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新科学怪機≪ギルソード≫   作者: Tassy
1. 少年ユウキと闇社会の楽園 編
11/104

第5章 暗躍と≪ギルソード≫<中>(1)

【登場人物紹介『追加分』】


ミハエル=イダルゴ(23歳)


ヴェルニーニ=ファミリーに属する若き戦闘員。痩せ型の体型で、顔はヴィジュアルバンドのボーカルのように、メイクとピアスで覆われている。




◆◆◆◆◆◆




「……今から誰か1人!《人体兵器》となって下さい!」




 科学者アクバルの言葉は、2階会議ホールの者々を震撼させた__



 演説台の傍らに立つフランコは、自らの聞き間違いか、冗談を言っているのか、その判断を躊躇しているかのように立ち尽くし、議席の頭領達は、あまりにも唐突で衝撃的な台詞に、その身を硬直させている。




「お……お前……自分が何を言っているのか……分かってんのか?」




「取引の会合だぞ!? そんな得体の知れねぇ機械とはいえ、こちとら金を払うお客に向かって! モルモットになれだァ!?」




「オイ! そいつの四股を引き裂いてやれ! 俺達シチリアマフィアを舐めて掛かった事を後悔させてやる!」




 静粛の時は瞬く間に破られた__



 議席の頭領達はアクバルに向かい、先程の顰蹙など可愛い程の、暴言罵倒の嵐を浴びせる。




 __しかし、たった一つの怒声が、再びホール内に静粛とさせた。





「静まらねぇか!! このピーピー騒ぐことしか能のねぇ馬鹿猿共がァ!!」





 その声の主は、会議ホール議席の最前列に腰を構えていた強面の男、マッツィーニである。




 相変わらず憤怒の形相を見せるが、アクバルの発言によって周囲が表情を曇らせる中、たった一人顔に動揺を表すことはなかった。




 次の瞬間、その表情や態度を何1つ変動させると無く、彼はこう言い放つ__




「俺の傘下の奴で人選してやる……お前が被験体になれ……! ミハエル=イダルゴ!!」




 またしても躊躇なく放たれた衝撃的な言葉、マフィア達の背筋はその場で凍りついた__



 だが、彼らにとっては、頭領マッツィーニが言った台詞に対して、驚愕はするものの、理解に苦しむ程の事ではなかったのだ。

 



 彼は、頭領フランコ=ヴィットーリオに次ぐシチリア第二の権力者かつ、冷酷非道な暴君だと、島中に認知されているからだ。


そんな彼等とは対照的に、酷く困惑し取り乱した者は、言うまでもなく、頭領マッツィーニの右隣に座っていた1人の若者である。




 「イダルゴ」と名前を呼ばれた瞬間、彼は飛び上がるように起立し、すっかり顔を青ざめては、暫くそこに立ち尽くしていた。



 金髪のロングヘアーにアイシャドウを象ったヴィジュアルメイクには、やたらと光沢を放つピアスやアクセサリーが幾つも装着され、だらしなく着崩した黒いビジネススーツ姿は、白い白衣姿のアクバル同様、他のマフィア達に比べ異彩を放っている。




「あの……マッツィーニ頭領……? さすがに勘弁してくださいよ……


いくら俺がファミリーに忠誠誓っているとはいえ……こんな得体の知れねぇ実験なんて……」




 ヴェルニーニの構成員イダルゴは、なんとか冷静を装って、頭領マッツィーニの逆鱗に触れぬよう、遠回しな言葉で断りの説得を目論むも、それは呆気なく崩れ去った。



 気がつくと目線の先には、マッツィーニが構えるマグナムの銃口が、物を言うぞとばかりにこちらを睨んでいた。





「お前、よ~く考えてみろ! テメェの親分に逆らって身体に通気口を空けられるか、またはこの超兵器の歴史的取引に立ち合ったシチリアの偉人として名を残すかの二択だぞ!


 実際に、その超兵器をこの手中に納めたらどうだ?


 こんなマグナムごときに怯えることは一生ねぇ! 取るに足らない玩具おもちゃになるんだぜ……? その身体と引き換えに、お前は全てを手に入れるかもねぇ……!!」




 その冷徹な言葉と表情に、青年イダルゴは絶句した__



 何せ自分がこの場に抜擢された深い意味など無い。頭領マッツィーニが己を実験動物モルモットに丁度良い立ち位置だと判断したに決まっている。



 だが、冷たくこちらを睨む銃口と、待たされるのを嫌う頭領や周囲からの「苛立ち」の目線が、容赦なくイダルゴの方に集中し、神経を(えぐ)った。



 ここで「No」と口にした際、どのような事態が我が身に降り掛かるかなど、想像が容易い__




「あぁ、そんなオーバーに考える必要はないですよ♪ 別に切開手術する訳ではないですし?


 あと時間が押してますので、そうした人選も早くお決めになって頂けますかな!?」




 彼も、待つのが嫌いなのか、アクバルは演説台を人指し指でコツコツと音立てながら、要らぬ圧力を掛けるように文句を言う。


 イダルゴは、いよいよ逃げ場が無くなったことを悟り、自棄やけになって叫び散らした。




「あぁいいぜ!! 俺がやってやる……!! 人体実験でも人体料理でも何でもやりやがれ!!」




 イダルゴが意を決して、震える足を演説台の前へと運ぼうとすると、そこに立つ科学者の男は歪に口許を緩めて、イダルゴを迎えるように拍手をする。




「その勇気ある決断に敬意と、生まれ変わる貴方に祝福を! 今日は実に良いデモンストレーションが出来そうだ♪」




 やけに上機嫌なアクバルを他所に、イダルゴは唾を飲んで、目の前に構える機械《超兵器の聖母体(ギルソードマザー)》と対面した。



 確かに、近未来映画に登場する医療ベッドや人間用カプセル容器その物の形状はしているが、これを『聖なる子宮』などよく言ったものだ。


 むしろ、これは実験体という名の生贄を捧げる祭壇、という表現が相応しくはないだろうか__


  


 正直なところ、このような気味の悪い物体に、己が身体を預けるのは死んでも御免だ。それが彼の率直な感想だった__




「……で!? 俺はどうすればいいんだ? このまま横たわればいいのか!?」




「まずは衣服を脱いで下さい。下着を残す程度で構いませんので……!」




 まずは指示通りに、イダルゴはその場で服を脱ぎ始めた。



 黒スーツの背広とズボン、ワイシャツ、革靴をその装置の傍らに投げ捨て、上下とも直接肌に触れた下着のみを残し、藍色の刺青で覆われた両肩両足を露にする。




「……たくっ! 一体、装置コイツは俺の身体に何をしようってんだ……!」




 己が意思に反する事態で塗り固められた状況の中、吐きたくて仕方がなかった捨て台詞を吐きながら、彼はだらしなく上蓋が開かれた装置の上に横たわった。




「では良い夢を……! 再び起き上がった時には……アンタはすでに生まれ変わっていますよ……♪」




アクバルは微笑しながら囁いて、そっと上蓋を閉じる__



 それまで生きた心地のしなかったイダルゴではあったが、それが起動された瞬時、彼の心境は激変した。




 __空調や移住性が見事に極められた狭い空間の中で、鮮やかな光を放つ粒子が彼の視界に現れる。




 ルビーの宝石のような深紅色に輝いたそれらは、ひらりひらりとその身体に集い、妖しくも優しく包み囲んでいく。



その美しく幻想的な光景と感覚に、イダルゴは快感と高揚さえ覚えた__




「すげぇ……すげぇよ! まるで生まれ変わろうとしてる気分だ…!今の俺は……実験台になってよかったとさえ思ってるぜ……!」





 青年イダルゴの満ちた叫びは、閉ざされた狭い空間をから、装置の分厚い上蓋を突き破り、外側の傍観者達にも、微かにその声が聞き取れていた。





「……いい表情だ! その身を捧げろよ……! その屈託のない純粋な表情でなァ……!」




 装置の上蓋からは、中の様子が見られるよう微かに防弾ガラスで造られた覗き穴がある。



 アクバルはそれを覗き込むなり、一人でに不吉な笑い顔を作りながら、処置を終えるのを今か今かと待っていた。




 捧げられた生贄が至高の《生体兵器》として再誕する、その静かなる時を__





本小説を御覧いただき、熱く感謝申し上げます!


さて、ここで注意点がございますが、本文の表現において、◇と◆を並べただけの文(?)が見られたかと思います。


それの説明がなかったことをお詫びします…


これらは、自分なりに「時系列が移動しますよ」と表したものであります!


◇◇◇◇◆◆◆◆◆=現在から過去の話へ切り替わります。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆=過去の話が続きます。


◆◆◆◆◆◇◇◇◇=過去の話から現在へ戻ります!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇=時間は変わらずに、同じ時間に起きた別の出来事を物語ります!


↑今後、この記号が見られましたら、そういうことです(笑)

読み辛いとは思いますが、本当に申し訳ないです(半泣き)


最後に、いつでも感想を受け付けています!もし気が向きましたら、思ったことを書いたって下さい(^o^;)

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