よし! なら俺達は手はず通りに事を動かすぞ! 親父にはヴェルニーニ直属の連中を指揮ってもらう。


そして、俺は傘下の連中の指揮を執る!


 アクバル、お前は表立っては親父の指揮で動いてもらうが、頃合を見て俺の命令に従え!」




「了解しました♪ 傘下のファミリーの中には、私の部下を派遣してますので、どうぞご安心を♪


 私は表立っては頭領マッツィーニの指揮に従いますので、ご連絡の程、お待ちしております♪」




「いいか? くれぐれも気づかれるなよ!?


 本来は雇われのお前に、ここまでの役目を負わすのは酷かもしれんが、お前の主人は俺だ!


 期を見計らって俺の命令に動け……!!


今から行われるのは抗争じゃない! 新時代の革命だ!!」




「ほ~う? 楽しみにしておりますぞ? シチリアの新たな王よ……!?」




「あぁ、後は任せたぞ。アクバル……!」




 ローツェは言伝を終えて、アクバルの元を立ち去った。



 すれ違い様に微笑みを見せたその顔は、確かにあの暴君から受け継がれた、生贄を前に高揚する邪神のようであった__




《おまけの会話コーナー》


ユウキ:なぁ、なんか今のところさ、この小説マフィアばっかり出てんだけど、さすがに飽きてきたぞこれ…!


作者僕:あー、あれっす。次の話でマフィアのお話は終わりますんで、その予定なんで、終わんなかったらサーセンwwマジサーセンww


ユウキ:この作者思ったよりいい加減な奴だわ…

申し訳ないが、あったかい気持ちでこの作品を読んだってくださいよ…


ってか主人公の俺に言わすな!テメェで言いやがれ!」


作者僕:もうすぐメインヒロイン登場だよ!


ロザリア:…え?今?何て言った…?(白目)

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