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一章2【西の森のよくは知らない魔女っ子ちゃん】

ダラダラと森を歩いて行くと、こじんまりした一軒家がそこにはあった。見なかったフリして通り過ぎたいほどすげー怪しい……。てか、こんな所に建てちゃって、さぞ不便だろうに。


「……小屋だな」

「ああ、小屋だ」

「誰か住んでるのかなあー?」

「空き家って感じだよな。こんなとこに住んでちゃ、移住食にもめちゃくちゃ困りそうだが……」


 今時、村八分かっての。何したらこんな場所に追いやられるんだよ。代々伝わる村の掟に触れちゃったのかよ。


「こんなネットも繋がらなそうなとこ、俺なら絶対住みたくねーわ」


「君はネトゲオタクだものな」

「心外だ。ネットマイスターと呼んでくれ」

「オタクもマイスターも同じようなものだろう。ところでウチのノートがたまにネットが切れたりするんだが、どうしたら直るんだ?」


 接続とかそういうのを聞くなよ……。自称ネットに詳しい人が何でも知ってると思うなよ……。そして解決出来なかった事で後で文句を言うなよ……。


「「心外なのはこちらだ。インターネット環境はきちんと整備されておるぞ」」


「だ、誰だ……?」


 妙にハウリングした声が聞こえたかと思うと、小屋の方からヌルリと一体の人影が現れた。


「それはこちらの台詞だ。侵入者め。人の家の前でベラベラと、食後の楽しみの昼ドラが全く聞こえんじゃないか。一体何用なんだね?」


 こんな森の奥でテレビも付くのか……それも大分意外だな。


「貴様らの返答次第では生かしておかぬ」


 てか、こいつ幻惑魔法を使ってやがる。正体がモザイクみたいにボヤけてやがって、


「エロいな……」


 もしかして全裸だったりして(アレだよ、水着の部分だけ隠れちゃってるから余計に、裸っぽく見えちゃう効果のアレだよ!)ワクワク。


「誰がエロいだ! 何てどうしようもない変態連中なんだ……うう、私蹂躙されるの……?」

「するか。私は変態ではないぞ」

「うるさい! 女は黙っておれ。どれもこれも連帯責任じゃ!」


 そう言うと、スルスルとモザイク加工の幻惑迷彩が解かれ、その姿が露わになったわけだが…。


「ケケケケ。姿を見られたからにはタダでは帰さぬ」


 なんだと……? 思わず膝から崩れ落ちそうになったさ。


 だってその姿は――老婆だったのだから。


「騙したな……?」

「騙しとらーん! 貴様が勝手に勘違いしただけだろうがっ!」

「ただでは帰さぬと言ったが、お前から姿を見せたのだろう?」

「女は黙っておれ! 正論は嫌いじゃ!」

「というか、もうあまり興味は無いんだが、もしかしたらゆるりの同胞じゃないのか?」


「私この人、知らないよう……?」


「興味を失うなー! 出会い系サイトで会う約束して、現場に行って知らんぷりするヤツかー!」

「いや、よく見てみろ。あのトンガリ帽子にあの杖。あいつ魔女だ、間違いない」

「おそらくな。この森に住むと言われる、西の森の魔女氏だ。黒魔術が専門だと聞いたことがある」

「ほう。ツンデレ女よ。中々詳しいじゃまいか。ケケケ」

「ツンデレ言うな。腰曲がりの老婆がっ!」

「ほほう。早速かましてくれるかね? ツンデレさんめ。可愛いねえ。よしよししてやろうか?」


「こいつ…………できるっ!」


 一体何ができるんだよ。奴に出来るのは、杖使ってゆっくり歩く事ぐらいだろうよ。


「あの……それでですね。騒がしくしたのは大変申し訳ないのですが、そろそろお暇したいんですけど、いいですかね? あ、いや、もちろんお茶やお茶菓子などを振舞っていただけるというのならば、こちらもやぶさかではないのですが、どうでしょうか?」


「どうやら、お前たちは勘違いしているようだな」


「何がですか?」

「今さっき私はタダでは帰さぬと言ったのだ」

「そうですか。ならばこちらにも考えがあります」


 先手必勝! 早い者勝ちだぜ! 詠唱中とか、戦う理由みたいなのを話してる最中に空気を読まずにブチかましてやるぜ!


「おい、ゆるり! 魔法を使え! お前の本気ってヤツを奴に見せつけてやれ!」

「え? 良いのかなあー?」

「ダメだ! まて、○! ゆるり! 早まるな!」

「ああ! やっちまえ! 盛大にかましてやれ!」

「う、うん……わかった!」


 時間短縮のため、魔法シーン省略!(魔法っぽいBGMが流れ、非科学的攻撃が繰り出されたさ)


 ゆるりの変身モードとか凄くいいわ……。裸になればもっといいわ……。


「鼻血出てるぞ、大丈夫か?」

「ああ……」

 しかし一体これはどうしたものか。


「効、い、て、な、い……? まるで、効、果、な、し…? 薬事法違反…?」


「だから、待てといったろうに」

 効いてないというか老婆だった魔女は、みるみるうちに曲がった腰がシャンと治っていき、若い女に様変わりしちまったのだ。


「お、おい……ゆるり。お前は一体何をやったんだ……?」

「え? だって、魔法使えって言ったのは○君じゃない。凄く弱ってたから、回復魔法を使って治してあげたの」

「そ、そうか……それはご苦労なことだな」


 まあ確かに、魔女だからっていきなり攻撃するのは、魔女狩り裁判そのものだよな。すまん。偏見に囚われていた俺が間違っていたらしい。が、


「「し、SHINEEEEE!」」


 やっぱり魔女じゃねーか!


「ひええ! 殺される! ゆるり、攻撃魔法だ! ビッグバンだ!」

「もうMPはゼロだよう」

「計画的に使えよ! 何、限度額MAXまで使ってんだよ! クレジットカードで脇が甘い人かよ! う、うわー! 世界の終わりだー!」


 その場でうずくまる俺氏。自分で言うのは何だが酷く情けない。


 ……。


 訪れるのは教会……じゃない。棺桶とか引きずられてない?


「冗談だよ。いやー、助かった! 君たち! 感謝するよ!」

「やはりな。しかし全然魔女っぽくないじゃないか。あなたは本当に西の森の魔女氏なのか?」

「もちろんそうだよう。なに言ってくれちゃってるのさ、もう。ツンデレちゃん、め! そんなこと言うと、お仕置きしちゃうぞ(ハート)」


 ちなみに女が魔法を唱えると、森の間を鋭いかまいたちが飛び去り、木々がズドドドドと轟音鳴り響かせながら切り倒されていった。


「……」


 ブルドーザーかよ! 何してくれちゃってんだよ……。自然破壊だよ。思わず呆気に取られちゃったよ。


「あー! いけないんだー! 自然破壊は罰金なんだよう!」

「えへへ。後で直すからいいもん!」

「しかし、もう少し知的な喋り方ってものがあるだろう。だいたい、その格好はなんだ。木の実売りの少女じゃあるまいし、もっと魔女らしい格好をしたまえ」


 そう目の前にいる魔女は、やたらメルヘンチックな格好をした魔女☆少女うんたらカンタラなのだ。


 大人なボンキュッボン(B94・W61・H88)な魔女のイメージが見事に瓦解していくぜえ……。


「だってー、わたしぃ、こっちの方がかわいぃと思うしぃ。えへ!」

「某どこかのギャルみたいな喋り方はやめろ。イメージが崩れる」

「だけどー、そんな気ばっかり張ってらんないっていうか、マジ疲れるっていうか~」


 U-15に変身させちまったんじゃねーか? ゆるりさんよう……。


「そろそろ行くか」

「あ、ああ……」

 お決まりのごとく方向転換をして、棒読みのごとく歩き出そうとすると、


「あ! ちょっと待ってよう! 久しぶりに人とお話したから、なかなか会話が安定しないのおー」


 久しぶりに会話……? なるほど。そういうことなら、ピタリと足を止めざるを得ねえな。


 妙なシンパシーを感じつつ、俺達はお招きに預かることにした。


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