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見えない真実

 その後の授業は上の空だった。

 気が付いたら終わっていた。

 そのまま、一人で家にまっすぐ帰りその日の夕食で何気なく美麗についてふれてみることにした。


 母さんはいつも働いている。

 僕の家には父さんがいないから、大変なのだ。

 父さんは生きているのかもしれないが、どこにいるのか何をしているのか知らない。


 母さんは、僕の父さんの話をしたことがない。

 それは、意識して言っていないのかもしれない。

 自分で聞いたこともあるが、言葉を濁すばかりで、言いたくないのが表情を見てわかったから、それ以来聞いたことはない。

 

 父がいる家庭を羨ましいと感じたことはあったが、今は僕のために働いている母さんを見ていたらそう思うことは罪な気がした。

 

 母さんの様子を伺いながら慎重に話を始めることにした。


「花園美麗って子がいるんだけど、変わった奴なんだよ。」


 あえて知ってるいるかは聞かずに反応をみる。

 母さんはサラダに伸ばしかけていた手をとめると、驚いた顔をし。


「花園美麗さん?」


 目を大きく見開いている。


「やっぱり知ってるんだね、なんで知ってるんだ?」


 ここからは少し問いつめてみよう。

 母さんは困惑しているようだ。


「花園さんとはよくお会いするの、だから知ってるのよ」  


 そう言って笑った顔はどこかぎこちなかった。


「へぇ、どこで?」


 僕が探るように聞くのを不信に感じているようだ。


「花園さんが強に何かおっしゃったの?」


 逆に母さんにつっこまれてしまった。

 それにしても何故母さんが美麗に敬語を使っているのか不思議だ。


「別に、美麗が母さんを知ってるって言ったから聞いただけさ。」

「そうなの…」


 どこか悩ましげな顔になると、考えこむように下を向いた。


「他には何かおっしゃってたかしら?」

「別に、それよりさっきから聞いてると敬語だけどなんで?」


 軽い感じで聞いたつもりだったが、ハッとして目を泳がした。


「あまり関わらない人だから…」


 意味不明なことを言うものだ。

 年下のしかも中学生に敬語を使うことは今までなかった。

 それはこの僕が長年母さんと接していれば分かる話だ。

 僕は母さんの敬語にはもっと深い意味があると感じた。

 美麗がいつか話すと言ったことを聞けばわかるだろう。

 増えていく疑問が少しは解消される、なぜかそんな気がした。

 そして、美麗がその謎の全ての鍵を、きっと握っている。

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